「ロボット達へのバレンタイン・2」



「さて…と。じゃあ、失礼します」

あたしは席を立った。

あの後、綾子さんをタクシーで送った後、あたし達ブレイブポリスは通常勤務に戻った。

早朝八時。

まだシャドウ丸・パワージョー・ガンマックスは戻ってきていない。

デッカードはもうそろそろ来るだろう。

「ああ、お疲れ様でした。ゆっくり休んでください。さん」

なんてやさしい言葉をかけてくれたのは、マクレーンだ。

彼女(まあ、本人達はけっして認めはしないだろうけど)がいるからかもしれないが、彼は女性に対してあくまでも紳士的だ。

それを言ったら『騎士』デュークも。

「………書類の提出は私がしておきますから」

なんて言いながら、にっこり笑ってくれた。

「ではお言葉に甘えて」

「お疲れ様です」は、ダンプソン。

、お疲れ様。…ってこれから二連休、だっけ?」

「そうですね」

「二日もの顔見れないなんて、僕いやだなあ」

「こら、ドリルボーイ! さんはそうでなくてもオーバーワーク気味なんだ。休んでもらわないと困るだろ?」

「う〜ん」

ダンプソンの言葉にドリルボーイが文字通り「しゅん」となるので、あたしは思わず笑顔になった。

「今日の午後には一度顔を見せますから」

「何か用事でも?」

「ええ、ちょっと」

「じゃあ、また後でね」

ドリルボーイがそう言ってくれる。

あたしは軽く手を振って、デッカールームを後にした。





「皆、おはよう」

「おはよう、デッカード」

「おはようございます」

「おっはよーーvv」

「……い、いつになくテンションが高いなドリルボーイ…」

デッカールームに入ってきたデッカードは、思わずあとずさりした。

いつもテンションが高いドリルボーイだが、今朝は一段と元気に飛び跳ねてる。

「いやあ、徹夜のパトロールってエネルギー食うよなあ……うーーす、おはようさん、デッカード」

「あ、ああ。おはよう。パワージョー」

「お帰り♪ パワージョー」

「いっ?!」

がしゃん、とロボット特有の音を立てさせてパワージョーもたじろぐ。

「ど、どうしたドリルボーイ。超AIに花でも咲いたか?!」

「ひっどいなー、なんだよそれー」

むすっとドリルボーイは表情を変えた。

苦笑いがダンプソン・マクレーン・デュークから出た。

「あ、そうそう。聞いて聞いてv 僕、から、バレンタインのプレゼント貰っちゃったv」

「「え?」」

「もちろん、デッカード達の分もあるよ♪」

「「ば、ばれんたいんの?」」

思わずデッカードとパワージョーの言葉がはもった。




「これかあ、俺のって」

「私の分もある」

ほくほくとパワージョーとデッカードの指が、コンテナを包んでいる包装用紙を丁寧にとる。

「俺のは……へえっ、俺が欲しかった、昔のカンフー映画のDVDじゃん♪ これ限定販売だったらしいからもう生産してないのに、よく手に入れられたなあ」

「私のは……ああ、これは勇太と私のマスコット、だな。交通安全のお守りもついてる」

しかも燃料オイルはきれいなボトル状の容器に入れられている。

も粋なことしてくれるぜ」

刑事だけの力ではないだろう」

「え?」

「うん。大門署や七曲署、他の部署の女性職員さんたちから、だって言ってたよ」

貰ったサイン色紙を自分の机の中にしまいながら、ドリルボーイ。

「あと、綾子さんとセイアさん。当然、刑事から、だな」

「レディを忘れてもらっては困るぞ、マクレーン」はデューク。

「……私達は幸せなロボットだな、こんな風にしてもらえるなんて…思ってもみなかったよ」

しみじみとデッカードが言うと。

「まったくであります」

ダンプソンが重々しく頷くと、ロボット刑事たちも感慨深げにプレゼントを見た。





彼らはもとは機械だ。

人間を守るために作られたロボットである。

本来ならば、そうデッカードでさえもただのロボット警察官として人間を守るために犯罪と戦っていただろう。

便利な、『道具』として。

しかし彼らには『感情』を与えられていた。

それはその能力を倍化させる為の手段だったかもしれない。

しかし、彼らはそのおかげでたんなる『道具』ではなくなっていた。

彼らに対して声高にこういう人間もいる。

「作られた機械なのだから人間のいうとおりにしろ」
「ロボットはロボットらしく振舞え」と。

まるで人間の友人のように接してくれる人間は、少ない。







「とにかく刑事に、お礼を言わなくては」

「そうだぜ!」

「あ、午後に一回顔出しするって」

「あ? もしかして今日休みだっけ?」

「二連休だって」

「まあ、ここのところ彼女は働きすぎだしな」

「そうか?」

「パワージョー……通常勤務を調べても判らないかもしれないが、刑事は他の部署の応援も率先して行っている」

デュークが腕を組みながらおずおずとそう口にした。

「この間の休みは麻薬課のおとり、その前は潜入捜査に協力している」

マクレーンが深い溜息をつく。

「ほとんど休んでねえってか…」

「私達には他の部署への応援はさすがに無理だからな」

デッカードが苦笑した。

「WHAT? 何の話だい」

「あ、おっかえりー♪ ガンマックス」

「なんですかい? 朝から緊急会議でもしてんですかい?」

「シャドウ丸」

「二人ともご苦労さん」

「で? なんの話です?」

そういうシャドウ丸とガンマックスにデッカードは今までのことを話した。

「ほう、バレンタイン、ねえ」

シャドウ丸は犬の形態から人型にチェンジすると自分の席に置いてある箱を見た。

「ちゃんと私達の好みに合わせてくれてるってーのが泣かせるねえ」

「…で、誰があの女の本命なんだろうな?」

「さあ? そいつは本人に聞いてくださいよ。ガンマックスのだんな」

「ねえねえ、達に御礼をしなきゃね」

「お礼、ねえ?」

「どうした、シャドウ丸」

「いや、パトロール中にあずきさんとくるみさんに会ってちょいと小耳にはさんだんですがね」

「?」

「いや、バレンタインのお返しをするために、ホワイトデーってえのが3月にあるんですが」
「ニホンにはそういうのがあるのか」

「ほう」

「どうやら男の方からは、特に
本命の彼女には三倍返しをしなくてはいけないらしいんですがね」

瞬間。

ロボット刑事達の超AIは一時停止した。



3倍返し?

これの?


「ええええええっ!!! 本当? それ。シャドウ丸ーーーっ!!」

「わっ、うるせえな。ドリルボーイ」

「まあ、確証は今のところないんですがね」

「ま、女が男になんかくれるときにはそれ相応の見返りが必要ってことだろうよ?」

「むう、これの三倍か…。まさかセイアさんにシミュレーションソフトを三枚渡しても仕方ないし」

「綾子さんに綾子さんの本を三冊贈ってもなあ」

「と、言うことはわたしはレディにマスコットを三個作らなくてはいけないということか? しかし…私が作ると果てしなく大きなものになってしまうが」

「…それは私にも言えることだな…ちょっと手芸用のデータを検索してみるか」

「っていうか、達にオイルをプレゼントしてどうするのー?」


「「「「「「「うーーーん」」」」」」」









ロボット刑事達の勘違いは、あたしが友永警部にチョコレートケーキを持ってくるまで続いてしまうのは、ご愛嬌ということで。


2002・02・14UP


バレンタイン当日創作が

勇者警察かよ!!

っていう叫びが聞こえる気がする(爆笑)。
でもいいか。オイラが好きなんだし。



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