れんきん†むそう

第参話




「我が主にして、天の御遣いよ。我らと共にこの戦乱の世を鎮めましょう。私達は、あなた様達こそ自分の主人に相応しい方だと認めました。ですから今後、我らの事は真名で予備、家臣として扱ってください。我が名は関羽。字は雲長。真名は愛紗。・・・・これからは愛紗とお呼びください。私は、一美刀様をご主人様、様をお館様と、そう呼びいたします」

「鈴々はねー、名は張飛!字は翼徳!真名は鈴々なのだ!」

「愛紗、ちょいまった!」

横から、口を挟んだのは、だった。

「一美刀の事は、ご主人様でいいんだが、俺のことをお館様ってのは待ってくれ(BASARAっていうか、和美や空牙衆たちじゃないんだから)。俺のことは、名前で呼んでくれ」

「だったら、私も名前で、お願・・・・・」

「一美刀は駄目だ。表立って、【天の御遣い】を名乗る、つまりは主となるのは一美刀ひとりなわけだ。そこで、同格かどうかはわからないが、お館様という呼び方は、万が一にでも民に不信感を持たせかねないからな」

「そう・・・・ですね。でしたら、「様付けも無しで」・・・・殿とお呼びします」

「それで、お願い」

一美刀は、さびしそうな顔をでを見る。

も自分のことをご主人様と呼ぶんじゃないか?そう思うと一線を引かれた気がして。そう考えると頭にポンと手が置かれる。

「心配するな。俺は、一美刀と呼ぶからさ」

「しかし、殿。それでは下の者達に示しが・・・」

「大丈夫。全員を呼び捨てにすれば、フランクなやつとでも思うさ。それに・・・・」

愛紗には、が言わんとすることに察しがついた。確かに、までがご主人様と呼んでしまうと、自分達にはそのつもりがなくとも、一美刀が精神的に孤立しかねないからだ。
だが、一つの疑問が残る。

殿・・・ふらんく・・とは何ですか?」

「ああ、砕けたとか親しみを込めてとかそんな感じかな?」

「なるほど」

謎は解けた。

「それじゃ、鈴々はお姉ちゃん、お兄ちゃんとよぶのだ!」

よろしくなと、髪がぐしゃぐしゃとなるようになでるが、鈴々はうれしそうにじっとしていた。

「よーし!ワクワクしてきたぞーっ!それじゃ早速、近くの黄巾党を退治しちゃおうよ!」

「そうだな。県境の近くに潜んでいるという話しだし、近くの村で義勇兵を募って一軍を形成しよう」

「サンセーなのだ!じゃあすぐに行こう、早く行こう、走っていこう!」

「分かった。ならば鈴々は先行し、村人達を集めておいてくれ。私は、ご主人様達と共に行く」

「合点だー!じゃあ、お兄ちゃんお姉ちゃんまた後でね」

そう言うや否や、張飛(鈴々?)はもの凄い速さで走り去っていった。

の感想としては、子供は風の子元気な子(古!?)だった。

「さぁ、我らも疾く向かいましょう。そして、黄巾党を追い払いましょう。そしてここにより、われらの戦いが始まるのです!」





「これって・・・・・・どういうことですか?」

一美刀の口からポツリと言葉がこぼれる。

「分かりません。一体何が・・・・・・」

目の前に広がるは、手ひどく荒らされ、あちこちで炎が上がっている街だった。

戦場に慣れてるが、呆然としている二人を現実に戻す。

「とにかく状況把握が第一だ。鈴々を探して事情を――――」

「姉者ーーーーーーー」

「ああ、鈴々。無事だったか」

いくら腕が立つとはいえ、妹分が心配だったのだろう。ほっと胸を撫で下ろす。

「うん♪」

「ところで、これは一体どういうことだ?」

「あのね、鈴々がここに来る少し前に、例の黄巾党達が街を襲ったんだって」

「そうか・・・・・。少し遅かったのだな」

愛紗は、視線を落とす。

「うん。動ける人達は酒家にあつまってるのだ」

「ならばそこに行ってみましょう。・・・・・宜しいでしょうか、ご主人様、殿」

「えっ?あ、愛紗とさんに任せるよ」

「まぁ、情報収集が第一だからな。俺のほうも異論はない」

「では、酒家に向かい、村人達から事の顛末を聞いてみましょう。・・・・・鈴々、案内してくれ」

「うん!こっちなのだ!」

向かった先は、辛うじて襲撃の被害を免れたらしい酒家であり、四人は足を踏み入れた先には、傷を負って包帯らしきものを巻いたり、焼け出されて煤に塗れている村人達が、力なく座り込んでいた。

「これはひどい・・・・・」

愛紗のこぼした声に気が付いたのか、村人達のリーダーらしき男が反問する。

「あんた達は・・・・・?」

「我らはこの戦乱を憂い、黄巾党を殲滅せんと立ち上がったものだ」

「官軍が俺達を助けに来てくれたのかっ!?」

「いや。残念ながら官軍ではない」

希望を見出した村人の言葉に、申し訳なさそうに、言葉を返す愛紗。

その言葉に、村人は失望したように肩を落とす。

一美刀は、今まで過ごしてきた現実と遠く離れた現状に戸惑いと眩暈を覚え、幾多の人生を重ねてきた中で、戦場を回ってきたはまっすぐと捕らえた。

しかし、は口をつむぐ。自分が、この歴史という名の舞台に一番最初に上がるべきではない、相応しい者達を待つ時なのだと。

「でも、皆を助けたいって言うのはホントだよ!」

「子供に何が出来るってんだ。・・・・・大人の俺達でさえ黄巾党の奴等には歯が立たなかったのに」

鈴々の言葉に力なく返し、他の村人が子供に当たってどうすると言葉を続ける。

「言うな。そもそも数か違いすぎるんだから」

「そんなに多かったのか?」

「ああ。四千は下らんだろう。その人数で押し寄せられれば、こんなちっぽけな街、落とされるしかなかったんだ」

「でも皆戦ったんでしょ?」

鈴々が、弱々しく尋ねる。

「そりゃ戦うさ!自分の街が、家が襲われてるってのに、ボケッとしてる訳がな!でもない・・・・・数の暴力には勝てないんだよ・・・・・」

「あいつら、やりたい放題やって、帰るときにまた来るとかぬかしやがった・・・・・」

村人達は、歯を食いしばり、拳を握り締め固める。声には力がなく、絶望の色が混じる。

「そうするんだよっ!?また来たら、次はもっと食料を持って行かれるんだぞ!俺の嫁も、娘も奴等の餌食にされちまうんだぞ」

「分かってるよ、それぐらい!けどな、俺達にどうしろってんだ!あんな獣みたいな盗賊どもと戦って勝てるというのかよっ!」

やり所のない怒りがぶつかり合う。

「くそっ・・・・・官軍は助けに来てくれないのかよっ!?そもそもこの戦乱も役人達が好き勝手やってきた結果だろ!どうして俺達がそれに巻き込まれて、こんな思いをしなくちゃいけないんだ!」

その言葉が、現在(いま)の真実である。すでに役人達は腐りきっており、自分達の保身しか考えていない。そのような者達が、軍を派遣するわけもなく・・・・・。

「今更そんなことを言っても仕方がないだろっ!明日には奴等、また襲ってくるかもしれないんだぞ!」

その言葉に、愛紗が反応する。

「明日もまた戦いになるのか?」

その言葉に、村人が弱々しく返す。

「恐らくな。俺達は奴等に弱い街って目を付けられちまったんだ。この街から奪うものがなくなるまで何度も来るに決まってる」

「ならここ逃げ出そう!街ぐるみで逃げ出すしか助かる方法なんてない!」

「そんな事が出来るかよっ!?この街は俺達のご先祖様が築き上げた街なんだぞ!?俺達が守らなくてどうする」

「俺だって街を守りたいさ!けど・・・けどなぁ!このままじゃどうにもならないだろっ!」

舞台が徐々に絶望で彩られる。しかし、は動かない。

この舞台の第一幕に、一番最初に上がるべき希望と言う役者達は自分ではないのだと。

喧々囂々と言い合いを続ける村人達の中、愛紗は何かを考えるそぶりをしていたが、

「一つ提案がある」

やがて意を決したように口を開いた。

舞台に立つべき者が、まずは一人立ち上がった。

「・・・なんだよ。助かる方法でもあると言うのか?」

「その前に皆の覚悟を聞いておきたい。この街を守りたいか?」

その言葉に、打ったように返す村人。

「当たり前だろ!この街は俺達の爺ちゃんや婆ちゃんが、汗水たらして作った街だ。守りたいに決まってる」

「ならば我らと共に戦おう」

「戦うったって、あんな奴等に勝てるのかよ」

「「勝てる(のだ♪)」」

重なり合う、愛紗と鈴々の声。もう一人の役者が、舞台に上がった。

「・・・・・ちょっと待ってくれ。なんで、そんな簡単に勝てるといえるんだ?」

戸惑う村人に希望はあると言葉を返す愛紗と鈴々。

「我等には、天がついているからだ」

「そうそう♪鈴々達には、天の遣いの偉くてすごく強いお姉ちゃんがいるんだよ♪」

村人達は、話がつかめないようだ。

「この娘の言ったとおり、我等には天の遣いがついているのだ」

愛紗は、いかにも悠然とした表情で言葉を続ける。

「まだこの街には届いてないのか?あの噂が」

聞き返す村人に、愛紗は言葉を続ける。

「天の御遣いの噂だ。洛陽では、既にこの話題で持ちきりだぞ?この戦乱を鎮めるために、天より遣われし英雄の話で」

最後の役者を舞台に上げる口上が紡がれる。

一美刀は、鈴々に真偽を確かめるが、返ってくる返事は偽に決まっている。

その言葉に、一美刀は何とか自分で答えを出そうとする。

その前向きな姿勢がこれから必要なのだと解っているのだろう。

しかし、その間にも舞台は、整えられる。

「この方がそうだ」

愛紗が、一美刀を鈴々と挟む位置に誇らしげに立つ。三人目の役者が舞台に上がる。

は、一美刀の後ろに立っており、3人の家臣が中央の主を守るように見える。

「この戦乱を鎮めるために、天より使わされ仕方。この方が我らについていてくださる限り、黄巾党ごとき匪賊に負けはしない」

さあ、愛紗の誇らしげな口上と共に第一幕の幕が上がる。

のこの幕での仕事は、この3人の美しき役者達を守り通し、愛紗の述べた口上を真実に変えるだけだ。



2009.01.10 UP

実は新年早々に送って頂きました!! 冬眠様いつもありがとうございます!!

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