6月某日・裏
(5)




しゅるり、という衣擦れの音に敏感になってる自分に、慶一郎は苦笑いを浮かべた。

くるりと振り向けば、そこで愛しい彼女が服を脱いでいるのに、律儀に彼女からのお願いを守ってこうしてその姿を見ないでいる己がおかしかった。

を手に入れられたという安堵と嬉しさでテンションがいつになく上がっている己に気がついている。

彼女を守るため、そして彼女が望むのなら、どんな相手だろうと負ける気はしない。

それこそ、ソルバニアのどんな怪獣だろうと3mはあるマフィアの男だろうともだ。

烈一族の女占い師・犀蓮から話を持ちかけられたとき、慶一郎との結婚話を当初は話半分で聞いていた。

確かにのことを自分に縛り付けるには『結婚』したほうがいいが、それはじっくりとこれから彼女を口説き落として、恋人になってからでも遅くはないのだと思っていた。

『家族』と縁のない自分が、父親になり自分の血を繋いでいくという生活。

それに怖気づかなかったと言われたら嘘になるが。

「そんな悠長なことしてたら、子供が生まれるのは何年先だい?」

だが、その慶一郎の考えを占い師は警告と共に改めよと言ってきた。
                                     
つがい
「あの子の運命はあんたの運命を大きく変えた、夫婦星さ。元から番の星の持ち主からあんたを奪うのには、飛鈴はまだまだ弱かったんだろうね。
…そう、だけどね、旦那。
あの子とこのまま添い遂げずにずるずるいくようなら横から違う、大きくて闇に染まりかけた星が彼女を掻っ攫ってしまうよ」

その言葉に美雪が言ったあの言葉を慶一郎は思い出していた。

「…早く言わないと、繋ぎ止めないと…叔母様、いなくなってしまう…」

横から彼女を奪われる、という恐怖に慶一郎はに触れることで、それを忘れた。

「あんた達の星に『その星』は間違いなく近づいている。今はそんな影は見えなくても、近い将来必ずそいつは現れるよ。
…あんたの命運を回復し、日向に回復してくれるのが彼女の星なら、あの子の命を守り、守護するのがあんたの星さ。
彼女の星はあんたの星を強くしてくれるだろう。それこそ、向かうところ敵なしになる。
だからこそ…その星は、あんたに敵意を持っているから、あんたを強くするあの子が目障りなのさ。
…早いところ、星を懐に入れて繋ぎ止めて、守っておかないと、本当に知らないよ」

一言、一言、区切りをつけて強く彼女は言った。

占いと言うものを慶一郎は軽視しない。

「彼女が、鬼塚がどうなっても知らないよ」

本物は確かに星を読み、そうして的確な助言を与えてくれるものだとちゃんと慶一郎は知っていた。

に相談したあの会食では、まさか烈一族による、二人の強制結婚だとは本当に最初は気がつかなかった。

黄龍…かつて自分を人違いで襲撃してきた老暗殺者で、鉄斎の義弟となった老人からその話が出て酷く驚いた。

礼服を着ろといわれて、はチャイナロングドレスを、そして自分もロングパオを着せられたがどちらの服の色合いも祝い事に使われた色彩だったので、予感が無かったとはいわないが。

「これで二人は夫婦になった」の言葉に酷く動揺した。

自分『が』愛する女を、彼女の同意なしで自分に繋ぎとめてしまった罪悪感。

この結婚で自分という生き物が誰かを愛することを祝福されたような、そんな希望。

「南雲さん?」

そう呼ぶ彼女の姿をまじまじと見て、そうして美雪と犀蓮の言葉が彼の中で響いた。

「…早く言わないと、繋ぎ止めないと…叔母様、いなくなってしまう…」
「彼女が、鬼塚がどうなっても知らないよ」

(失いたくない…!)

そうして彼はある意味、開き直ったのだ。

もうすでに結婚式を終わらせて、烈一族の中で自分たちが夫婦になっていることを伝えた。

二人っきりになって、告白しなおした。

暗示をかけられたが教えてくれた、などとは決して言わない。

思いを伝えて、承諾してもらった(と、少なくとも彼はそう思っている)。

早く、早く、彼女の身体に自分を刻み付けたい。

傍にいて、愛して、愛されたい。

その感情が溢れ出してとまらず、入浴に誘った。

一分でも、一秒でも一緒に長くいたい。

激しい運動が止められているに対して、愛撫は出来てもその行為をぶつけることは止めたほうがいいとは思っている。

想いをぶつけるような、そんな愛し方しか慶一郎は知らない。

本能のままに女を押し倒し、愛撫し、貫き、己が達せればそれでよかった。

ピロートークなどしたことも無い。

そんな乱暴な抱き方を本調子じゃない彼女にすれば、またそれだけ帰国が長引くことになるだろう。

それだけは避けたかった。

(美雪ちゃんの追試もあるからな)

慶一郎はさっさと全裸になると腰にバスタオルを巻いた。

? そっち向いてもいいか?」

「ま、まだ駄目ですよ?」

着ていた物を片付けている音がしてから、ようやく慶一郎はの許しをもらって振り向き、彼女の身体を持ち上げた。

彼女は用意されてあったもので化粧を落として、しっかりとバスタオルが取れないように両手で持っている。

「ほら、開けて」

浴室の扉をに開けさせて、慶一郎はそこに入った。

ユニットバスではない上に、かなり広い。

その浴槽にはお湯が溜められており、二人を待ち構えていた。


エロははしょるとおもったろ? 裏創作の部屋に行ったと思ったろ? 違うんだなぁ、これが。
とりあえずぬるい裏で、「こんなん先生じゃない! もっと激しく!!」とか言われそうだけど
とりあえず、うちではこう、ということでよろしく。

の長めになった髪を慶一郎はドライヤーで乾かしていた。

「自分で出来る」と言う彼女に無理を言って代わり、慣れない手つきでそれをやる。

「前、美雪ちゃんがの髪に触れてたろ。それがちょっとうらやましくてな」

彼女が着ているのは男物のパジャマの上着だ。

慶一郎のサイズ用が用意されていたので、ワンピースの状態になるぶかぶかのそれをはなんとか着ていた。

風呂では世の恋人同士が本当にしたことがあるのか、かなり彼女としてみれば信じられない行為の範疇をされてしまった上にのぼせそうになって出てきた彼女は、水分補給をした後にベットに運ばれて、慶一郎の好きにさせていた。

パジャマの下の胸元には慶一郎の指や唇の痕がしっかりと残っていて、それをかくして身体を固くさせていた。

慶一郎はその代わり、上半身裸だ。

大小無数の傷痕をさらして、彼女の髪に触れる。

「なぐ…慶一郎さん、その」

は慌てて言い直して言葉を続ける。

南雲さん、と呼べばまた何かされてしまうことを彼女なりに理解していた。

「帰ったら、この状態、というかその…結婚のこと、お父さんと美雪ちゃんに言わないと…」

「そうだな。急な話だったしな。日本に帰国したら届けも確認しないといかんだろうな」

「確認?」

…。ここの連中の行動は常人の予想を上回る速さで先手を打つんだ。もう、俺達の婚姻届は提出された上に、受理されてるとみていい」

「…ほ、本人が届けてないんですよ!?」

「ごまかす方法はいくらでもあるさ。問題は、ちゃんと俺の籍にが入ってるかどうかだ。万が一にも婿養子になってたら、俺が鬼塚慶一郎になる。…ま、どっちでもいいが」

ドライヤーのスイッチを切って、備え付けのブラシを手渡してくる慶一郎の礼の言葉をなんとか呟くとはそれを使って髪をとかす。

そんな彼女に苦笑しつつ、慶一郎もビールを冷蔵庫から出して飲んでいた。

がしがしと自分はタオルで髪を乱暴に乾かしながら、二本目を持つとまた空にする。

それを片手で縦に押しつぶすと、不燃物を入れるだろうそこにしまった。

「鉄斎先生には俺が言うよ。…もっとも、俺の気持ちはお見通しみたいだったから、遅かれ早かれこうなったとは思うかもしれないが」

「え」

にキスをしかけたあのときから、鉄斎にはばれていた気がする、とまでは彼は言わない。

美雪には自分から告げていたことも言わない。

「…言っとくが、俺の気持ちを知らなかったのはお前だけだ」

びしりと指差されての動きが止まる。

「え、あ…だって、南雲さん…」

は、俺とそういう空気になったら逃げたよな?」

「そういう関係に、そのなるはずじゃないというか…。そんな、とかその…思ってまして…」

の言葉に慶一郎はぼりぼりと頬をかいた。

暗示にかかっていたときの、彼女からの独白を彼はよく覚えている。

美咲を愛していると思い込まれていたこと。

姉の身代わりになるのは嫌だと言った、のこと。

「まさか、こんな風になるとは思ってませんで…。いや、その…すごく嬉しいん、ですよ? それは本当です」

「あぁ」と慶一郎は笑う。

「…おいおい、一生かけて思い知らせてやるから覚悟するように」

「お、お手柔らかにお願いします…」

「…ところで」

「はい?」

「今、また南雲さんって言ったよな?」



慶一郎は無言で三本目を飲み干して、缶をぐしゃりと潰す。

「け、けーいち…んぅっ」

次の瞬間、の唇はふさがれ、またも押し倒された。

息の荒い彼女が見上げると、慶一郎は彼女の左手を手にとって、薬指の付け根を小さく噛む。

「痛っ」

「ここ、俺のだっていうのでつないでおかないとな」

「え…?」

「そうしたら自覚するのは早いだろ」

「何を…」

      
 おんな
「お前は俺の 妻 だ」

「…っ、はいっ」



「だから、名前で呼んで、俺をそのまま愛してくれ」

鬼塚は、こうして地上最強の男のものとなり、南雲慶一郎は彼を愛するたった一人の女のものになったのである。



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ピロートーク云々は、想像ですけどね。
原作の描写で、そんな感じかと受け止めました。
ピロートークってなぁに? という清い閲覧者の皆さんはそのまま清らかなままでいなさい
大人になったらわかるから!誰にも聞くんじゃないよ?! いいですね?!(銀さん風)

これ、書いてる人からのお願い。(スライディング土下座)

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