君の寝顔を見れたから

デッカード編





「ふわああああ」

「友永警部、大丈夫ですか?」

眠そうな勇太の身体を支えながら、刑事がそう話し掛けた。

「無理もありません」

「そうだよね、地球を半周させちゃったんだし」

タンカーの上でデュークとドリルボーイが心配そうにボスのほうを見た。

「ボス、眠ってたらどうなんです?」

シャドウ丸が首を上げた。

「駄目だよう、僕、ちゃんと報告しなくちゃ」

「勇太」
「友永警部」

私と刑事の声が重なる。

私達はお互いの顔を見つめて、そしてどちらともなく笑いあった。

それを見て、仲間達も笑みを作る。

どうやら皆考えることは同じらしい。

「ボス、じゃあ、ついたらちゃんと起こしてやるよ」

「総監たちと合流するまで休んでいてください」

「そうだぜ? もう事件は終わったんだからな。おちびさん」

パワージョー・ダンプソン・ガンマックスもそう言ってくれて、ようやく勇太は肩の力を抜いた。

「うん…じゃあ…」

「デッカード」

「はい」

刑事が笑いかけてくれたので、私は手で勇太の身体を支えた。

「毛布借りてきます」

刑事がそう言う前に、勇太は私の手のひらで寝息を立て始めていた。



国連からの要請で、我々ブレイブポリスは某国の研究所から暴走してしまった科学兵器の破壊を命令された。
そして私達は、任務を遂行させ、日本に帰る途中だった。

普通の警察ならば、地球を半周してよその国まで行かないのだが、その科学兵器の部分にはエクセレント社のノウハウが活かされてあると聞かされのだ。

エクセレント社と我々、ブレイブポリスには人間で言うところの『因縁』めいたところがある。


「寝ちゃったね」

「まだ小学生ですものね」

ドリルボーイにそう言いながら、借りてきた毛布を勇太にかけてくれる。

私は勇太を起こさないように、そっと抱えなおした。

さんも一休みしてもかまわないんですよ?」

「わたしは大丈夫です」

刑事はそう言うと、にっこり笑った。

しかし私達は知っている。

彼女は自分の不調を私達には見せないということを。





「と、いうわけで…、私がお送りします。刑事」

「な、なにが[と、いうわけで]なのか説明……」

「しなくても判るでしょう?」

私の言葉に、刑事は肩をすくめて、そして仕方ないなあ、とつぶやいた。
「まったく、おせっかいなんだから」

「迷惑ですか?」

「ううん。優しすぎます。貴方達は」

あれからすぐに私達はシャドウ丸の能力によって日本の警視庁にいる冴島総監に報告するべきことを全て報告した。

帰ってすることは、事務的な処理だけでそれは私達ロボットだけでもできる。

デュークが快くその処理を担当してくれることになったのだ。

報告する仕事から、勇太と刑事を解放する。

起こさなかったから、勇太はあとで怒るだろうが。

日本につくと、それぞれの形態にチェンジして警視庁に向かったり、その場からパトロールに行ったりすることになった。

まあ、今回でさほどダメージを負わなかったからできるのだが。

そして私は、刑事と勇太を乗せていた。

「疲れたでしょう」

「…いえ…」

「嘘ですね」

小さく笑いながら私が言うと、刑事は肩をすくめた。

「最新鋭のロボット刑事には隠せませんか」

「寝ても大丈夫ですよ」

私の言葉に、彼女はふわりと笑って。

「じゃあ、御言葉に甘えて」


私のAIが、少し熱くなったように感じるのは、気のせいだと思う。





道を走っているときに聞こえるのは、勇太と刑事の規則正しい寝息。

勇太は別に大丈夫なんだか。

なぜか彼女に注意をひきつけられてしまうのはなぜだろう?

半開きの唇。

上下する胸。


「早く送らなくては」

小さく言う私の言葉すら、彼女は聞こえていない。

…。

なぜだろう。

不可解だった。

早く送らなくてはいけないという気持ちと、それでもこのままずっと見つめていたいという気持ち。

相反するものがAIの中を駆け巡っているようだ。

熱い。

いや、そう私が感じているだけでセンサー各部になんら異常は見られない。

…。



結局、遠回りをして私は彼女を送り届ける。

そしてこの後、この気持ちについてマクレーンに相談するのだが…。


その騒動はまた別の御話。





2002・05・25UP
デッカードの中心はやっぱり勇太君(笑)と、思って作成いたしました。
いやあ…実際に彼らがいたら、オイラとめちゃくちゃ話あいそうだ。(なんの)

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