弟?


凹んだ。

久し振りに友達と凹んだ。

だけどいつまでも暗い気持ちじゃいられないじゃない?

どこかのゲームキャラも言ったけど、こんなときこそ「レッツ・ポジティブ・シンキング!」





重たい気分をよいこらしょ、と何とか浮上させていると着メロが鳴った。

あまり会えない友達が「私が好きな曲だ」と言っていたので友達二人で同じ曲にしたんだっけ。

その友達の名前はクラピカ。

実は、あたしも友達も彼のことが好きだったりする。





「はい、もしもし?」

『あ、俺だよ! ゴンだよ!』

「ゴ〜ン!…!!あんた(怒)! この間、話の途中で電話切ったでしょう!」

『ね、ねっ! 今、俺どこにいると思う?』

「え?」

『外見てよ、外!』

 二階の窓から見てみると、すごく綺麗なまん丸お月様。

 街灯なんかいらないんじゃない? っていうぐらい明るい夜に。

「おーい」

 家のすぐそばに、あのつんつんヘアの男の子が立ってる。

 携帯の電源を切ってると、ひょいひょいって軽い動作であっという間に二階に上ってきた。

「ゴーンー」

「あうあうあうあうあうあう」

 両手で頭をぐりぐりしてやると、情けない声を上げる。

 まったく!

「ごめんなさいは?」

「ごめんにゃしゃーい」

 涙目になったゴン。

 知り合ったときからまったく変わらない。

 野生児で、それで少し可愛くて。

 弟って感じ。

「ったく、連絡一つもよこさないで!」

「ごめんごめん〜。ちょっと今やってる仕事がさ…」

 こんなお子様なくせしてハンターなんて仕事、してるから。

「あ、でも大丈夫だよ! レオリオもクラピカもキルアも元気!」

あたしは多分、心配そうな顔をしたんだと思う。

 この子は、すぐに人の気配、というか顔色に気がつくから。

「え? 皆もきてんの!?」

「ううん。俺とキルアだけ。キルアは向こうに行ったんだ」

「向こうって」

 友達の方か。少し残念。

 そう思ったら、ゴンに悪いかな?

「んで、何しに来たの?」

「せっかく会いに来たのにそんなこと、言わないでよ」

 拗ねた顔がまた可愛いんで、あたしは素直に謝る。

「ごめん」

「うん。ほら、今日誕生日だったじゃない?」

 あぁ、友達が!

「うん」て頷くと、嬉しそうにゴンが笑った。

「俺達、プレゼント買ったんだ。それ持ってきたんだよ!」

「へー」

 きっと喜んでるだろうな、彼女。

 あ、誕生日といえば!

「ちょっと、ゴン! 待ってなさいよ」

「え? うん」

 あの子と二人で小遣い貯めて、ようやくゲットしたシルバーアクセ。

 十字架を選んだのは、やっぱりあの人を守って貰いたいから。

 その重荷から。

 その暗い心から。

 きっと、それはあたし達じゃくやしいことに無理だから。

「これ、バースデープレゼント。クラピカに渡してくれる?」

「う、うん」

 どうしたんだろう。

 あたしがケースこと十字架を渡すと、少し、ゴンは哀しそうな顔をしたのはきっと気のせいなんかじゃない。





 ずいっと。

 ゴンが長方形のケースをあたしに向かって差し出す。

「あ、あたしにもなんかくれるの?」

 こくん、と頷くゴンの顔はもう笑顔で錯覚かな? と思って受け取る。

「開けてみて」

 ケースを開けると、イヤリングとペンダントが入ってた…。

「か、可愛い! 誰が選んだの?」

「皆で選んだんだよ。まーお店はレオリオだけど」

「うっそ!」

「本当」

 レオリオには悪いけど、全然想像できなーーい(笑)。

 あの顔で女の子向け(だよね?)ファンシーショップとかアクセサリーショップをあの三人に案内してるなんてー!!

 あたしが笑ってると、ゴンがにっこり笑った。

 なんとなく、いつもの子供の笑顔じゃなくて。

『男』の顔で。

「ねぇ」

「な、なに?」

 何をどもってるんだろう、私。

「つけてあげるから、見せてよ」

「つけてあげるって、ゴンがあたしにこれつけてくれるの?」

 ペンダントとイヤリング。

「うん」

 どうしよう。

 なんとなく、脈拍が速くなってくのがわかる。

 自分の。

 でも、相手は子供で、弟分で、友達で。

「うん、いいよ」

「かがんで、目、閉じて」

 素直にあたしはゴンのそばによって、目を閉じる。

 くすぐったい、ゴンの指の感触。

 耳に、頬に。

 首の後ろに腕がまわされる。

 そして。

 それから。



「好きだよ」

 唇には柔らかくて優しい暖かさ。



 !

 離れようと思ったけれど、やっぱりゴンは男の子で。

 力は、あたしより強くて。



「ごめん、キスして」

 いつもなら怒れるんだけれど、あたしは気が動転していて怒れなかった。

 だって、いつも子供だって今の今まで思っていたゴンが。

「けど、俺本気だから」

 真剣で。

「本気で好きだから」

 まっすぐに。

「クラピカのこと、好きなの知ってるけど、俺、あきらめないから」

 一つ一つ、しっかりあたしの心に刻み込めるように言い切るから。

 あたしの目を見て。





 ぺたんって座り込んじゃったあたしを、見下ろしてゴンは窓に足をかける。

「また、来るね」

 にっこり、いつもの笑顔で窓から出て行く。

 ま、また来るって?

 かぁぁぁぁぁって頬が赤くなる。

 相手はまだまだ子供なのに、受け流せないのはどうして?





 そんなときに、また電話が鳴った。

 気が動転して、何言うかわからないけれど。

 でも誰かにこの気持ちは知って欲しい!

 ディスプレイには友達の名前。

 釦を押して、

「ちょっと、聞いてよーーー!」

 友達と最初の言葉がはもった。




「本気で好きだから」

 そのあと、数日は心から消えなかったゴンの言葉のおかげで、凹んだ気持ちがどこかに消えたなんてことは友達にも内緒。
終わり?






おまけ



クラピカ「遅かったな」

レオリオ「二人とも、元気にしてたかー?」

ゴン・キルア「うん」(心なしか二人とも顔がほんのり赤い)

クラピカ「? どうした?」

ゴン「なななななななな、なんでもないよ!」

キルア「右に同じ〜←棒読み」

ゴン「あ、これ! 二人から。クラピカに誕生日プレゼントだって!」

クラピカ「そうか…いただこう」(にっこり)

キルア(なんとなく、むっとしてる)

レオリオ「しっかし、お前ら遅かったな」

キルア「少し話し込んでただけだって」

レオリオ「本当か?」(にやにや笑い)

ゴン「ほ、本当だよ!」

クラピカ「何を動揺してるんだ、ゴン」

ゴン「ど、どどどどど動揺なんかしてないよ!」

キルア(『ゴン、ばればれだっての』←少し呆れた顔)

レオリオ「俺はまた、てっきりちゅーの一つか二つはしてきたのかと……」

ゴン「えーーーーー!! なんで知ってんの、レオリオ!!」

キルア「ばかっ! 言わなきゃわかんなかったんだよ!」

クラピカ「なっ!」

レオリオ「本当にしたのか、お前らーーー!!」

クラピカ「…キルア…君もか?」

この後、四人が喧嘩したなんて、ガールズ達には内緒。

某団長「あの二人は俺が頂く予定なんだがな…」

なんてどこかの盗賊団の団長が思わず呟いたんだけれど、それもまた、皆には内緒。






2001・05・05 UP

チャットにて雪月様に「あれのゴンバージョンがありますよ」と自分でばらして作成した創作。
そして当然のごとく雪月様に押し付け…もとい、贈呈。
こんなもん貰ってくださって、ありがとうございましたv
雪月様vv


ブラウザで戻ってください

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送