大好きだよ。
大好きなんだよ。
だからオイラの側にずっといて!
「「サイ・サイシー! どこに行く!!」」
「のおっちゃんとこ!」
そう言うとじっちゃんたちは納得してオイラを追いかけなくなる。
っていうのはネオジャパンから来たガンダムの技術者で、今はオイラのドラゴンガンダムを整備してる人。
ネオジャパンからの移住者ってことで最初、整備のおっちゃんたちとごたごたしてたけど、今はそうでもないみたい。
オイラのドラゴンガンダムの防御システムの向上をさせたのが、のおっちゃんが作ったプログラムだし、そのことをネオチャイナの総帥じきじきにお褒めの言葉を頂いたんだけど、ものすごい謙遜してた。
それがまた嫌味じゃなくて。
個人の褒美よりも環境の向上を。
そうおっちゃんが言ったとき、なぜだかオイラは誇らしかった。
ネオチャイナの人ではないけれど、彼は何よりもオイラのガンダムをそしてオイラ達を理解してくれている。
そう感じたから。
「おっちゃ〜ん」
なんてガンダムの整備工場に行くとのおっちゃんが、笑いかけてくれた。
「サイ・サイシー様」
「様はよしてよ、様はさあ」
なんて言うと、「とんでもない」って首を振る。
なんて言うのかな。
オイラがえらい人、で。
おっちゃん達は使用人。
そんな感じでとらえてる。
「何か御用でしょうか?」
あ、やさしい顔。
なんていうのかな。
親が子供にするような笑み、って奴かな?
オイラ、父上の記憶、ないんだけど。
きっとだぶん、こんなカンジだろうな、っていう笑い。
…まあ、口調は固いんだけどね。
「ドラゴンガンダムの方はどう?」
「いつでもシステムチェックに入れますよ。各部まったく異常なし……明後日からのガンダムファイト予選には充分対応できます」
ガンダムファイト。
前回は、ドモンの兄貴に優勝されちゃったしな。
オイラはガンダムを見上げる。
前回のガンダムファイトは…地球の命運をかけたものになった。
あれから4年。
オイラもおっきくなったんだぜ、兄貴。
ガンダムファイトのあり方は、まだ国と国との自治権を争うものだけど、ゆっくりとファイターの誇りをかけるものに変わりつつある…はずだ。
右手が熱くなる。
シャッフルの紋章が、淡い光を放ってるのを見てオイラは笑った。
「見ててよ、おっちゃん…今回の優勝はネオチャイナだからね」
「はい…っ!」
「あ、そうそう…」
って言いかけて、オイラは見つけた。
「、みーーーっけ!v」
「ええっ!」
びっくりして、が落としそうになった学生鞄をすかさず拾う。
さっきいたところから何メートルも離れてたって、ガンダムファイターには関係ないんだもんねー!
「、今日は何したの?」
「昨日と同じ、学校に行ってました…サイサイシーさま」
「様はいらないって言ってるのに」
オイラがそういうと、消え入りそうな声で「でも、おとうさんがそう呼んでるし」って声が聞こえる。
ちょっと大きな目で、ショートボブの彼女の名前は。
おっちゃんの娘で、14歳。
へへへ、オイラと同い年、なのだ!
そんで、オイラの、その好きな子っていうか。
初めて会った時はもっと活発だったんだ。
オイラにも笑顔を見せてくれた。
けど、今はちょっと違う。
やっぱりいるんだ。
ネオチャイナの人間じゃないからってのこといじめる奴がさ。
オイラが一緒に学校に行ってやれればいいけど、オイラはガンダムファイターで勉強は家庭教師のじーちゃんがついてて。
だから一緒にいられる時間はいて、のことを守ってやろうって思ったんだ。
最初は、それがきっかけ。
いま?
今は…。
「オイラ、絶対予選通過して、を地球につれてってやるからね!」
「…え、でも…」
「なに?」
「スタッフの人しか一緒に行けないって聞いてますけど」
「敬語はなーし。おっちゃーん、借りるねー」
「え?」
おっちゃんの返事をきがずにオイラは、をだっこする。
ええっと…兄貴がレイン姉ちゃんをだっこしてたみたいな形の…お姫だっこっていうんだっけ?
あれ。
「わあっ」
「にししし」
びっくりした彼女の身体はちっちゃくって柔らかくって、でもっていい匂いがする。
オイラは嬉しくなって、一気に空を翔けた。
「ここなら誰にも邪魔されないし」
「さ、さささささ、さいさいしーさま…」
「様、なしって言ったのに」
「怖いんですけど」
ここは、オイラがいる修行の場。ネオチャイナの少林寺。の、屋根の上!
コロニーの全体が見渡せる、オイラだけの秘密の場所。
「下ばっかり見てるからだよ。」
「で、も」
「でもはなし。にはオイラがいるから、怖くないって」
「え?」
見上げるに、オイラは手を伸ばす。
「にはオイラがずっとついてるからさ」
ぎこちなくだけど、うんって言って笑ってくれる。
お気に入りの場所で。
大好きな人と過ごしてるオイラって結構、幸せモノかも。
「もうすぐ…予選ですよね」
「うん」
「調子、は?」
「ばっちしv ぶっちぎりで通過すっから」
にっ。
オイラが笑うとも笑ってくれて。
「、オイラのファイト、全部、側で見ててね」
「はい」
大好きだよ。
大好きなんだよ。
だからオイラの側にずっといて!
「なんて、早く口に出して言えればいいなあ…」
「?」
もうすぐ、第14回ガンダムファイトが、始まる。
そんな一日。
2002・04・14 UP