細心の注意を払って発言しな、愚か者
(細心の注意を払って発言なさい愚か者)


「…『赤槍』…っ」

俺の称号というかなんというか…世間につけられた通り名を呟きながらターゲットの護衛が倒れていく。

たとえ木の葉の暗部の面をつけていても、その特徴のある武器ですぐに特定されるというのも困ったもんだ。

それを言ったらカカシも似たようなもんなんだが。

まぁ「じゃあ忍術を使えよ」と言われるかもしれないが、忍術は俺の知っている「銃」と同じだ。

殺した感触が少なすぎるんだよ。

ずさっ。

そんな音を立てながら、そいつが倒れるのを確認。

「ターゲットは、どんな按配か」

そう呟くと俺はすぐさまその気配をたどる。

俺のことを少しばかり語ろうか。

ターゲットをやる合間がある。

俺はどこにでもいる普通の高校生だった。

まぁ、高校に入学してからは、土日に異世界にいっちまうどこぞのライトノベルの主人公かっていう人間になっちまったが。

ハガレン世界にも行った、ハンターの世界にも行った、漫画の世界は大半行ったよ。

向こうで何ヶ月に過ぎても、こっちじゃ土日だけ、とかいう実に都合のいいトリップだった。

まぁそんなこんなで俺はその世界では超能力者みたいになっちまったが、能力を隠して高校生してた。

それでもそこまでは平和だったんだがなぁ。

ある日、むかつくことがあってよ。

ダチだと思ってたクラスメートと殴り合いの喧嘩になって、そこに同じクラスメートの女の子…まぁ、喧嘩の原因、みたいかな…を巻き込んでトリップしちまったんだ。

焦ったぜ、あの時は。

何せ人前でそんなことになったのは初めてだし、巻き込んだのも初めてで…。

しかもだ。

俺はとある相手の精神に憑依していた。

聖杯戦争の聖杯に登録された英霊…ランサーの適性を持った、といえばわかっだろ?

え? わかんない?

『Fate』っていうゲームの中の世界。あるいはそれに酷似した世界の英霊の、『ランサー』ことクー・フーリン。

その座にいる奴の精神にいて、それから何度も聖杯戦争に参加した。

ゲームそのままの流れだったこともあるし、そうとは違う結果も出した。

最後の最後でその英霊が「もうそろそろ、違う世界に探しに行けよ。餞別はくれてやるから」なんて言ったと思うと、違う世界…つまりはこの世界で生まれなおされてた。

もうこうなると、元の世界には戻れない。

あの英霊が違う世界に探しに行け、といったのは間違いなく俺がずっと探してるクラスメートの女の子。

その子がいる可能性が、この世界にはあるのかもしれない。

そう思っているうちに成長し、俺は大人になっていた。

諦めかけた、そのときに。

であったのは爆炎のようなその、魂と魔力と存在感。

俺は、気がつけばその子供に…。

「いた」

暗部の面の奥でそう呟いて、ざっと姿を現してやるととたんに怯えたようにターゲットは後ずさりする。

「か、金ならいくらで払うから、だから助けてくれ」

俺は無言で、自分の能力を具現化する。

念とか錬金術とかそういう、俺の中の超常現象を引き起こせる能力が、全てあの英霊のものを作り出す為に昇華された。

「頼む!」

俺はその赤い槍を一閃してそいつの首を叩き落した。

血の匂いにもなれた。

人を殺す感触もなれた。

なれないのは、今、あの子が、俺の側にいないということだけ。

そしてむかつくことに、あの野郎がべたべたとくっついていることだ。

あの爬虫類っ。

俺は殺した証拠品を風呂敷に包み込むと、その足で木の葉に舞い戻る。

暗部…テンゾウの前に「ほらよ」とそれを投げつけた。

「手早いな」

「何を考えているのかは知らんが、俺とを引き離してどうこうというのであれば、もう止めるんだな」

そうだ、この男は俺と、そしてを切り離してみようと、こんな下らん真似をした。

もしかしたら親父殿もそれに一枚かんでいるかもしれない。

この世界の俺の実の両親は亡くなっていたが、幼い頃に俺を養うといってくれた人間がいた。

両親のどちらかの兄、今、俺が猿飛姓を名乗っているから誰かは見当はつくだろう。

「…お前が、春野に忠誠を誓っている、というのは本当らしいな」

「あぁ」と俺は肯定する。

「別に少女趣味は持ち合わせていない。あの子に対する同情だとか劣情だとかというものの類は一切ない」

ロリコンじゃねーんだ、俺は。

「だが、俺の槍はに捧げた。それだけだ」

「お前の強さはあのイタチすら超える。そのお前が、年端も行かない女の子に忠誠を誓うなど…」

「おい」

殺気を強める。

周囲に隠れている暗部連中にも勿論、同じプレッシャーを放つ。

「細心の注意を払って発言しな、愚か者」

上司だろうがなんだろうが構わない。

ただ俺達のことをとやかく口やかましく、しかも探りを入れようなんておこがましいにもほどがある。

「俺が認めて、俺が忠誠を誓うことがそんなに珍しいか?」

絶対零度の視線を送り、釘を刺す。

「あまり五月蝿く言うものなら、その心臓、貰い受けるぞ」

俺のその本気の言葉にテンゾウは黙りこくって、俺はそれを見ながらその部屋を後にした。

部屋に帰り、血の臭いを消すと家の中の掃除や洗濯物やらを済ませてしまった。

面倒くさがりの彼女のことだ。

そうそうに依頼をこなして帰ってくることだろう。





意外にその依頼は長くかかった上に、原作の7班の連中に彼女の魔法が知られてしまうことになるとはそのときの俺にはわかるはずもなく。

まあ、それらをきっかけにして、木の葉を出ることになるのはまた後の話だ。




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