保護者たち以外で朝一番に会う人物と言うと、私にとっては隣で昨日した悪戯を嬉々として教えてくれる、このうずまきナルトに他ならない。
正直、原作…少なくとも基盤になっている世界の話…の主人公と関わりあうのはどうかと思ったのは後で保護者の猿飛に指摘されてからだ。
彼もまた、元々の魂は『あたし』の世界を同じくする者であり、また近しい友人だったらしい。
…まぁ400年も前のことは大半忘れてしまっているので、もう仕方がないのだが。
「…で、でさぁ、でさぁ!ちゃん、話し変わるけど…宿題やってあるってば?」
ナルトの言葉に思考を彼に合わせた。
「あぁ、やってあるが」
「御願い!」
ぱん! と手を合わせる姿は何度目だろう。
「わからない場所を教えるだけだ。それでいいか」
「うんうんうんうん! それで全然OKだってばよ!!」
「なら走ろうか」
これも何度目のやり取りだろうか。
「ぎゃうあ、ぎゃぎゃ!(甘やかしてんじゃねーよ、)」
が私の背中で文句を言っているようだが無視した。
ナルトの「判らない」箇所はたいてい『全部』だ。
それを説明している時間を多く作らなくてはいけない。
「ちゃん、手ぇ」
ごしごしとナルトは自分の着ていた服で手を拭くと、そのままそれを差し出した。
その手を掴むと、にっこりと笑い…本当に嬉しいのだという私にはない天真爛漫な笑顔で笑ってから走り出した。
私はもう判っていたことなので、習ったばかりのチャクラの練り方を脚に集中して彼に引きずられるように一緒に走り出した。
下忍にもなっていないアカデミー生の脚なので、忍者からしてみれば早くもないのだろうが。
たん!
軽く飛んで屋根の上にあがった。
私とナルトはただ一直線に走り出す。
手に触れる体温に、そっと彼とであった頃を思い出した。
私は猿飛に引き取られたばかりで身の回りのものを自分で買いに出ていた。
煩く付きまとおうとする保護者を黙らせ、と一緒に町の中心部まで出たときだった。
「ぎゃうあう(うずまきナルトだ)!」
そう声を上げたのは今よりももっと小さなだった。
「うずまきナルト?」
私はそう名前を呼ぶと聞こえたのだろう。
暗い顔をしたその子供が顔を上げた。
「だ、誰だってばよ、お前」
「」
それが初めての出会い。
それから買い物をするから店を案内してもらい、礼に飲み物を買った。
ナルトに対する里の大人たちの大半は冷たい。
私とはそれを鼻で笑い飛ばしながら、遠慮するナルトの手を取った。
そして彼にも付き合ってもらってあらかたの買い物を済ませたのだ。
と話せることを言ったら羨ましがられたな。
紙袋を背負い、公園に行き、二人と一匹でジュースを飲んだあの風景は美しかった。
彼との付き合いはそれ以来だ。
今では時折うちに泊まりにきてに忍術と体術の稽古を一緒にしている間からだ。
泊まりに来るのは、彼だけではないけれど。
あの頃から、彼は愛情に飢えていた。
親愛に、家族愛に、友愛に。
それはきっと今も変わらないだろうと思う。
だからこそ、私に話しかけ、私に触れ、私に関わるのだろう。
私も彼を嫌いではない。
彼は素直でとても優しい心の持ち主だ。
前向きで好感がもてる。
だから、時折私は素直に心のままに彼に接してしまい、そして里の大人も数人しか知らない秘密を彼に教えてしまっている。
芋づる式に…他の子供達にもばれてしまって、内心うろたえたのが記憶に新しい。
まぁ、その後すぐに開き直ったのだが。
「よぉ!」
「犬塚くん」
少し切れそうになる息の中で、声をかけてきた彼に対して私は「おはよう」と朝の挨拶をすると、向こうも笑いながら返してくれた。
女子と男子の差なのだろうか、かなり向こうにも私の手を引っ張るナルトにも余裕が有るのが少しいらつく。
「おはようってばよ、キバ!」
「おう! ナルト! ってか今はお前に用はねぇ! …っ宿題やって来たか?!」
ブルータス
犬塚キバよ、お前もか。
「あ、ばっか、おめえちゃんに宿題教わるのは俺が先だってばよ!!」
「なにおおおお!!」
私たちの目の前にはすでにアカデミーが見えてきていた。
おそらくは、きっと。
彼、うずまきナルトと私は『親友』と呼べる存在なのだろう、と思う。
まぁ、一方的に私が思っているだけなのだが。
繋がり、連なり、そして輪になる
この世界の主人公・うずまきナルトとの関係性
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