「今日、なんか変わったことでもあったか?」

そう聞くのは私の保護者である猿飛だ。

その年齢は老年に差し掛かっているはずだというのに、どう転んでも20代の若者にしか見えない天然の年齢詐称男。

素顔は私達と三代目しか知らないよう、常に変化をかけていた。
                         イリュージョン
今はルーン魔術が使えるようになったので、魔術の幻術に似たもので代用して周囲をごまかしている。

こちらの方が自分のチャクラを使い続けるのとはまた負担が違うそうだ。

爺は爺なのにな。

「なんか今、微妙に俺のこと悪く思わなかったか?」

「いや、別に。今日も変わりなく過ごした。それだけだ」

「ぎゃうあ!(ちっげーだろ! クラスメートに水ひっかけられたろ!なんでそれ言わねーの?!)」

「水? 大丈夫だったか? 

途端にはその端正な表情をしかめさせた。

「おい、。お前その「、済んだ事だ。がたがたと煩いことを言うな」…ってなぁ、

呼びかけるの声を無視して私は鞄を自分の机の上におくと、明日の準備をすませ、宿題に出されたプリントを引っ張り出す。

が一緒に入ってこなかった、ということは今頃にあることないことを密告しているのだろう。

止めておかないと。

猿飛という人物は、この里の中忍・上忍クラスの人間で知らない者はいない。

現在木の葉の里を治める三代目の実弟。

忍術もさることながら、チャクラで作り上げるその赤い槍で屠れない者はない、と豪語された男。

九尾襲来の折に他国の戦に呼ばれて出ていたのをいまだに悔やまれている節もある。

加えていうなれば、今現在は私がヤツの体内に眠る魔術の起源を叩き起こしたのを切欠にルーン魔術にも目覚めたかなりオールマイティな男だ。

槍術のおかげで忍術や魔術を使う間もなく相手を殺してしまっているそうだが。

プリントと筆記用具を取り出して、の居る部屋まで来るとなにやらごそごそ一人と一匹で話し合っていた。

情操面でどうの、と言っているドラゴンの頭を小突く。

「…お前、もし私に何か黙ってしでかすことがあったら、判ってるな?」

ここまで念を押さないと、この男は何をしでかすかわからない。

「………オーライ、判ってる。なんもしねーよ」

歳相応の口調だと見かけとちぐはぐになるからという理由で若者のような言葉を使ってるは、一瞬だけ唇を尖らせたがすぐにその表情を消した。

、夕飯は何が食いたい?」

ふわり、と微笑まれる。

周囲の女はこの笑みで何人か落ちるだろうが、私には効かない。

「軽めのもので頼む」

私がそう言ったときに、小さな鳥の鳴き声が聞こえて瞬間的にはその表情の印象を一変した。

周囲が一瞬ぼやけたので魔術を使って姿を変えたように見せたのだろう。

「仕事だな」

伝言に使われる鳥はせわしなく動いている。

「今日は入れるなっつって言っといたんだがなぁ」

笑顔で鳥の首を掴もうとするを視線で私は制した。

「その仕事のおかげで飯が食える」

「……へーい。とっとと行って、買い物して帰ってくっから。は宿題終わったら風呂の用意だけ、たのまぁ」

「あぁ、判った」

瞬身の術で部屋に帰り、一瞬にしてまた戻ってくるとそこには黒装束に身を包んだがいた。

髪も耳も全て隠すその装束を着たまま、彼は私の額に唇を寄せてから翁の面をかぶる。

途端にが煩く鳴きだした。

…おそらくは今の仕草も全て鳥を介するか、それとも何かしらの忍術で覗き見ている三代目か誰かに見せ付けているんだろうと思う。

「じゃ、に何かあったら殺すからな? しっかり守ってろ」

「ぎゃうがぁうが!(うるせぇ、さっさといけ!)」

私を壁にしてがびびりながらそう言うと軽く笑いながらは姿を消した。

「まったく…」

何を考えているのか、あいつは。

私が自分の今の肉体よりも年上の猿飛をこう邪険に扱えるのには理由がある。

それを言ったら、私の腕から手を離し、用意されたお茶を持ってこようとしているこのドラゴンもそうなのだが。

ちらりと以前に語ったことがあるのだが、彼らの魂の存在は元々私が『あたし』で会った頃、バスタードのダークシュナイダーに憑依する以前にいた世界のクラスメートだった。

もう私は気にしていないのだが、『あたし』を異世界に飛ばしてしまった切欠はなのだという。

元々彼は週末になると異世界に行ってしまうという、どこかのライトノベルの主人公のようなことができていたようでその作用が不幸にも週末ではなく平日に降りかかったようだ。

彼と、彼と喧嘩をしていたと、そしてそれをとめようとしたらしい『あたし』に。

そこで彼は違う平行世界の『英霊』に精神だけ憑依、という形になり何度か同じ年月を繰りかしたらしい。

『Fate』とかいうゲームのキャラ、だというがその英霊の正体がケルトの英雄・クーフーリン。

その存在はランサーとして世界に召喚され、戦い続けていたが何度目かの時に彼からはじき出されたらしい。

「そろそろ会いに行け」という念をこめられて飛ばされたのがこの世界。
                         
ランサー
赤ん坊から産み直されて肉体を得た彼は、英 霊 が与えてくれた能力を損なうのを嫌がって、体術として槍を使うようになり、そうして自分が飛ばしてしまった女の子…つまりは『あたし』を探し続けていたそうだ。

会いに行け、と彼が言ったのだから必ずこの世界に『あたし』はいると確信して。

何十年も探し続け、つい数年前に『あたし』は私、として彼に発見された。
                           ゲッシュ
あの満月の夜、紅い槍を携えた彼が私に跪いて誓いを立てたことにはひどく狼狽してしまったが。




二度と傍から離れぬ。この槍はの敵を全て屠り、この身は全ての為に





立てられた誓いを聞いていたのは、魔法を放った私の身を確保しに来た上忍、数人。

それから猿飛は使える権力全てを使って私の保護者の座を獲得した。

今では過保護極まりない男と化している。

知らない人間からは、年甲斐も無く幼女に心を奪われた、などといわれているようだが本人は気にしないようだ。

そう、彼にとって、私の傍に居ることが全て。

私と生きることが、全て。

奴はそう断言する。






『法』『道徳』『世間体』 何の壁にもなりゃしない
それで迷惑するのは今のところ奴だ。私ではない。


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