なぜこんな男に惚れてしまったんだろう。

あたしは自分に問いかけてしまった。

「そりゃぁの近くに俺以上のいい男がいなかったってことだろ」

と、きっと本人に話すときっぱりと言い切るだろう。

天性のギャンブラーで。

「悪いか? 言っとくが負け知らずなんだぜ?」

だぶん影で女の二・三人は泣かせていそうで。

「男の甲斐性ってやつさ」

今時、裏地にすごい刺繍入れた白ラン着て。

「校則で決まってんだよ」

嘘だ、絶対!!

嘘つきで捕らえ所がなくてきっとこの先も泣かされ続けなきゃいけないだろうし…。

はぁ、と一つ溜息。

そんな男に、なんでこのあたし、緋勇が惚れなきゃいけないんだろう。

おりしも今日はクリスマスイブ。

京一さんがが「一緒にすごしたい奴がいるなら連絡してやるぜ?」って言ってくれたけれど、丁寧に断った。

病み上がりもいいところなのに、そんなにはしゃげるかっ! って思ってたから。

そんなとき携帯が鳴った。

「よう、。今暇だろ」

この声を聞いておめかししようと思う自分を「女」だなぁ、とか思ってしまう。

はき慣れないスカート着て、ブーツもコートも全部美里先輩達女の子連中に玩具…いやいや着せ替え人形…いや…まぁそんなこんなで選んでもらったオールブランド品。

ほんのり薄化粧もした。

「クリスマスはね、女の子の気合と気迫と根性を試される日なんだからね!」

そう言ったのはブーツを選んでくれた藤咲さんだったっけ。

大きなクリスマスツリーの下で、あたしは電話をくれた男を待つ。

周りはほとんどカップルばっかり。

こんな中、一人は嫌だな。

「一人にゃさせねぇよ」

そこに、あの人が立ってた。走ってきたのか肩で息してる。

あたしを見て、俯いて表情を見させてくれない…。

何? あたしの格好そんなに変なの?!

「まいった…そんな格好で来るって知ってたら待ち合わせをここでするんじゃなかった」

どうして?

「誰より先に先生のその格好見たかった…もったいねぇ、他の男に見せんなよ」

そう言って抱きしめてくれた。

あったかくて、大きくて、安心する体温。周りの皆もだいたい同じようなことしてたんであたし達の事を気にも留めてない。

大きなツリーの木の下であたし達は微笑みあった。

「メリークリスマス」

あたしが言うと。

「メリークリスマス」

それから耳元に口を寄せてきて彼はあたしだけに囁く。

あたしは、顔を赤く染めながら頷いて答えて、二人で雑踏の中に入っていった。

「メリークリスマス」

今宵全ての人が愛する人といられますように……。

2001・12・24 UP

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