甘美な夢を見た。
これが現実でないのが、たまらなく残念で仕方がない。
そんな夢だ。
6月5日(もしくは6月6日)
(2)
(美雪ちゃんの誕生日だというのに、散々だった)というのがその日の慶一郎の感想になるはずだった。
疲れて、でもようやく帰ってこれて、美雪に渡すプレゼントは綺麗にがラッピングしてくれた。
(「素敵」って言うなら、もう一輪つんでくればよかった…)
そうすればは喜んだだろうに、気の利かない自分はそうはできなかった。
風呂も入らず、慶一郎は自分の部屋に戻った。
さっきまで起きていたので、きっとまだも部屋にいるだろう。
(眠い)
慶一郎は自室の部屋の扉を開き、そうしてすとんと一度、意識を落とした。
ふいに意識が浮上したのは、香りのいいボディソープの匂いと優しい掌を感じたからだ。
呻いて、なんとか瞼を押し上げるとが自分の腕を引っ張っていた。
「起きて、とりあえずお布団に入って寝てください」
そう言われた気がするが慶一郎はちゃんとは聞いていない。
「?」
慶一郎は確認するかのように呼びかけると、彼女は小さく笑った。
「南雲さん、おきてください。お布団に入って寝ましょうよ。ね?」
(夢だな。が寝ましょうって誘ってくるわけないから)
慶一郎は自分が己に都合よく…「一緒に布団に入って寝ましょう」と誘われたと…解釈しているのに気がついていない。
「うん…判った」
「はい、時計も壊れるからはずして、革ジャン脱いで」
言われたとおりに脱ぐと、が動いてそれをちゃんとしてくれる。
「せめてパジャマに…って聞こえてます?」
「…うん」
(夢なら、俺の都合よく動くわけだろうな?)
慶一郎は半眼での姿を見ていた。
(抱きしめたい。そういや、今日はまだ抱きしめてない…)
「じゃ、おやすみなさい」
その笑顔で慶一郎はとっさに彼女の手を取った。
「うん」
次の瞬間、慶一郎はそのまま布団の上に倒れこみ、掛け布団をかぶる。
当然、の身体を抱きこんで。
「え? あ? 南雲さん」
「お休み」
(リアルな夢だなぁ)
慶一郎はそう思いながら瞼を閉じた。
自分の臭いとは別に、彼女の匂いと体温を感じる。
手が自然に彼女の身体を抱きかかえた。
(柔らかい)
夢と現実が混ざり合う感覚が慶一郎を襲い、そのまま彼はそれに身をゆだねた。
「南雲さんっ、起きて、素早く起きて」
の控えめなその声に眉を寄せる。
「……眠いんだよ、寝かせてくれ」
ぺちり、と腕を叩かれて慶一郎は一瞬だけ「あれ?」とか思ったが、その次の瞬間気持ちのいいその感触に夢心地になった。
自分が大きな身体なので、そこに首をうずめるのは立ってる状態だとまず無理だ。
こうして一緒に寝ていなければ。
(耳が弱いんだよな)
そう思いながら首筋に顔をうずめる。
他の女の愛し方と同じには出来ない。
そうは思うが具体的にどうすればいいか判らない。
(なんだ、これは。を抱く予行練習か?)
「眠かったら、私を放してから寝てください…っ」
もぞもぞ動くに合わせて手が、腕が、身体が自然に動いた。
慶一郎は彼女の身体をさらに密着させる為に、彼女のお尻をその大きな掌で掴む。
「っ!!!」
羞恥で体温が高くなるの身体。
しかし、慶一郎は気がつかなかった。
「南雲さ…ん」
(慶一郎って呼ばせたいなぁ)
またそう思いながらまどろむ。
(夢なんだから、そのあたり直ればいいのに)
「おね、お願い…します。もう、ちょっと…本当に駄目ですって…っ」
の息が耳にかかった、そんな感触に一瞬、睡魔が引いた。
「うん…」
(揉みたい)
慶一郎の手が動き始める。
「あ…」
じゃれ合いのような愛撫。
夢の中だと思っている慶一郎にとってはすでに自分のものだった。
細い首筋が見えた。
そこに唇を寄せて吸い上げる。
(ついたかな…)
布団の中では暗くて見えない。
夢のはずなのに、と思う前にの反応の方が気になる。
「っ」
こんどは慶一郎のほうから動いた。
いつも美雪ばかりがそこに顔をうずめていたので、少しばかり彼も気にしていた。
がりがりで痩せていたあの時と違って、弾力もあるし、厚みもましたその場所に顔をうずめる。
(…服が邪魔…)
だがその柔らかさに満足した。
「…起きたら、ちゃんとする…」
「お願い」
慶一郎の耳入ってきたのは懇願の声。
「苦しいんです」
(俺に抱かれないのが?)
また都合よく解釈するが、はたと思い出す。
(腕を回してるのが、重いのか)
「ん…」
名残惜しそうに彼女のお尻から手を離し、腕をどけると途端に熱がなくなってさびしくなる。
なので手だけは彼女の太股に置いた。
もっと離れようとするに、慶一郎はその太股を押さえて止める。
「…南雲さぁん」
(夢なのにまだ慶一郎と呼ばないとは…)
それでもおびえた、しかし甘い声音に気分を良くした。
「キスしてくれ」
「は?」
「キスしたら、我慢するから」
(抱くのも、全部我慢する)
目を瞑り、彼女が動くのをひたすら待つ。
「いやか…?」
自分の声とも思えないそのかすれた声。
まどろみのその中で、彼女の柔らかなそれが、音もなく慶一郎の額に落ちた。
キスともいえない、柔らかで軽い感触に唇を尖らせる。
「それ、じゃない。もっと」
半開きの瞳で見つめるとうぅ…っと呻きながら、彼女の顔が彼のそれに近づく。
「目は、閉じて」
彼女のお願いに慶一郎はそのまま、また瞼を閉じる。
その場所に羽のような感触が落ちた。
(…気持ちいいなぁ…)と、そう思うがまだ催促を繰り返す。
「もっと」
頬はくすぐったい。
「わざとか? もっと」
催促すると、キスを繰り返してくれるに慶一郎は歓喜する。
その次は顎になり、もうその次は唇だと確信したのに、その脇だったのには落胆した。
「それ、…キスじゃない」
(しょうがないな)
慶一郎はそこに自分の唇を寄せた。
「っぅ…んっ」
小さい悲鳴すらも飲み込み、唇をこじ開ける。
襟を片手を差込、大きく開くとそこにそのまま手を突っ込んだ。
口内を蹂躙していけば、そのまま彼女の身体が下になる。
(くせになる…)
甘美で、淫靡な夢だと思う慶一郎は、そのまま彼女を襲いたかった。
でも駄目だ。
こうして唇を寄せ、味わっても睡魔の方が勝り始めている。
名残惜しく思いながら、慶一郎は彼女の胸に吸い付いた。
びくん、と反応するのに気を良くする。
「あ…っ」
その後、なだめるかのように抱きしめた。
(本当は最後までしたい。抱きしめたい…だが)
腕の中の慶一郎の夢の産物…であると思っている…は戸惑っていた。
女としての悦びや、行為によることを。
荒い息を吐き出しているを一回抱き寄せる。
(怖がらせるつもりはない。ただ受け止めきって欲しいだけ…)
「うん、これで我慢する」
それだけ口にすると、額に唇を寄せた。
ちゅうっとわざとらしく音を立てて、そのまますとんと眠りについた。
時間になって慶一郎は目を覚ました。
ひどく生々しい夢を見たおかげで、下半身が元気なのはそのせいかとも思える。
ただの男の生理現象に過ぎないが。
しかも起きたら夢の前半のようにきちんと自分の革ジャンはハンガーにかけられ、腕時計は枕元にあった。
風呂に入っていないし着替えていなかったため、普段着のままだ。
汗臭い男のこの格好なのに。
(かすかに違う香りがするのはなんでだ)
布団から、自分の傍から。
掌を見つめてから、いつものように食事を作るその前にシャワーを浴びるかと立ち上がった。
この後、脱衣所から出てきたばかりのと慶一郎は鉢合わせし、その首筋に自分が夢の中でつけたキスマークがあって彼がひどく動揺することになる。
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ここまでやったらさせろよーーー!! いい大人がなにやってんのー?と書いてて自分で突っ込みを入れたが。
でもさせないのが書いてる人のジャスティスだろうと思い直して最後までさせませんでした。
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