きっとそれが
サイボーグ009/009/ぴよ様リクエスト





二人っきりじゃないけれど。

甘い空間じゃないけれど。

お互いが居るのが当たり前。

そんな『家族』でいられるのであれば、それだけで『幸せ』だよね?






「ねぇ、お花見しない?」

そう言ったのはフランソワーズさんだった。

ちょうど朝一番のニュースで桜の開花時期を発表していた時。

それを見ていたギルモア博士が、お友達の庭にある桜も「そろそろ見ごろじゃな」と博士が呟いたときだ。

「…ふむ、ワシから連絡してもいいし…たまにはいいんじゃないかね?」

ギルモア博士はゆっくりとした口調であたしに微笑みかける。

「皆さんが揃ってるのって滅多にありませんものね」

あたしがそう言いながら、コーヒーや紅茶を皆に配っていくと、アルベルトさんが苦笑した。

「そうだな、たまにはのんびりって言うのも悪くない」

の学校もちょうど明日からお休みになるんだろう?」

「へぇ! ちょうどいいじゃねえか」

グレートさんとジェットさんもそう言ってくれた。

ピュンマさんも別に反対するわけではないらしい。

「花見、かぁ。僕はしたことがないからね」

…ピュンマさんの国はまだ内乱のごたごたで復興している最中だから、かもしれない。

「…桜を見るのは初めて」

写真やTVでは見たことがあるが、と言ったのはジェロニモさんだ。

「なら日本に来てる間に見とくといいね…まあ、今からするとなると、夜桜見物になるけどね」

張々湖さんの言葉にあたしが大きく頷くとジョーさんが笑った。

それが合図のように、皆はお花見の用意をしだした。

博士が電話をして了解を得て、行く時間を決めて。

フランソワーズさんとあたしと張々湖さんでお弁当の内容を決めて。

ジョーさんとピュンマさん、ジェロニモさんは物置になにか使える物はないか探しに行って。

アルベルトさんとグレートさんはお酒の用意。

「ドルフィン号で行くかい、博士」

「バカ言っちゃいかんよ、007」

「でも博士、あれが一番早いしどうせコズミのじいさんのとこだろう?」

「そうじゃが…」

「なら、簡単。岩場に隠せば問題ないって博士」

「まったく…」

「また車で二手に分かれて精神的疲労を食らいたくないんでね」

「…まだ根に持ってるのかね…004」

「あら、しつこい人v」

「誰のせいだ? 007」

そんな会話が聞こえてきて、思わずあたし達三人は顔を見合わせる。

そう。

日光にみんなで行った時もそうだった。

こうして集まって、そして…。

それから…。

「大丈夫よ」

あたしの不安を取り除くかのようにフランソワーズさんがそう言ってくれて、張々湖さんも笑った。

「そう、もうだいじょぶね。いらない心配、しないのことよ。今心配しなきゃいけないのは、10人分のお弁当作りきること考えるね」

10人、というのは桜を見せてくれる博士のお友達も入れての勘定だ。

確かにすごい数だし。

「はい、先生」

あたしの言葉に張々湖さんは笑ってから、そして声を張り上げた。

「誰でもいいから手が開いた人間、台所、手伝うよろしよ!!!!」

こうしてあたし達は笑いながら、皆でお弁当作りに励みだす。







国籍も性別も人種も違うのだけれど。

確かにそこには『絆』があって。

その中にちゃんと自分の居場所があって。

誰かのために何かができることを実感するのって『幸せ』だよね?







「ようこそ。ちゃんだね。ワシがコズミじゃよ」

ギルモア博士のお友達は博士と同い年ぐらい。

ドルフィン号でやって来たあたし達を迎えに来てくれたコズミさんはにこにこと笑うおじいさん。

「よう、じいさん」

アルベルトさんが機械の手をちょっと上げて挨拶した。

「004。また後で囲碁の相手をしておくれ。言っておくが今回は負けんよ」

にこやかにコズミ博士はそう言うと、あたし達を案内してくれる。

博士の家の奥、多少半壊しかけた家(理由を聞くとギルモア博士が苦笑いをしていたからきっとブラックゴーストがらみだと思う)を進んで、まるで秘密の近道のような道を歩いていくと、そこに大きな桜の木があたし達を待っていた。

「こんな場所、あったんですね」

ジョーさんがそういうと。

「なぁに、お前さんたちが前居たときは緊張の連続じゃったしな」

あたしはそれを聞きながら、桜に見入った。

大きくて、枝を広げたそこには満開の花。

風がさやさや優しく吹くと、ひらひらと花びらを少し空に舞わせる。

「美しい」

ジェロニモさんはいつもの口調でそう言いながら、目を桜から動かさない。

「そうだな…」

「…はい、綺麗です」

「綺麗はわかったから、シート引いて場所作ろうぜ」

「そうだな。花もいいがこれを見ながらの酒はまた格別…」

「あんた達…情緒とか風情とか知らないか、002。007…」

張々湖さんの言葉にみんな笑って、夜桜見物になった。




ジェロニモさんがシートを引いて、グレートさんがワインとか出して来て。

ジェットさんがビールとか他のアルコール持ってきて。

コズミ博士が囲碁のセットを引っ張り出してきて。

アルベルトさんがそれを見ながら、ピュンマさんやジョーさんたちと一緒に小さなライトを木の下に固定する。

あたしとフランソワーズさん、張々湖さんがお弁当を広げて。

ギルモア博士がお茶が入った大きな水筒とイワンちゃんを抱えて。




「ほら、ちゃん。ライトアップするよ」

博士達の声に、あたしは桜に目を奪われる。

人工と、そして月の光を受けた桜は本当に綺麗で。

「おー」とか「ほぉ」とか言う声が皆からあがる。

「綺麗だね…」

隣に座るジョーさんの言葉に、あたしは彼を見つめて「はい」と答えた。







二人っきりじゃないけれど。

甘い空間じゃないけれど。

お互いが居るのが当たり前。

そんな『家族』でいられるのであれば、それだけで『幸せ』





ジョーさんと笑いあって、皆から回された紙コップにはほんの少しのアルコール。

「「「「「「「「「「「かんぱーーーーい♪」」」」」」」」」」
『乾杯』

自然に全員の(イワンちゃんも)声が揃った。


いつまでも一緒にいられますように。

夜桜にそうお願いしながら、あたしは皆と笑いあう。





二人きりじゃないけれど。

甘い空間じゃないけれど。

お互いが居るのが当たり前。



きっとそれも。

きっとそれが、『幸せ』!


END







2003・04・10 UP

シリーズの番外編、日常的感じということで頑張ってみました。
本編も今年頑張って続編作らなくては>申しわけなかとです(涙)



ぴよ様、リクエストありがとうございました〜♪




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