れんきん†むそう

第零話


眼を見開くとそこは荒野だった。

「ここは、どこだ?」

あたりを見渡すと、隣にはどこかの学校の制服らしきものを着ている少女が倒れている。

いでたちは、肩で揃えられた綺麗な黒髪。艶のある白い上着に、薄い蒼のみにスカートに黒のローファー。

スカートとニーソックスの隙間から覗くがとてもまぶしい。

顔立ちは、長い睫毛に形の整った眉に、スッと通った鼻筋と桜色の感触のよさそうな唇。

顔立ちを含め、まさに大和撫子を現したような美少女ではあるが、その手には何故か木刀が握られている。

気を取り直し、もう一度、辺りを見渡す。

明らかに日本ではない。

世界中を回っているときに、中国で見かけた景色を思い出す。

特にできるだけ会いたくない人(?)達が住んでいる地に似ているからだ。

とにかく記憶を整理しようと頭を振る。

仕事をしていたことは間違いない。むしろ妖魔を滅して、帰る途中だった。

特に罠があったわけでもない。それは、間違いない。そんなのを見落としていたら、とっくの昔に死んでいる。

むしろ、打ち砕く自信がある。

とりあえず、隣で気持ちよさそうに寝ている少女を起して、少しでも情報を得ることにしよう。

「お嬢さん、ちょっと起きてくれないかな?」

体を揺するが、いっこうに起きようとしない。

「う〜〜〜〜〜ん・・・あと・・5分・・・・・むにゅぅ・・・・・・」

「根性すわっているな・・・・って、いやいや、とりあえず起きてくれ」

続けて体を揺する。すると少女の目がかすかに開き、男を捕らえるが、そのまま眠りに入ろうとするが。

しかし、違和感を感じたのであろうか、もう一度男を見る。

知らない男に、その後ろに広がる青い空。ゆっくりと辺りを見渡すと、どこまでも広がる見知らぬ荒野。

眼を見開き、勢いよく体を起す。瞬間、男は少女とぶつからないように体をそらす。

それに気が付くことなく、少女は再び辺りを確認する。やはり、見覚えない風景に、一人の男。

「ここは何処?あなたは誰?」

「とりあえず落ち着こう。俺もいろいろと知りたいところだし・・・とりあえず立とうか?」

手を差し伸べ、少女を立たせる。

「まぁ、とりあえず自己紹介しようか。俺は、“”。まぁ、何でも屋みたいな事をやっている」

少女が一般人みたいなので、裏のことは伏せておく。

知らないままのほうが、幸せなこともある。

「私は、フランチェスカ学園の2年、“北郷一美刀(ひみか)”といいます」

2008.12.12 UP

第壱話


「とりあえず状況を整理しよう。北郷さんは・・・」

一美刀(ひみか)が、の言葉をさえぎる。

「あ、あの・・・」

「何?」

「一美刀って呼んでもらえますか?できれば・・・・その・・・・・呼び捨てでお願いします。私、年下ですし・・・・」

顔を真っ赤にしながら、スカートを両手でぎゅっと握り、上目使いでお願いする。

無自覚で、自分の魅力を引き出すとは、末恐ろしい。スカートと一緒に木刀が握られているのが、そぐわないが・・・・・。

理由は、年下だけじゃないような気がしないでもないが、ここは(勝手にですが)鈍感王の名を冠する

素直にそのまま捕らえる。

「じゃあ、一美刀が、気が付く前にどの様な状況だったか教えてもらえるか?ちなみに、俺は仕事帰りに光に目を眩ませたらここにいた」

「私は、夜の見回り(?)をしていたら、学園の美術館から鏡を盗んだ人を見かけて、返すようにいったら、関係ないとか言われて、いきなり襲われたんです。応戦してたら鏡が割れて、そこから伸びた光につかまれ、気が付いたらここに・・・・・」

鋭い体捌きに、強烈な攻撃。応戦なんて、とんでもない。

攻撃を裁き、防ぐだけで精一杯だった。

手も足も出なかったのが実状だ。

もっと強くなって、今度は負けないと心に誓う。

「俺が言うのもなんだが、近くで争ってたら気が付かないはずがない。俺の周囲には、そんな気配は間違いなくなかった。となると・・・・共通点は光だけか・・・・・犯人は、何かいってなかったか?」

「う〜〜〜〜〜ん・・・・・これが、罰だとか何とか言ってました」

「罰・・・・・か」

(俺が、罰を受けるなら思うとこはある。正義なんて、人それぞれによるものだからな。しかし、裏を知らない、一般人の一美刀がそれを受けることがあると思えない。あるとしたら、罰とは鏡を割ったことに対して・・・・。だめだ。情報が少なすぎるな)

「まぁ、ここにいても仕方がないし、町でも探しにいこうか?」

一美刀が頷く。

「その前に、お客さんのお出ましだ」

の後ろに、一美刀が目を凝らしてようやく見える人影がある。

「あれ・・・ですか?」

「まぁ、通り魔かなんかだろう。捕まえて情報を得ようかと」

「危ないですよ」

「大丈夫。これでも多少の腕に覚えがあってね」

それから、少しばかり待っていると、鎧を着用し、頭に黄色い布を巻いた眼つきの悪いのとチビと太っちょの3人組が姿を現した。

「遅い!!」

が、一声をあげるが、それを無視する形で、目つきの悪い男が話し始める。

「よう、兄ちゃん。そのお上品そうな服とそこの嬢ちゃんをおいて消えうせな」

目つきの悪い男は、嘗め回すように一美刀を見る。

その視線を感じたのか、一美刀は鳥肌が立ち、木刀を強く握り締める。

そこにチビが言葉を続ける。

「そこの嬢ちゃんもすぐ良くなるさ」

下卑た笑いを浮かべる。

「早くしろ。死にて・・・・・の・・・・か」

兄貴といわれた男が、に刀を突きつけるが、言葉が知りつぼみになっていく。

「ん?どうした。続きは何なんだ?」

から、3人が気を失わないように、ぎりぎりのラインで調整しながら、3人限定だけの殺気が放たれる。

さらに、言葉を続けようとすると凛とした透き通る声が飛んでくる。

「そこの3人。身の程が分かっただろう」

声のした方向には、吸い込まれそうなほど黒く艶やかな瞳と、まるで黒曜石を溶かしたような煌きをはなつ漆黒の長い絹髪をもち、その手には東洋龍をかたどる矛を携え、凛とした空気を纏う美少女であった。

「貴様らごとき下郎が、この方々に手を出すことはまかりならん。匪賊風情が、その身をわきまえろ」

美しい鈴のような凛とした透き通る声が、その場にさらに響き渡る。

「このまま立ち去るというのなら見逃してやろう。だが、刃向かうと言うのなら!」

少女は、東洋竜をかたどる矛を構え、言葉を続ける。

「その方々のお手を煩わせるまでもない。我が青龍偃月刀が相手をしてやろう!」

は、少女の詳しい力量を知りたく、僅かに殺気を緩め、3人が動けるようにする。

「な、生意気に女だ。おい、チビ」

「へい!おい、デク!」

「う、うん・・・・捕まえる」

3人は、その場を取り繕うかのように必死に動き出す。

「ほう。やるのか。ならば!・・・・・参るっ!」

切りつけるような短い言葉と同時に、獲物を構えたまま地面を蹴る。

「せぇぇぇぇぇやぁぁぁぁぁぁぁ!!」

自分の背丈以上ある獲物を振り上げ、雄叫びを上げながら一閃。

太っちょを吹き飛ばす。

目つきの悪い男が、チビに指図を出す。

「ほう、貴様が相手か!?」

少女が、一睨みするとチビはたじろぐ。

「えっ、いや・・・・俺はやらねぇ・・・・」

「うぉいっ!てめぇ、何逃げてんだ!」

引け腰のチビに突込みが入る。

「だって、アニキ!デクを一撃で吹っ飛ばすような怪力女にゃ勝てやしませんって!」

少女の眉が僅かに引きつる。

「怪力女・・・・・・?」

少女から言いようのない重圧が湧き出る。

「この私が怪力女だと・・・・?」

(あ〜〜あ、地雷踏んだな)

の脳裏には、黒いオーラを背負い、微笑を浮かべる知り合いの女性達が浮かんだ。

「へっ?あ、う、嘘嘘嘘っ!ちょー嘘っすよっ!」

弁明するが、時すでに遅し。

「聞こえんなっ!」

次に瞬間、チビのみぞおちに槍の石突きがめり込み、そのまま地面へと倒れる。

「さて、残りは貴様だけだ。・・・・どうする?まだ続けるか?それとも仲間を連れて逃げ出すか?好きにする良い」

「分かった。お前らのこと、見逃してやるよ」

憎憎しげに少女を睨み付けていた男が、負け惜しみの言葉をはき捨て、地面でノビていた仲間を乱暴に蹴り起し、少女を一瞥し、そそくさと逃げ去った。

「ふぅ。・・・・・お怪我はございませんでしたか?」

「おかげさまで」

「そうですか。それは良かった」

先ほどまでの勇ましさとは裏腹に、少女は穏やかな微笑を浮かべ言葉を続け、「しかし、差し出がましい事をして、申し訳ございません。あなた様のお手を煩わせるのも何かと思いまして」と、本当に申しわけなさそうに謝る。

が、3人組にしていたことに気が付いてたようだ。

しかし、は、手をひらひらと横にふり、「楽ができたし気にするな」と返す。

一美刀には、何のことやらさっぱりな表情をしている。

「しっかし、あいつらも見る眼がないねぇ」

「何がでしょうか?」

少女が、きょとんとした表情になる。

「こんな美少女を捕まえて、怪力女だなんてなぁ」

の言葉に、少女は顔を赤くしワタワタと戸惑い、一美刀から少し冷たい視線が突き刺さる。

その空気を読めないまま言葉を続ける。

「っで、君は?」

その言葉に、少女は気を取り直し自己紹介を始める。

「これは失礼しました。申し遅れましたね。姓は関、名は羽。字は雲長。あなた様がたをお迎えにあがるため、幽州より参りました」

3人の間に一陣の風が吹き抜けていった。


2008.12.12 UP

うわーい!! まさかの投稿作品です!!
あれだよね、PS2化もアニメ化もした「恋姫†無双」とのクロス作品(だよね、そうだよね?!)
そして当たり前のように主人公キャラ(プレイヤーキャラとも言うか)が女体化!
ありがとう、ありがとう!! 冬眠様!!

ブラウザバックでお戻りください

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送