永遠とは言えないけれど
サイボーグ009/ナホリ様リクエスト
浜辺をゆっくりとした足取りで歩く。
満天の星空から、今にも小さな星の欠片が光とともに降り注がれてくるんじゃないだろうかという錯覚を起こすほど、美しい夜だ。
は押しては返す波間を楽しむかのように、ゆっくり、ゆっくりと歩んでいた。
「。冷えるよ? そろそろ車の中に入ろうか?」
「ジョーさん」
いつの間にか傍にやってきた恋人に、はふわりと笑った。
ジョーも微笑を返した。
「もう少しだけ、駄目ですか?」
「もう少しだけなら、いいかな」
「ありがとうございます」
くすりと笑って、はまた歩き出した。
高校を卒業した彼女がジョーにねだった「お祝い」が、「二人きりでのドライブ」だった。
ジョーは博士たちから許可をもらって、を連れて自分のお気に入りの海にやってきたのだ。
彼女が砂を踏みしめる音が、波の音の間をすり抜けるようにジョーの耳に届き、なぜかそれが切なくなる。
今現在は、彼女は自分の気持ちを受け止めてくれている。
こんなに幸せなことはないが、その幸せがとたんに怖くなった。
だが、もしも未来。
彼女が自分達との生活を拒んでしまったら?
なぜなら彼はサイボーグであり、普通の人間ではない。
なぜなら彼の身体は半分以上は機械でできており、成長はしない。
その能力が進化しようと、外見は10代後半か20代前後のままなのだ。
彼女がどんなに年老いていこうとしても。
それが判っていても、それでもジョーはの傍を選んだ。
彼女自身、ジョーがサイボーグだということは十分理解している。
だが、人の気持ちは移ろい易い。
(その時…僕はどうすればいいんだろうか)
彼女のことを思えば、彼女の手を離して飛び立つことを許さなくてはならないだろう。
だがその一方で、離したくないと思っている自分の気持ちが心を揺さぶる。
「ジョーさん?」
「?」
「何考えてらしたんですか?」
すごく悲しそうな顔してました、とはジョーの顔を覗き込んだ。
「…その、後悔してない?」
ジョーはの頬をそっと手のひらで包む。
「ジョーさん?」
「僕を恋人に選んで…後悔してない?」
ジョーの言葉に、は苦笑いを浮かべた。
「ジョーさんは?」
「僕は、君が、愛しい」
一句一句、力を込めてジョーは言う。
「あたしも、ジョーさんが、愛しい、です」
同じようにはそういい切ると、自分の頬を包んでいるジョーの手に触れた。
「だから、私がおばあちゃんになっても傍にいてくださいね」
「!」
ジョーの目が丸くなった。
「あたしがおばあちゃんになってしまっても、傍にいてくださいね?」
もう一度、今度はジョーに対して祈るような感じでは言った。
語尾がかすかに震えているのに気がついて、ジョーは思わず彼女の額にキスをする。
「それで君が構わないなら」
それに君が耐えられるなら、とジョーは続けた。
「そしたら」
どこかおどけた口調では言い切る。
「いつまでも若い恋人を、おばあちゃんになっても自慢できます!」
ジョーは、優しく彼女の身体を抱きしめた。
なんと言って返せばいいのだろう。
「……だから、あたしの傍にいてください。あたしが死んでしまうまででいいですから」
ジョーの腕の力が、少しだけ強くなって、キスの雨が彼女の額に落ちる。
彼女の寿命がつきてしまうときも、彼は今の姿のままだろう。
それでもいい、と彼女は言ってくれる。
「…それからは時々思い出してくれればいいですから。だから、それまで傍にいてください」
それでもいいから、傍にいてくれと彼女のほうから言ってくれる。
「バカなこと、聞いてごめんね」
「いいえ」
「一緒にいるよ」
「はい」
嬉しそうに笑う彼女に対して。
迷わず、ジョーは言い切った。
「永遠、といったらおこがましいけれど。君が僕の傍にいてくれるのなら、僕はいつまでも君の事を想い続ける。僕が動かなくなる、その日まで」
今度はの目が丸くなり、そしてまた微笑む。
「神様に誓って?」
彼女は知らない。
神と名乗る者たちと、彼が戦ってきたことに。
だからジョーはこう囁くように彼女に言った。
「君に誓って」
ジョーはそう言うと、また唇を寄せた。
の瞳が閉じて。
柔らかで愛しい感触を、恋人たちは感じあう。
永遠というにはおこがましいけれど。
恋人たちにとってはこの一瞬がすべて。
そのあとの二人のことは、星と月だけが知っている。
2002・10・24 UP
リクエスト内容は「車(オープンカー)でデート」だったのですが(汗)。
すみません、ナホリ様(汗×2)。
車で出かけた先でのお話という、こんなのになりました。
短めですが…ラブ度は比較的高めにしたのですがいかがなものでしょうか?
ナホリ様、リクエストありがとうございました〜♪
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||