男は追いかけるのが好き。
女は男が好きならば、距離を開かないように逃げるのがいい。
きっと男は女を求めて追いかけるから。


そんな言葉をどこかで聞いたことがある。
しかし。


最初から全力疾走で追いかけてくる男に対して女ははどうやって逃げればいーのだろーか?

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

「で、人の部屋で何してんの」
「いつまでもお前が会ってくれないから待ってたんだよ」

いつも以上にラフな姿のビクトールが、さりげなく部屋の入り口に回って逃げられないようにドアを閉める。

「別に逃げてるわけじゃない、たまたま…」
「たまたま俺が探しているときはシュウに頼んで物見に行ったり、フリックが当番だったお子様連中のお守りをなぜかお前がしてて近寄れねーと来たもんだ」
「う」
「ほれみろ」

少しすねたような口調で、ビクトールはさりげなくの顔を見る。

「痩せたか?」
「ほっといてよ」

即答するとなると、自分を過剰に意識しているということだ。
ビクトールは密かに心の中でガッツポーズをした。


「な、何?」

びくん、とが反応する。
今まで見たことがない反応にビクトールは思わず笑みを浮かべた。
いつも戦いの中だった。
背中を守り、背中を守られ。
フォローした仲なのに、こんなに可愛い(いや、それでなくとも彼女は可愛いが)一面があることを知って嬉しく思う。

「気がついてると思うけどな」
「う、うん?」
「俺、お前のこと好きだから」
「…あ、あたしも嫌いじゃあ、ないよ」
「ああ」

ビクトールは目を伏せた。
は慌てたように言い出す。

「そ、その。男として今まで、その意識してなかったから、そういう風に見れてないって言うか。けど、嫌じゃなくて…その、なんていうのかな」

男として意識されてない。
この一言が、ビクトールの何かに火をつけたのは間違いない。

「なら、今夜から男として意識してくれ」
「へ?」

の腕を取って、自分の腕の中にまず閉じ込めてみる。

「あ、あの。ビクトール?」

赤い顔を覗き込んでみる。

(あ、やべえ)

理性が少しずつ切れかけているのがわかる。

「ん?」

そう言いながら、髪に、額に唇を寄せて。
そして最後にその唇に…。





「これで男だろ? お前の中で」

そんなことを言いながら、部屋を出て行くビクトールを。


腰が抜けたは潤んだ瞳で見送った。




男は追いかけるのが好き。
女は男が好きならば、距離を開かないように逃げるのがいい。
きっと男は女を求めて追いかけるから。


そんな言葉をどこかで聞いたことがある。
しかし。


最初からとっつかまっている場合はどーすればいーのだろーか?

後日、鼻歌交じりで戦いに参加する無気味なクマの姿があったとかなかったとか。


とにもかくにもこれではっきりとビクトールの気持ちはに伝わったのである。

2002・03・09 UP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送