れんきん†むそう

第肆話



村人は静まり返り、一美刀に視線が集まる。

「よ、よろしくお願いします」

一美刀は、何故かあわてて頭を下げる。そんな、一美刀に、村人の疑問の視線が注がれる。

「ま、まぁ、美人さんではあるが、天の遣いといわれても・・・・なぁ」

女性、おまけに美人さんには、強く出れないようだ。おまけに美少女だし・・・・女性の嫉妬は買いそうだが・・・・。

「何を言うか。この方の姿を見れば一目瞭然ではないか?光を受けて煌く【ぽりえすてる】なるこの装束など、我らの身近にあるものか?」

愛紗の言葉に村人の心が揺れる。

(もう一押しか)

は、皆に見えないように一枚の符を取出し、問う。

(其は何ぞ)

【我ハ、光。闇ヲ照ラシ、導ク者ナリ】

淡い蛍のような光が部屋に満ち溢れ、一美刀の制服がその光の反射光で淡く光っているようで、幻想的に、そして神々しく見える。

その光景に、村人達は目を奪われ、先程の【天の御遣い】との言葉に信憑性を持たせ、表情に力が戻る。

そこに、愛紗が畳み掛ける。

「そうだろう。そして天の御遣いであるこの方は、孫子の兵法書から六韜三略を諳んじるほどの知識を持ち、さらに、更に木の刀で黄巾党を軽く追い払う程の武技の持ち主だ」

そして、仕上げにかかる。

「そして私は見たのだ。この方が天より降り立ったその瞬間を」

愛紗のその情景を思い出すようなうっとりとした表情が止めをさす。

「おお・・・・すげぇ・・・・」

「俺達・・・・・・俺達は助かるかもしれないっ!」

「助かる!助かるぞ、絶対!」

「そうだ!だから皆、今こそ立ち上がろう!自分達の街は自分で守るんだ!」

愛紗の最後の言葉か添加剤となり、村人に希望の炎が燃広がる。声に、顔に力が戻る。

「「「「「「「応っ!!」」」」」」」

「俺、街に出て男達を集めてくるわ!」

「俺は武器になりそうなものを集めてくらぁ!」

「頼んだぞ!俺は食料をかき集めてくるぜ!」

男達は、自分のやるべきことを各々で見つけ、酒家の中から飛び出して言った。

「さすが、姉者なのだ!」

鈴々が、裏もなく褒める。

「確かに、たいしたものだった。見事の一言に尽きる」

が、続けて褒める。

「・・・・・・よしてください。私は今、猛烈に自己嫌悪に陥っています。はぁ・・・・・」

結果的に村人を騙してしまったことに、愛紗は溜息を吐きながらがっくりと肩を落とす。

「落ち込まないでください。この街の人達を黄巾党から守るためなんですから。落ち込んだり後悔したりするのは早いです。今は、村の人達の力を借りて、この街を守る方法を考えないと」

一美刀が、愛紗を力づけようと励ます。

「そうなのだ!愛紗がそんな風だと村の人達が頑張れないのだ」

「ふっ・・・・・そうだな」

気を取り直したのか、愛紗がに尋ねる。

「しかし、殿。先程の一体なんなのですか?」

彼女には、見えていたようで、その言葉に、一美刀と鈴々が首をかしげると愛紗は言葉を続ける。

「先程の光の事です。あなたが、何かを取り出したとあのような現象が起こりました。そのおかげで、村人達の説得も随分と順当に進みました。あれは、一体・・・」

「ん〜〜〜〜、符術・・・・仙術の一つとでも思ってもらえればいいかな?」

困ったように答えるのはに、愛紗と鈴々は瞳を輝かせ「やはり【天の御遣い】ですね」と喜びを表し、それに対して驚くは一美刀だった。

「え、ちょっと待ってください。さんは、私と【同じ世界】の人ですよね」

戸惑いながらも言葉を続ける。

「私、そんな術があるなんて・・・・・」

一美刀の唇に人差し指をそっとあてて、言葉を止め小さく囁く。

「一美刀。世の中には、知らないままでいた方がいいこともある」

の眼の力は強く、次の言葉を出させない。

「まぁ、後でちゃんと教えてやるささっきのも含めて・・・・・・・覚えてたら」

そういって、軽く頭をなでる。

の一つの秘術に、心が躍るのか、愛紗は行動に移した。

「私達も村の人々に協力を要請しよう。・・・・・鈴々は身軽そうな人たちを何人か指揮し、黄巾党共の居場所を探ってくれ」

「りょーかいなのだ」

「私はどうしたらいいでしょう?」

「ご主人様は私の傍に居てくださると助かります」

「俺は街の方を回ってくるわ。進行状況なんかを確認したいしな」

「そうですね。殿、お願いできますか」

4人は、酒家をそれぞれの方向に出ていった。




大通りを歩くと二人は注目の的だった。

それもそうだろう。自分達の命運をかけた中心人物となる者なのだから。

「あの方が天の遣い・・・・?」

「そうじゃろう。神々しい服を着ておられるのぉ・・・・なんでも【ぽりえすてる】という服らしい」

「【ぽりえすてる】・・・・なんかすげーな・・・」

「(ひぇぇぇ〜、顔があついよぉ)」

「ご主人様。もっと背筋を伸ばして。威厳を持って村人達に笑顔を」

「で、できませんよぉ」

弱々しく答える一美刀に、愛紗は言葉を続ける。

「大丈夫です。ご主人様なら出来ます」

愛紗の後押しで、自分に出来る精一杯の表情を村人達に送ると、村人達からどよめきにも似た声が上がる。

「う、美しい」

「おい、お前はどっちのほうが好みだ?」

「どちらも捨てがたいなぁ」

なんか、男のサガを捨てきれない不謹慎な輩もいるようだが、二人には聞こえてないようで・・・・。

「ホントにこれで良いんですか?」

「何を仰います。良いのですよ。今はこの村人達を守ることだけを考えないと」

「それ、私がさっき言った言葉ですよ」

「ふふっ、そうです。ですからご主人様も」

「そうですね。頑張ります」

二人の華が咲いたような笑顔に、場の空気は和み、鼻の下を伸ばす男達が更に増えた。いいんだろうか?これで。

しばらく歩いて中央の広場に出ると、テーブルを挟んでと鈴々が何かを話していた。

「何をしてるんですか?」

一美刀達は、テーブルを覗き込む。

テーブルに広げられているのは、この付近一帯の地図。そこに書き込まれているのは、敵の現在位置と状況、及び、進行予想図。

「ん?鈴々達に敵の現在位置を聞いてた」

「ならば、今すぐにでも」

勢いづく愛紗なだめる。

「落ち着け。今回の戦は確かに短期決戦。しかしだ、こちらの準備はそろうまで、もう少しかかる」

確かに、周りでは女子供がせわしなく動いて回っている。

「これはいったい」

愛紗が尋ねる。

「出陣前の腹ごなしと、携帯食といっても御握りだが、それと治療用具。景気付けの酒だ」

周りを見渡すと御握りが、2、3個ほど包まれている包みと竹筒の水筒、小さな杯に注がれた酒。

「鈴々達の話によると此処より西に一里ほどの荒野に陣を張り、数はおおよそ四千。携帯する武器は、貧相なものだったらしい。おまけに浮かれて宴会の真っ只中」

「でしたら、早速」

「だから、落ち着け」

愛紗にでこピンをお見舞いする。

「こっちにはそれだけの余裕がある。相手は時間が経つにつれ酔いが回るしな。だから、軽く食事を済ませ、これからの行動を皆に把握させ、一気に叩き潰す」

後ろでは、準備されていた食事等が配られていた。

軽く食事を済ませ、作戦を説明し、仕上げにかかる。

「聞けぃ、皆の者」

の覇のこもった声が響き渡りる。

「黄巾党も元々は悪政に苦しむ民であった。彼らも最初は、正そうと、救おうと動いていたのであろう」

愛紗が続く。

「けど、今はその初志を忘れているのか、匪賊と成り下がっているのだ。そして、いまや民達の脅威に成っているのだ」

鈴々が続く。

「このまま、喰われるだけで良いのか。否、我等は守らなければならぬ。我らの背には、守るものがある。我等は、これより【盾となり、剣となる】

が最後に繋ぐ。

「これから戦が始まります。すごく、すごく怖いと思います。けど、私達の家族とか友達、恋人・・・・そういう自分の大切な人たちの為に戦えば怖くなくなると思います。だから、頑張りましょう。此処で、この街で、私達が生きて帰ってくることを信じて待ってくれる人たちの為にも。そして、皆の笑顔を守って、また見るために」

一美刀が最後の言葉をつむぎ終わる。

次の瞬間、村人達から咆哮が上がる。

その中で、杯を高く掲げたの声が通る。

「勝利を」

杯の中の酒を口に傾け飲み干す。


「「「「「「「「「勝利を」」」」」」」」」」

村人達がに続く。

愛紗と鈴々が、宣言を挙げる。

「「いざ出陣(なのだ)」」

戦いの幕が上がる。


2009.01.20 UP

冬眠様、いつもありがとうございます。あと、作中出てきた呪符魔術の言葉は冬眠様オリジナルです。
ご了承くださいませー。

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