「いいか、寄生虫。仮にもこの俺様の魂と同化して、俺のとっときの秘術もくれてやったんだ。この俺様のようにとは流石に無理だろうが、それを目指して生き抜け」
そのココロは?
「どこぞの蛆虫に負けたりなんかしたら承知しねぇ、常にパーフェクトを目指せ。万が一にも、いや億の一にも貴様が無様に敗者となったその暁には!!」
白金の長い髪をなびかせて、彼はこう言いきる。
「別次元だろうが、俺の魂の欠片の持ち主だろうが、400年以上の腐れ縁だろうが関係ねぇ!!!」
目がくわっと見開く。
「お前の心臓引き抜いて秘術取り戻して、懇切丁寧に切り刻んでドラゴンの餌にしてやる!!」
あぁ、その時、君と再会できるのも、悪くないなぁ。
そう思ったそのとき、彼は…爆炎の魔導師、最強のハンサム様(こう言わないと彼は怒った)ダークシュナイダーは、一瞬だけ目を見開いて、それから笑った。
「このバーカ」
あぁ、そんな馬鹿でも、君とヨーコさんの未来を願ってるよ。いいよね? それぐらい。
そこで私は目を覚ました。
瞬きを繰り返して、夢の残滓を振り払う。
今の私は彼の精神に憑依…彼曰く寄生虫のように寄生していた存在ではなくて、きちんと血肉を持った一人の人間なのだ。
ベットから起き上がると部屋の中にある鏡台の前に座る。
彼のそれに良く似た白金色の髪に深い青色の瞳。
容姿はこれから発展途上、というところとしておく。
これが今の私だ。
かつての宿主と違うのはこの髪は少し癖が入っていて、それを緩やかなカーブで落としながら整える。
この色彩はこの世界での実の親達に嫌われたが、私はこの色を愛している。
…そう、愛している。
あの凶悪で凶暴で絶大で、理不尽な宿主で今の私の源であった…爆炎の魔導師、ダークシュナイダーを。
強いていうなれば女が男を愛するようなではなく家族愛的なものでだが。
寝癖を整え、パジャマを脱ぐとお気に入りの服を着る。
かつての彼のような露出は流石にできないけれど、似たような色彩の服を選ぶ。
それが派手だと思うときもあったけれど、この里の忍者達に比べてみたらおとなしいほうだ。
「おーい、飯できたぜー」
同居人の声にもう、そんな時間かと時計を見る。
さて、食事にしよう。
顔を洗いに行くついでに汚れ物を洗濯機に入れ込む。
いまいち、この世界の科学がどこまで進んでいるのか理解できないが、まぁ便利は便利だ。
「おはよう」
「あぁ、おはよう。」
私の名を呼んだのは精悍な顔つきの男。
名を猿飛という彼は今の私の保護者となっている。
濃い青の髪に紅い瞳。
…その存在はその二次元の作品の名前では「ランサー」と呼ばれ、正体はケルト神話の英雄・クーフーリンその人に限りなく近い、と言ってもきっとこの世界の住人たちは首を傾げるだろう。
クーフーリン自体が、存在しているかどうかも怪しいから。
「あんぎゃぁ(おはよう、)」
もう一人、いや…もう一体というべきか。
むくむくとした手足の本当に小さなドラゴンが足元に擦り寄ってくる。
最初に出会った頃よりも大きくなってるな。
「あぁ、おはよう。」
東洋風ではなく、西洋風のミニドラゴンの思考があたしに飛んでくるのをうけとめて、言葉で返すと彼は嬉しそうに笑う。
この人ではない存在も、かつては人間の少年だったが…まぁ彼らのことはおいおいと語るとして、私と今私たちが生きている世界について語ろう。
一番は、やはり私のこと。
見た目は10歳程度の子供だけれど、私の心、というか精神はすでに400歳を超えている。
あの頃の私…『あたし』は普通の一般人の女子高生だった。
クラスメートの誰かと、誰か。
今は顔を覚えていない彼らの口論の現場に『あたし』は居合わせてしまい…結果的には、それに巻き込まれ、気がついたら…は二次元の存在であった漫画・バスタード! の主人公、ダークシュナイダーの精神に憑依していた。
ただ憑依していたのではなくて、なんというか…彼の精神が主人格で、『あたし』がサブのような形の奇妙な精神だけの共同生活を強いられることになったのだ。
…いや、もう、なんていうか…その…いろいろあった、としか言いようがない。
精神体だからなんにもできないだろうとか思ったけれど、そうじゃなかった。
寄生虫とののしられ…もう年頃の女性だと知ると侵食という名の精神的強姦を、彼は面白半分でしてきた。
泣き叫んでも押さえつけられて、がつがつと知識と魔力と、得体の知れない何かを注ぎこめられた。
そして、彼ら人を殺す様も犯す様も見て、何もできない自分に気が狂いそうになったけれど、まぁ、それももういい。
そんなこんなの400年以上経ったその後、彼は4人の勇者と戦って、そして封印された。
その後は、概ね漫画の筋書き通りになって…少し違うのは『あたし』が自主的に自分の中に蓄積されたダークシュナイダーの魔力と完全に同化して二人だけを守ろうとしたことか。
まあ、なんというか…封印されていた間も『あたし』は『あたし』として自我を保ち続けていられたのは、ダークシュナイダーのおかげだったし…。
「…はじめまして、ティア・ノート・ヨーコ。そしてさようなら、ダークシュナイダー。君達は嫌かもしれないけれど…あたしは貴方達とルーシェ・レンレンを愛してたよ」
それから意識を飛ばし、その魂を魔力と共に弾き飛ばしたはずの『あたし』は…彼の魂の欠片と同化して、そして違う世界へと飛ばされてしまった。
…全てはダークシュナイダー…彼の都合と、そしてほんの少しは『あたし』という存在を救おうとした彼の優しさだと思う。
別世界に強制的に移動するという爆発的な魔力はメタ=リカーナを巻き込んだアビゲイルに取り付いた破壊神のものを使ったようだ。
そして飛ばされた世界は、また『あたし』が漫画で知っていた世界…のはずだった。
あの世界観に、微妙に、というかかなりバスタードの世界がほどよくブレンドされた世界なのだ。
今私が住むこの里は忍者の隠れ里(と、言う割にはオープンだが)。
忍者は各国に隠れ里を形成して存在していて、原作と違うのは…彼らには絶対の敵対者が居るおかげでどんな小さな里も運用できるだけの収入は得ていることだ。
バスタード世界で言うところのクリーチャーたち…モンスターが生息しているから、彼らに対抗する為の一般的な存在が「忍者」なのだ。
まぁなんていうか…人里を襲う、ということは今は滅多にはないだろうが危険な生き物として世界に存在していて、精霊や魔獣もちゃんと存在していたときに天を仰いだ。
妖精族、亜人族、人間、精霊、幻獣、魔獣、魔族。
そして尾獣。
バスタード世界ではおなじみの連中がこの世界でおなじみの連中と一緒に当たり前に生きているのだ。
私はそんな世界の、忍者の里にある一般家庭に生まれた。
この世界の両親は私の誕生を喜んだつかの間、その色彩と様子に驚いて1.2歳で私の育児を放棄した。
これは彼らに責めはない、と思うのだ。
私は無意識にチャクラではなく、魔力を使ってこの世界の精霊達と再契約を交わしていたからだ。
その様子を母親は見て、ただならぬものを感じたのだろう。
私はすぐ様、孤児院に入れられた。
九尾の事件で親を失った子供達と共に私は成長していき、そしてまた木の葉の里が襲撃されかかったその日に、彼らと出会ったのだ。
木の葉の里は弱体化した木の葉をさらにつぶすべく、大蛇丸に手引きされた闇側の亜人たち…オークやゴブリンの集団に襲撃されかかったのだ。
…未然に防いだのは、私の隣で味噌汁をすする私の保護者と数人の上忍…そして不本意ながら私だ。
そのときのことが縁で、彼は私を引き取ってくれた上に、自らの正体をあかしてくれた。
彼らの正体に関しては、また後で語るとして。
…今は『あたし』だったときの苗字を名乗って、彼らと一緒に生活している。
「ごちそう様でした」
「はい、おそまつさん」
「ぎゃううう!」
食事を済ませると、忍者アカデミーに行く準備をする。
本当は忍者になるつもりはないが、一般的にこの里の子供は自動的にアカデミーに行くようなので、自然に私もそこに通わされていた。
卒業する頃には、身の振り方を考えなくてはならないけれどそれまえはじっくりと身体を鍛えればいい。
魔法使いも存外体力が必要なのだ。
作ってもらった大き目のお弁当をバックに入れると、がぎゃうぎゃうと鳴いた。
「あぎゃう!(俺も行く!)」
「ほら、早く」
手提げ鞄を持ってしゃがむと、背中にが乗る。
「日に日に重くなってる。」
「ぎゃうあ!(太ったんじゃないぞ! 成長してるんだ!!)」
「そういうことにしとこう」
そう言い合って外に出る。
アカデミーまでの道のりが少しあるが、散策しながらつける時間だ。
「あ! ちゃん!!」
鞄を背負い、ゴーグルをつけた金髪の少年が私を見つけてにっと笑う。
「おはよう、うずまきくん」
「おはようだってばよ! ちゃん」
私が知っていた世界の主人公、うずまきナルトがいつものようにそこに居た。
「一緒にアカデミー行くってばよ!」
「あぁ」
断る理由もないので頷いて歩き出した。
私は。
。
平行世界…あの世界での最強(最凶)の魔導師の欠片を持つ、唯一の人間だ。
平行世界とキスをして
そして私はここで生きている。
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