守護者の夢
(1)
僕が彼女に出会ったのは義姉と出会った頃に重なる。
父母、というか世話をしてくれた大人として思い出すのは彼女…(義姉とも呼べず、僕はは呼び捨てにしていた)の姿だ。
ここではないどこか、そんな言葉が似合う部屋で見たこともないものに触れ、そして学んだ。
最初はおっかなびっくりだった。
もちろん、お互いに。
だが次第に回数を重ねるごとに慣れてきて、僕と義姉が駒城の家に引き取られたときも彼女にはたびたび出会った。
それは義姉にも秘密の存在であり、不思議なことだったから僕はあえて彼女の存在を誰かに言うことはなかった。
駒城の家に引き取られたあの頃は、蔑みの視線や言葉を投げつけられて(少なくとも陰口でだが)、僕の心のよりどころは義姉とという存在だけだった。
特に彼女の世界にいるときは、着慣れない洋服を身につけさせては外に連れ出してくれた。
スイゾッカンとかいう海に住む生き物を見に行ったこともあれば、ドウブツエンでトラや象なども見に行った。
信じられないことに剣牙虎や竜が存在しない世界だ。
はその未知の世界での教師であり、母であり、姉であった。
時折妹で、そして僕はおそらくは……いや、正直に言おう。女としても見ていた。
駒城の若殿から借りた艶本で、女の身体には興味を覚えた頃だったからだ。
は一緒に寝たいといえば、寝床を共にしてくれた。
ある夜。
僕はそんな彼女の、その首に手をかけ、力をこめようとすればなぜか彼女はなでてくれた。
僕は涙をこぼしながら彼女に謝り、そしてその身体にすがりついた。
それから彼女は義姉の存在を跳ね除け、僕にとっては唯一無二の『女』の存在になった。
彼女は何があっても僕の傍にいてくれると思っていた。
だがそれは唐突に終わりを告げた。
彼女に会えなくなったのだ。
何日も何日も待ったが、全くと言っていいほどに。
僕は荒れた。
その時期がちょうど義姉が駒城に抱かれたのと同時期だったせいか、義姉を想ってか、と周囲に思われたのに違いない。
側女を与えられたが、僕の行為の最中にすることが原因もあったが一人逃げられ、二人目は長く続いたが腹の子供も病死した。
がいないという事実が僕の何かを壊したのには間違いない。
周囲はそれが義姉だとまた思ったのだろう。
女に関することはもう荒れまくったと言っていい。
15歳になって元服し、新しい姓を貰ったその前の年、義姉は正式に駒城の妾になった。
唐突に義姉の姿に彼女の姿が重なった。
彼女も誰かに抱かれているのか、嫁いだのかと思うと無性にやりきれなくなって、また問題を引き起こしてしまった。
気がついたら僕の彼女の恋慕の情というものは、狂ったそれに成り果てていた。
会いたい、会いたい。
会えばきっと抱きしめたいとでも思ってしまう、浅ましい僕の欲なのは確かなのだがそう願ってしまう。
女は、正直彼女でなければ全て同じだった。
色街の人間でも、…それこそ、僕に男を見出して誘った義姉でさえも。
全ての女はの代用品で、そしてけっして彼女自身にはなりえないものだった。
抱いて吐き出せる欲で満たされるのは肉体だけで、精神的には満たされるわけはなかった。
僕は一生、このままだろう。こと、女に関しては。
彼女に再会できるとは思っていない。
幼い頃成人していた彼女は、もう再会すればきっと四十あたりにはなっている。
僕はそれでもかまわないが、彼女は…なんと言って僕を拒絶するだろうか。
そして、28歳の今。
陸軍独立捜索剣虎兵第十一大隊第二中隊に任官し、そこそこ仕事もこなしていたある日の…夢。
そう、夢、のはずだ。
「……えーと、不法侵入として警察に通報しますよ、泥棒…?…さん?」
「ま、待ちたまえ、話せば…わかる」
そこには懐かしく思う部屋と、そして彼女が…あぁ、会っていたあの頃と全く同じ年代の彼女が眉をしかめて立っていた。
それから悲鳴を上げようとする彼女の口を塞いで抱きかかえた。
…僕も慌てていた。
「僕ですっ、新城直衛ですっ!」
抱きかかえた彼女の柔らかな肢体。
もっと身長はあると思ったのだが、僕と同じぐらいのそれは簡単に腕の中に入る。
自分よりも大人だった女性が、自分よりも年下になっていることへの違和感等はそれですっとんだ。
あぁ、そうだ。彼女ならば『新城』という姓は知らないか。
「な、なおえくん?」
僕の手のひらの下で彼女の唇がそう動く。
それだけで何かが満たされ、何かがうずいた。
「そうです。直衛です。姓を頂いて新城直衛となりました。貴女に抱っこされたり、ご飯を作っていただいたり、時折一緒にお風呂にも入ったこともある幼子だった」
甘えて床も一緒にしていただいた。
もう平気だろう。さぁ早くこの手を離して差し上げるのだ、と自分に命じるが…僕の身体は頭の命令を聞かなかった。
やっと再会できた彼女をどうして放す必要がある? と言わんばかりだ。
ぱしぱしと口を塞いでいた手の甲を叩かれ、僕はのろのろと塞いでいた手だけを放す、
「本当に、直衛…くん?」
「はい」
「……」
彼女は大きな瞳をさらに大きく見開く。
僕は抱きかかえていた彼女からそっと腕を放した。
真正面からお互い見つめあう。
すごく美人でもなければ、不美人でもない。
やせすぎではなくて、少しだけふっくらとした身体。
色街で抱いた女や義姉の方が肉体的には女として魅力的なのだろうが、僕は彼女が良い。
彼女しか…そう、しかいらない。
そっと恐る恐る、彼女の指が僕に向かう。
指が僕の頬を撫でた。
ぞくり、とするが顔には出さない。
「ほ、ほんとに…?!」
「本当です」
「……なんで大人なんさ?!」
「それはこちらも問いたい。なぜあの当時のままなのです」
少なくとも一番最後に出会った頃のままだ。
「いくつ?」
「28」
ぎゃあ、だいぶ歳抜かされた! などと女性にあるまじきその様子に、久方ぶりに笑うことが出来た。
「っ」
「なんですか?」
「いや、ずいぶんと大人の笑いをするようになったなぁと」
「…僕はもう大人です」
貴女を抱けるぐらいの大人です、と口走りそうになる自分を止める。
駄目だ、駄目だ。
僕はそうとう舞い上がっている。
ブラウザバックでお戻りください。
原作での新城さんの女の好みはそのままずばりストレートなキャラが出てくるようですな。
(漫画には未登場のようですが)
でもうちのサイトではこんな感じで御願いします。
新城さんが4歳から5歳〜12歳ぐらいまで交流。
さんとしては実は16歳ぐらいからちょこちょこ交流して、現在新城さん28歳。さん22歳ぐらい。
かな?
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