獅子達の咆哮
信じられなかった。
人間が、しかも子供の『彼』とそして同じく魂を共有するべき『存在』がこんなにも大きくなるとは。
「さあ、行こう。『ライガー』」
『私』と『彼』は、大きく咆哮を上げた。
倒すべきモノは破壊の遺伝子。
負の意思しか持たないモノ。
勝利を彼に。
大地と空を、この母なる惑星に。
全てをこめて、我々は雄叫びを挙げると、人間達がそれに答えるかのように時の声をあげた。
目がさめると、研究所の中に『私』はいた。
「おはよう、トレニティライガー」
一人の人間が、『私』を見上げてそう語りかける。
そう、『私』の名前はトリニティライガー。
はるかな昔に、鼓動を止めたもの。
それを。
なぜ目覚めさせた。
「ライガー」
そう呼ばれて、視線を下の人間に向ける。
赤い髪をした子供が、三人の大人を連れてそこに立っていた。
耳にしている金属が、耳障りな電波をよこしてくる。
なんだ?
『私』は唸った。
金属生命体としてこの惑星ZIに住むものとして、『私』はある役割を果たし、そして乗り手のいなくなった時点でその鼓動を止めた。
鼻先を、子供に向ける。
耳障りな電波が、強くなった。
…いや、これは電波じゃない。
思念。
哀しみと、そして喜び。
その波長。
何に対しての哀しみか。
何に対しての喜びか。
理解は出来なかった。
そのときは。
だが、それはすぐに『私』の中で解決する。
子供の『彼』が、『私』の操縦席に乗った時だ。
「……これから、よろしく…そして、御帰り。『ライガー』」
『彼』は一度として『私』をトリニティライガーと呼ばない。
御帰り。
そう呼ばれたときに、ふいに『私』のゾイドコアが暖かくなる。
人間達が言う感情でいうと、喜びなのかもしれない。
「ただいま」と、返事をしたい気持ちになる。
なぜだ?
そう考えた、瞬間だった。
操縦席に座る、『彼』の思念が、流れ込んでくる。
(くっ、シールドライガー!!)
(ウオオオオオオッ!!)
黒い影が口を開けた。
そして………荷電粒子の光が、『彼』とシールドライガーを包んだ。
彼らがかばっていたのは。
彼らがかばっていたのは。
『私』だ!!
そう理解したときに、ふいに『存在』に気が付いた。
戦闘記録と、ともに『彼』との思い出が、熱き感情が『私』の中に蘇る。
『私』は、蘇ったばかりなのに。
これは。
その『存在』が語りかけてくる。
共に大地を翔けよう。
共に星を見よう。
共に風を感じよう。
たった独りで砂と大地に埋もれていたのに、今は。
勝手に蘇らせられて、戦いに駆り出されるのには、違いないが。
『私』は独りではない。
共に大地を翔けよう。
共に星を見よう。
共に風を感じよう。
孤独だった『私』に語りかけてくる『存在』の声。
そして『彼』の思念に。
『私』は孤独を癒されていく。
「いくよ、ライガー!!」
いつのまにか、『私』と『存在』の咆哮が、『彼』に答えていた。
後に人間達はこの時のことをこう語りついだらしい。
《少年王の力強い言葉に答えるかのように、獅子達は咆哮を、惑星ZIの風に響かせた》と。
『彼』の名はアトレー=アーカディア。
自らの国と、そして惑星ZIの救世主となる、少年。
そして『私』たちの愛すべき乗り手である。
END?
2002・05・11 UP
ふいに書きたくなったんですよー(苦笑)。
ZOIDS SAGAの御話っす。
ゾイドにも感情があるのねって思って。
(/ZEROを見てたらそう思った)
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