「蓬莱寺さん」
屋上で一人立っていると、相棒・緋勇龍麻の妹・。
出会ってすぐに目がひきつけられた。
小さくて、華奢で。
弱いと思ったのに。
懸命に兄の背中を守っていた彼女。
恋に落ちるのは時間の問題だった。
(この俺が、恋だってよ)
泣かせた女は数知れず。
真神学園の「蓬莱寺京一」と言えば、その筋でも有名な高校三年生。
それが。
「お兄ちゃん知りません?」
たった一つしたの彼女・にはからきし駄目で。
「ひーちゃんならいないぜ?」
「え〜、そうですか〜」
「ひーちゃんに用?」
「はい。数学教えて貰おうと思って」
(それじゃ、俺じゃ力になれない)
内心、舌打ちする。
「蓬莱寺さん?」
自分の表情の変化に気がついた彼女に苦笑いをする。
「別に、苗字で呼ばなくていいぜ? 俺達、仲間なんだからさ」
仲間。
この東京を守るための仲間。
(でも俺は、の、仲間のままではいたくない)
「じゃ、京一さん?」
「そうそう」
にっこり笑うと、微笑み返されて心が熱くなる。
(あ、もしかして)
もしかしなくても。
(これってチャンス?)
義理の妹にべったりの兄・龍麻は今いない。
彼女に目をつけている野郎どもは他校で、今はここにいない。
(よし、言うぞ!)
京一が、そう決心した、その時。
「。こんな所にいたのか」
「あ、お兄ちゃんvvv」
(ひーちゃーーーーーん…↓↓)
満面の笑みが兄に向けられ。
兄はそれ答える。しかも、心の中でむせび泣いている男…蓬莱寺京一をバックに。
「お兄ちゃん、ここの公式なの」
「はいはい…教室に戻ってからな」
なんて言いながら、龍麻は振り返ってその美貌を笑みに染めた。
普段は安心する、その笑みが少し怖いのは気のせいか?
「京一、先に教室戻ってるよ?」
(な、なんか今……すっげえ怖かったんですけど…)
ずるずると、力が抜けてへたり込む。
(もしかして、あれか? ひーちゃんに認められないと…に近づけないってか?)
「マジかよ…」
でも、あきらめるには、もう彼女への思いは止められない。
「気合、入れるかぁ!!」
きーんこーん、かーんこーん。
京一の決意に答えるかのように、チャイムがなった。
あきらめない。
必ず必ず、君に想いを伝えたい。
「あ、やべ。次は犬神の授業じゃんかよ!!」
さぼっていたらまた何を言われるかわかったもんじゃない!
京一は大慌てで教室に走った。
風が優しく凪いでいた。
2001・05・22 UP