アカデミーの授業を舐めてはいけない。
一般教育から始まり、忍術から体術の基礎学習に加えて魔物や亜人達に対する勉強もまた詰め込まれている。
それだけ彼らと接し、戦ったことがあるという歴戦の記録なのだろう。
そう思うと授業にありがたみが沸くだろうに私の周囲の子供達はサボりの常習犯でもある。
最近はそうでもないが、ひどかったのが私となぜかよく昼食をとる、うずまきナルトだ。
今日も私は中庭の奥にある大木を背中にしてお弁当を開く。
少し大きめのそれは、彩りも鮮やかで食欲をそそってくれていた。
「ほら、」
「ぎゅあわうわ(いただきます)」
の分を差し出すと、器用に手を合わせて食事の挨拶をして口に入れる。
それを見ながら私はお箸に手を伸ばした。
「あ、いたーー!!」
「うずまきくん」
ナルトはすぐに私を見つけ出す天才かもしれない。
そう、別に約束したわけでも居場所を教えているわけでもないが私とが昼食をとる場所をあらかじめ知っていたかのようにすぐに走ってくるのだ。
聞けば「なんとなく判るってばよ」と笑われた。
きっとそういうものなのだろう。
あまり深くは考えない。
「一緒に食べてもいい?」
こくりと頷くと売店で買ってきただろうパンと牛乳を取り出した。
「いただきます」と彼が言い、なんとなく「はい」と私が言う。
私も「いただきます」ともう一度言えば、ナルトが「おう」と軽く言った。
お互いの視線が絡むと、照れたのかナルトが笑った。
これがいつもの私達の昼の光景で、最近はこれに。
「よーう」
「今日はここなんだ」
奈良シカマルと秋道チョウジ。
「みーっけ」
「あんあん!」
犬塚キバと赤丸。
「…いいか?」
油女シノが加わる。
「なんだってばよ、お前ら!」
「別にいいだろ、だれがどこで昼食べようが。なぁ、」
シカマルの言葉に私が頷くとナルトはぷくりと頬を膨らませた。
「その通りだ」
「うぉっサスケ、なんでお前まで!」
うちはサスケが弁当箱をぶらさげて私の隣に座る。
うきーっと煩いナルトをよそに、集まってきた子供達が「いただきます」と唱和した。
この男子達が加わるのだ、最近は。
最初はナルトだけだったが、じょじょに子供達が集まってきた。
理由は…判っている。
私がうかつにもナルトに見せていたものを、彼らの誰かに見られてしまったからだ。
なにかって、それは…。
「ちゃん、今日はしないの?」
チョウジの期待にこもった言葉に、私はその言語を口にする。
食事中、というかそういう概念を彼らがもたないのが嬉しい。
人には聞こえない精霊語で呪文を唱えると、木や草から人型の生物に見える小さなそれらが顔を出した。
精霊。
中庭は大地に関わる精霊達が集まりやすい。
わぁと言ったのは誰だろうか判らない。
淡い光を放つその生き物達はくすくす笑いながらみんなの弁当の中を覗き込んだり、顔を見て笑ったり遊びだした。
子供達の顔が笑顔になる。
あのシカマルとサスケでさえも、淡い笑みを浮かべている。
ゆったりと食事を済ませて弁当をしまうとお茶を飲む。
私のその様子に精霊のどれかが笑い、私の腕にしがみついたり喉に触れたりしはじめる。
精霊魔法をこの世界で行使する為には彼らとの契約が必然だった。
ダークシュナイダーが完璧を目指せ、と私に言ったのであるからせめて完璧にその技術を使いこなせるようになろうと思う。
あたしの中に400年以上蓄積された彼の魔法の技術だ。
精霊魔術・暗黒魔術(古代語魔術)・召還魔術・ルーン魔術・自然魔術・大儀式魔術などなどのその知識は私の魂に刻まれていて、その大半が実行可能なのだが精霊魔術だけはこの世界のものと契約を交わさないとそれができないので、こうして呼びかけて集めて契約しているのだ。
精霊達は私の持つ魔力に反応してこうして姿を現して契約してくれている。
ナルトには風の精霊を見られたことがあり、次の日ねだられて黙っていることを約束に見せたのがきっかけなので…まぁこうなってしまったのは私の自業自得なのだろう。
ちなみに魔法で現在行使できるのはダークシュナイダーにとって小技程度のもので、大技はできない。
…あのとき、魔法の練習をするために深夜孤児院から出て闇の亜人たちに向けて魔法を試しに放ったその後は大変だった。
肉体が魔法においつけず、高熱を出したのだ。
魔法と言うのはダークシュナイダーも以前言ったが体力の使う行為だ。
なので今は下地を鍛えることを中心にしている。
気配に気がついて私はその言葉を口にする。
ぱちんとはじけるように彼らは姿を消した。
「あーーー」と残念そうな声を出したのはキバと赤丸だった。
「サッスケく〜〜ん」
山中いのの声にサスケが顔をしかめた。
「内緒で頼む」
私が人差し指で「しー」という仕草をすると「判ってるってばよ」とナルトがいい、シノたちが頷いてくれた。
「あーー、またさんと一緒にご飯食べてる〜〜〜!」
「お前らの目には俺達が見えてねーのかっ」
シカマルの言葉に私はまたお茶を飲みながら「まったくだ」と思わず呟いた。
繋がり、連なり、そして輪になる
男の子達と私の秘密。けれど、彼らは私が何をしているのかわかっているのかどうか(すくなくとも私は教えてない)。
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