STUDY?



「今日はお泊りしてもいいんでしょ?」

「うん」

なんていいながらも彼女達は月を見上げて思い出す。

学校帰り。

テスト期間の間は「勉強会」と称してお互いの家に泊まってる二人。

だけど、二人とも最近勉強に身が入らなかった。

右の彼女はキルア。

左の彼女はゴン。

(どーして子供にキスされて喜んでるのかなぁ、あたし)

(ゴンってば力強いんだからぁ)

あの日、あの夜に。

二人は今まで「弟」とも「年下の友人」とも思っていた存在から唇を奪われた。

理不尽に怒ってたりするけれど。

けれど結局どきどきする胸の鼓動は二人とも抑えられなくて。

「あたし達が好きなのは、お子ちゃまじゃないもんね!」

無理やりに近い、あの行為をあまり許せなくて、思い切り力説する。

「うん! あたし達が好きなのは…その…」

かぁっと赤くなる頬。

(やばい)

脳裏に浮かんでくるのは、金髪の彼。

真紅の瞳を押し隠す彼。

だけど…それを邪魔するかのようにお子様達が出張ってくる。

二人とも赤くなっていくのが自分で判って、ばつが悪そうにせきを一つした。

「話題、変えようね…」

「うん、触れないようにしよう」

明日のテストのことに話題を向けた。

「が、頑張ろうね、お互い」

「明日、数学あるんだっけ」

とほほと、肩を落として二人は家路について行く。

「好きな奴って…俺のことだよな? 二人とも」

そんな言葉を呟く存在も知らずに。





「なんでこうなるの!」

「いや、だから、この公式を当てはめるとこうなるじゃない? たぶん、これで」

「あ、そうか。そうしたらこっちは…」

比較的真面目に勉学に勤しみながら、二人はノートを埋めていく。

途中まで詰まっていた例題も、なんとか二人でクリアして、公式自体の応用を頭に叩き込んでいく。

まぁ、その公式がテストに出るかははなはだ疑問に残るところではあるが。

「一段落つけようか?」

「うん」

「ジュースもってくるねv」

「うわーいvv」



一人がぱたぱたとスリッパの音を立てさせながら、部屋を出て行く。

残された彼女は、テーブルの上の教科書や参考書を手早くかたずけ、消しゴムのかすなどを綺麗にふき取った。

そして、視線を窓にやる。

(キルアが、来た夜に似てる)

ばふっ。

頬が赤くなる。

(やばっ)

キスの感触がよみがえって来る。

ぶんぶんと、頭を振って。

そして何気なく窓を明けた。

「来るわけ、ないよね?」

「何が?」

「え!?」

ただの独り言に返事が返ってくることに、びっくりして声のしたほうに目をやると、屋根の上に髪を下ろした彼が立っていた。

「こんばんわ」

ひょいっと軽い動作で窓辺に座るのは、黒いスーツに額を隠した青年。

「クロロ…さん」

「久しぶり」

にっこり笑われて、思わず微笑むを返す。

「で、何が? いや、この場合は誰が?ってことだろうけど」

クロロは微笑する。

ひょんなきっかけで知り合った彼は「団長」とか呼ばれてるらしい、えらい人(?)。

「あ、あの。何しにきたんですか?」

「君達に会いに」

「そうなんですか?!」

「本当は正面から入りたかったんだけど、脅かそうと思って」

「そうなんですか…?」

(窓から来るってはやってるのかな?)

友達が聞いたら「そんなわけないって!」という突っ込みを入れられそうなことを考えながら、クロロに近寄る。

無用心にも。

クロロは目を細めた。

ぴくり。

何かに反応して彼女は咄嗟に彼から離れようとする。


浮気すんなよ。

キルアの言葉が胸によぎった。


「どうして逃げるのかな」

「逃げてなんかいませんよ」

むっとする彼女を見て、クロロは優しく笑った。

ほっとして(なぜだか判らないけれど)彼に近寄る。

「どうしてあたしがここに今日はお泊りって知ってたんです」

「企業秘密」

キルアとたぶる。


「ふうん」

「へえ、そんな顔してるのかな。彼に」

「へ?」

「いま、美味そうだった」

次の瞬間、彼女はクロロの腕の中に捕まっていた。

(ナニ?)

「ここが」

そして。
唇が奪われる。

「んっ…ふっん…やめっ…」

キルアにされたそれよりも大人なそれに酔わされる。




足音が聞こえてきたのに気がついてか、クロロは彼女を解放した。
ぺたんと、ひざをつく彼女に、にっと笑う。

「ごちそうさま」

酔わされた感覚が、一気に怒りにと変換し。
腕を振り上げ。

「おまたせ〜v アップルでいいよね! ってあれ? 団長さん?」

「こんばんわ♪」

「団長さん、なんでほっぺた赤いの?」

「秘密v」

「その人に近寄んない方が身のためだよ!! あたし! 口ゆすいでくる!!」





「なんか怒らせるようなことしたんでしょう?」

めったに怒らない友達が、顔を真っ赤にさせて、怒りで涙目になっていた。

ぱたん! と大きくドアをしめて出て行ったし、走って階段を下りるなんて初めてだ。

クロロは苦笑する。

「ちょっと自分に正直になってみただけなんだけどな」

「はぁ?」

「うん。こういうことしたんだよ」

くいっと腕を引かれ。

「へ?」

そして彼女も腕の中。

「ちょっと」

こういう事されたら誰だって怒るわよ! そう言おうとした彼女は、結局言えなかった。

彼女もまたその唇を奪われたから。





大人のキスはどういうものか。

そう判らされるのは充分すぎる、濃厚なもので。



「ごちそうさま」

酔わされた感覚が、一気に怒りに変換し。

「おっと!」

「団長さん」

地べたをはいずるように低い声に、クロロは笑った。



ばたばたという走って階段を駆け上がる音がして、第一の被害者が飛び込んでくる。

そして見て。

「ま、まさか…」

「う、うえーーーーん」

ナニがあったか判ってしまう。

「頭に積み込む勉強もいいけれど」

二人の少女の唇を簡単に奪った彼は、さわやかに笑った。

小憎らしいぐらいにそれは魅力的な大人の笑みだった。

「そっちのお勉強もしておいてくれると助かるな」

「「誰がよ!!」」

「俺が」

さらり。

そう言われて。

二人の少女は、呆然と自分達の唇を奪った彼を見送ってしまった。

「あ、明日…テスト。そう、テストなんだよね」

「べ、勉強して忘れよう。そうしましょ」

なんて言い合う、哀れな子羊が残されたとか。




後日談として。
結局彼女達は、次の日にあったテストの科目全てが補習となり。
なぜか再会したキルア&ゴンにばれて、「そんなに勉強したきゃ、俺達が相手してやるよ!!」と数十回もキスをさせられてへとへとになったのは、また別の話。

「そっちのお勉強なら僕が見ようか…」
「収拾がつかなくなるから止めときな」
なんて言い合う奇術師ヒソカと、ノブナガの姿があったとか。

無理やり終わる(爆死)





2001・06・22 UP

雪月様に捧げた団長話。
最後に出て来たのは、まぁ、私の趣味なんですが(苦笑)。
ハンター…団長サイドが好きなのか主人公サイドが好きなのか…。
とにかく貰ってくれてありがとうございます、雪月様vv
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