僕はずっと覚えてる。
僕が君たちと出会った最初の日のことを。


「早く起きなさい! 今何時だと思ってるの?!」

お母さんの声が一階からしてる…。
だって昨日はオーキド博士のポケモン特集、深夜にやってたからそれを見るのについつい夢中になっちゃって…。
僕は目をこすりこすり起き上がると、お気に入りのズボンとパーカーに着替えた。

僕のトレードマーク、薄い黄色の野球帽を持つと、階段を転げ落ちないようになるべく気を使いながら一階に降りるとお母さんがちょっと怒った顔で睨んでる。

! 今何時だと思ってるの?!」

僕を起こしたときと全く同じ事をまた言ってる。

「う〜ん…」僕は壁時計に目を走らせた。「10時」

「昨日の晩、何時に寝たの。夜更かししちゃ駄目じゃない。さっさと顔を洗って、朝ご飯を食べる! いいわね?」

「ふぁ〜い」

生欠伸をかみ殺しながら、僕は洗面台に足を向けた。
僕の名前は。11歳。

ここ、はじまりを告げる風が吹く街・ワカバタウンに住んでる。

他の人達は知らないけれど、僕の家には「家の名前」つまり「名字」がある。

友達に言うと決まって「変なの」と言われるけれど、僕自身は結構気に入ってるよ。なんかカッコイイもん。

今は平々凡々な普通の家だけど、ご先祖様は伝説のポケモンをゲットして世界を救ったとか言われてて、僕の家の「名字」はその名残なんだってさ。

おじいちゃんやお父さんは「ご先祖様に負けないポケモンマスターになるんだ!」とかいって家を出ていったきり帰ってこない。

別に寂しいわけじゃないけど、お母さんが可哀相に思う。

だから僕はポケモントレーナーになる機会を一回ふいにした。だって、僕がいなくなったらお母さんは一人っきりじゃないか?

。修理に出してたポケギア、預かっておいたわよ」

「ごめん。ありがとう。お母さん」
ポケギア。見た目はちょっと大きくてゴツメの腕時計だけど実は超高性能なマシン!

時計にもなってるし、電話にもなる。一応、ポケモントレーナーにならないかと博士に言われて手渡されたマシンなので、タウンマップもついてる優れもの。

全く使ってないけどね。

食事がすんでから、ポケギアを腕に巻いた。

「そうだわ。ウツギ博士が呼んでたわよ。何でも頼みたい事があるんですって」

「博士が?」

ウツギ博士はこの町に住んでる、ポケモン研究家。

オーキド博士を尊敬してて、新種のポケモンを発見して一躍有名になった博士。

僕の家の隣に研究所を立てて、毎日ポケモンに関して研究してる。

歳は離れているけれど、僕とは友達だ。

「判った」

僕は歯を磨いて、一応身だしなみとかいうのに気を配ってから(お母さんがうるさいんだ!)帽子を後ろにかぶって、家を出た。


ワカバタウン。
とっても小さな街だけど、気のいい人達ばかり…あれ?

知らない子がいる。ウツギ博士の研究所なんか覗き込んで、何やってるんだ?

「おい、君」

「…なんだ?」

その子は振り向くなりギロリと睨んだ。濃い赤毛は長くて、背中まであるみたい。

服は黒っぽい。男の子だ。歳は僕と同じぐらい、かな?

「博士に用事なら…」

「うるせえな、あっちいけよ!」

僕を突き飛ばすと、その子はさっさと研究所の裏のほうに入っていってしまう。

なんだい。人がただ声をかけただけだっていうのに。

「ほっとこ」

僕は気を取り直して研究所の中に入った。

別に危険な物を取り扱っているわけでもないので、大掛かりなところと違ってすんなり入れる。

「博士〜」

「おおい、く〜ん」

ウツギ博士は何かの機械の下に潜り込んでた。助手の人達が「おはよう!」とか挨拶してくれながら、一生懸命、その機械に取り掛かってる。

「僕に用って何なの? 博士」

「…よっこいしょ。ああ、そうなんだ! 君!」

博士は機械の下から出てくると、奥の部屋に案内してくれた。

テーブルの上には三つのモンスターボール(だと思う。

よく資料で見るのと色が違うけど)が機械に設置されている状態で置かれてる。

「ちょっとおつかいを頼まれてもらいたいんだ」

「おつかい〜?」

「そんな嫌そうな声を出すなよ。…君も知ってると思うけど、ポケモンじいさんに呼ばれたんだよ」

ポケモンじいさん。
本名は知らないけれど、いつも「大発見だ!」とか言ってウツギ博士に情報を提供してくれるおじいさんだ。

…ほとんどが眉つばもんなんだけどね。

「30番道路に住んでるんだっけ?」

「ああ、メールが届いてね。とにかく大発見したのはいいんだけど、自分一人じゃ手におえない。とにかく来てくれって連絡があってさ」

「なに、それ?」

「かなり慌てていた様子でねえ。悪いんだけど、僕の代わりにポケモンじいさんのところに行って用件を聞いてきてもらいたいんだ。本当は僕が行きたいんだけどねえ」

ばうんっ! ていう変な音と一緒に助手の人達の「うわ〜っ」「消火器、消火器!」とか聞こえてくる。

「今何やってるの?」

「はっはっは。いや、マサキ君から新型ポケモン転送装置っていうのが届いたんだけどねえ」

……壊したな。さては。
僕の無言の応答に博士は「いやあ」とか言いながら、笑って誤魔化してる。

「いいけど、街の外には野生のポケモンがいるから一人じゃ…」

「チッチッチ、ちゃんと君のパートナーを用意しておいたよ」

パートナー?

博士はテーブルの上に置いた三つのモンスターボールを僕に見せた。
「僕が見つけた三種類の新種ポケモンがいる。…この中から君のパートナーを選ぶんだ」

「博士、これって!」

まるでポケモントレーナー(の卵)を送り出すときみたいだ。

「お母さんの許可は…いただいてるよ」



「君がお母さんに遠慮してトレーナーになるのを止めようとした事も、でもポケモンの事が大好きでポケモンの知識はどんな事でも吸収しようとしてる事も…。みんなお母さんはご存知だったよ」

…博士は僕の肩に優しく手を置いた。

「いい機会だ。試しに行っておいでよ。ポケモンの世界へ」

それから、決断しなさい。自分が、どうするかを。

僕は、博士の声にひかれるように、一つのボールを選んだ。

ポンっ。音と同時に一体の、見た事もないポケモンがボールから飛び出してくる。

「ヒノ〜」

薄い黄色と濃い青。細長い鼻先に、時折、ぼぼぼっと背中に炎が立ち上がる。

「ひねずみポケモン、ヒノアラシだ」

「ヒノ〜」

博士の言葉に答えるように、ヒノアラシは鳴くと背中の炎を大きくする。

「この子にするかい?」

「う、うん」

僕は正直、博士の言葉に生返事しただけだった。

それより、僕の目の前に知らないポケモンがいる事のほうが驚きだったから。

ヒノアラシは、その線みたいな目で僕のほうを向いた。僕を見て一声「ヒノ〜」と鳴く。

後から思い知ったけど、この時から僕はポケモンの本当の魅力にはまってしまったのかもしれない。


その日が僕の第一歩。

君たちに出会った、最初の第一歩。










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2001・11・03 UP
スター金・銀バージョン主人公で一番最初に作った創作。

二番目に練り直したのを消してしまって、全部なくしたものだと思っていたけれど。

あったのでこの際思い切ってUPいたしました。

好きだな〜、ポケモン。クリアしてないけど(爆)
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