ガボの日記より〜と二人で海に出た!〜





 オラ、ガボ。白い狼の子供。だけど、今は人間の子供。

 悪い魔物がかけた魔法で、人間になっちまった。
元に戻れる魔法をかけられたはずなんだけど、上手く人間の言葉が話せるようになって、元の姿には戻れなかった。

 これは日記ってやつ。岬の爺さんが教えてくれた。

 試しに文字ってやつが書けるかやってみろって言われて書いてる。

 「初めてにしては上手い」ってくぅには誉められた。

けどマリベルは「ヘタクソ」って言う。

 なんでだ?

 まいっか。…で…どこまで書いたっけ…。

 そうそう、言葉が上手く話せるようになったけど元の姿には戻れないって知った時、オラは嬉しかった。

 ようやく恩人に、「ありがとう」を言えた。「嬉しい」を言えたから。

 それから、オラを助けてくれたとマリベルとキーファともいっぱい話せるようになったから。

 今、キーファはいない。

 昔々の大陸に残った。

 キーファが決めたことだった。

いつも一緒のと「また会おう」って言い合ってた。

 だからきっといつかまた会えるって思ってるから寂しくない、と、思ってた。

 そのことで、はお城の人間になにか怒られてた。責められていた。

 オラ、怒ったけどが止めたし、マリベルも怒ったから(マリベル、怒らせると魔法が飛んでくるから怖い)、を守るみたいに先頭になってやった。

 は「ありがとう」を言ってくれた。

 なんだか胸があったかくなった。

 その夜。は一人でどこかに行って、そして戻ってきた。

 はオラのこと、寝てるって思ったみたいだったけどオラは起きてた。

 人間になったって、オラは白い狼一族の子供だから人間が動く気配なんてすぐ判る。

 戻ってきたは鼻を啜ると、となりのベットに潜り込んだ。

 …たぶん、泣いて帰ってきたんだと思う。

 海の匂いと夜の気配の匂い…それから「哀しい」っていう気配がした。

 そんな気がした。




 次の日の朝。

! 魚っ魚!!」

 オラが言うと、は昨日の夜のじゃなかった。いつものだった。

「魚って言っても、これは鯵だよ」

「アジ…?」

 魚に名前があんのか?! って言ったら、のおっかさんが「一種類ずつちゃんと名前が付いてる」と教えてくれた。知らなかった…魚は全部サカナって名前かと思ってた!

 誰が付けたんだろう。一番最初に見つけた奴かな?

 そう言ったら、が「そうじゃないか?」って笑った。

 が笑うと、おっかさんも笑う。なんだか嬉しくてオラも笑った。

 オラ、元々狼だから海のこと何もしらねぇんだ。

「マリベルが来るまでだいぶ時間があるけど、どうする? ガボ」

 ならオイラ、この大陸、船で一周したい。

 そう言ったらはちょっと驚いた顔して、それから笑った。

「よし、行こう!」

 船着き場の外れに泊めてある小さな船。

キーファとが直した船。

 それに乗って、オラ達は港をゆっくり出た。 

船に乗ると、はすごくすごく楽しそうな顔をする。

 オラが初めて船に乗った時も、それから今も。

 オラ、海のことがよく判らなかったからいろいろ質問する。

すると、は自分が知ってることは教えてくれて、知らなかったことは「じゃ、戻ったら港の人に聞いてみよう」って言ってくれる。

 狼の時には、オラは友達なんていなかった。

 白い狼。神様の使い。

 母さんは別だけど、他の狼達はオラの事を特別扱いした。

『仲間』なんだけど、ちょっと違う。

 遠吠えで呼ぶと来てくれる狼達も、いままで一緒に群れで生活してた狼達も。

 オラを上位の存在として見てた…群れで言うと一番えらい奴だ。

 だから。

「一緒に行こう」

 手をさし伸ばしてくれたことがこんなにも嬉しいことだなんて、オラ知らなかった。

「じゃ、聞いてみようか」

 知らないことを誰かに聞くことの楽しさなんて知らなかった。

…」

「んーー?」

 の笑顔に。

 オラは何が返せるのかな。何を言えるのかな。

【一緒にずっといる。】

 今はそう思ってる。

だけどいつかキーファみたいに別れる時があるかもしれない。

【ありがとな】

 そんなのじゃ、まだまだ伝わらない。

「…って海が好きだな」

 絞り出したオラの言葉に、はきょとんとしてからにっこり笑った。

「海だけじゃないよ。俺、皆好きだ」

 皆?

「海も空も風も大地も、それからフィッシュベルとかグランエスタードの…とにかく、皆が大好きだ」

 オラも?! そう、聞いたら。

「ガボも! だって俺達、友達だろ」

 大好き。

 友達。

 ああ、オラが言いたいこと、全部だ。

 嬉しくなって。

どきどきとわくわくが一緒になって。

「オラものこと大好きだぞ!」

 オラがそう言ったら、船の側で、ぱしゃんって水音が大きくした。

 大きく大きく、弧を描いて船の舳先を飛ぶと海に帰る! 虹が小さくかかって綺麗だ!

「なんだ、あれ!!」

「飛魚だよ」

 魚って飛ぶのか!! 泳ぐだけじゃないのか!!

 オラが言うと、そういう種類の魚だって教えてくれた。

「焼いたら美味いぞー」

 の言葉に。

 くきゅるるるー。

 オラ達の腹の虫が答えた。

「ガボ」



「「つかまえよう」」

 オラ達は時間を忘れて飛魚を追いかけた。

 それから。……マリベルに叱られた。

「あんた達、バッカじゃないのーーー?!」

「「ごめんなさい」」

 だけど、オラ楽しかったな。

 また二人で飛魚とりに行こうな、

 オラもみんなみんな、大好きだから。

 のことが大好きだから。

 それを感じに、また行こう!!

 ……マリベルに内緒でな。(ばれたら怖いけどなっ!)
2001・04・24UP



ガボ…狼の子供なので海のことは知らないだろうと思って思い切って作った創作。
いや、マリベルで作ったから次の主人公は絶対この子と決めて(苦笑)作りました。
主人公クン、もてもて(爆死)。つーか、やはり皆に愛されるキャラでいて欲しいので主人公。こんな感じでいかがでしょう。


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