狙撃手



「ウソップにはしないのか?」

照れていたチョッパーの言葉にくんは傍でなにやら作っていたウソップと目が合いました。

「お、お、俺はいいよ!」
「なんでだ?」

チョッパーと一緒にくんは首を傾げました。
あーとか、うーとか言ってうなるウソップと目が合います。
ウソップは照れくさそうに笑いました。

「ほ、ほらなんていうか、恥ずかしい…」

くんは座って作業していたウソップに近づきました。
…高さ的には申し分ない。
そう思いながら肩に手をおきます。

「だ、ろ?」

ちゅっ。

やわらかくて優しい感触とその音に、ウソップの体の熱が一気に顔に上ります。

「わーい、良かったな! ウソップ!!」

チョッパーがどこか嬉しそうに笑いました。

「お、おう…さ、サンキュ」

キスされた額を押さえて、ウソップは赤くなりながらくんにお礼を言いました。
その数分後。

「えぇ!! 俺とナミだけじゃなかったのか、キスされてんの!!」(ルフィ)
「へへ〜んだ、俺らもされちゃったりしてるもんね〜〜〜!!」(ウソップ)
「へへ〜んだ!」(チョッパー)


自慢しようとした海賊王に対して、逆に自慢している狙撃手と船医がそこにいて。
くんはその騒動をよこに、料理人の手伝いをし始めました。
その後、額のキスの意味を知った狙撃手が感激してくんを抱きしめて、海賊王にゴムゴムのパンチを食らうのはまた別の話。


今日も麦わら海賊団は平和です。

額のキスは友情のキスらしいです。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

王女とカルガモ、剣士と料理人



くん」
「くあぁ」

アラバスタの王女様とそのカルガモがくんのところになってきました。

「ナミさんたちにキスしたんですって?」

その確認の為に来ただけの二人でしたが、くんはそういえば、と思い出しました。
この船の者たちにはいつもくんは平等に接しています。
平等ということは皆一緒という意味で。
……キス、したほうがいいのかな?

「くあぁ?」

くんはカルーの羽を優しく引っ張って、頬に軽く唇を寄せました。

「まぁ!」
「くあぁあ」

赤くなったカルガモをよそに、王女に向かって両手を伸ばします。

「あたしも?」

こくり、と頷くとくんは王女を中腰にさせ、その額に唇を当てました。

「いいなぁ♪ ちゃん、俺にはぁ?」

隣で洗物とご飯の仕込みが終わった、料理人のサンジがそう言ってきます。
彼は本気の催促をしたわけではないのは判っていました。
くんは首をかしげて、じっとサンジを見上げると。

「…え…そ、その…マジで?」

サンジに向かって両手を伸ばします。
照れくさそうにサンジは中腰になりました。
くんはそーっと、まるで壊れ物に触れるかのように彼の顔に触れると。

「っ」

ちゅっ。

やわらかくて優しい感触を、左の瞼に落とします。

「あら、サンジさんは瞼なのね」
「くあああ」
「…」

たかがキス一個。

しかし、へろり、とサンジの顔がしまりのないものに変わって行きました。

「ありがと〜、ちゃん。君の気持ちは確かに受け取ったよぉーー」

メロリ〜ン♪となる料理人と少し照れている王女とカルガモをその場に残し、くんはてとてとと歩くと甲板に行きました。
周囲を見渡し、いつもの船尾のところで数を数えているゾロの声を聞き取るとそちらに歩いていきます。

「ん? なんだ、どうした。

ゾロは汗だくになったままナナシくんの方向に顔を向けます。
くんは傍に置いてあったタオルをもってそれをゾロに向けました。

「おう、ありがとよ」

タオルを受け取ろうとするゾロにジェスチャーでかがめ、とくんは訴えました。

「あぁ?」

眉を寄せるゾロですが、言われたままにかがんでくれました。

そっと肩に手をやって。

「?」

瞼を閉じさせると。

「いっ」

ちゅっ。

右の瞼の上にキスを落としました。

「な、な、なに…?」

顔を赤くする剣士にくんは小首をかしげます。

「なんで、こんなこと…ってーか…っ」

あー、うーとうなっているゾロからそっと離れて、くんはタオルをゾロの首にかけてあげてそっと離れました。
その背中を見送りながら、照れくさそうに右目を抑える剣士がそこにいました。



数時間の後。


瞼の上からのキスは憧憬という意味合いを聞いて。


「このくそコックになんざ憧れたらエロになっちまうぞ」
「このくそ剣士に憧れたらちゃんがマリモになっちまう」

と、お互い言って。



「「あぁ?! なんか文句でもあんのかこらぁ」」

そう睨みあう二人がいたとかいなかったとか。


今日も麦わら海賊団は平和です。

瞼のキスは憧憬(憧れるという意味) のキスらしいです

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

そして…。



「なんで俺の口にしねーんだ」
「おっまえ、してくれただけでも嬉しいと思え!」

海賊王と狙撃手がそういい会うなか、くんは大事なことを思い出しました。
一番、わすれてはいけない者がいたのです。
てけてけと『彼』の傍に近づいて、少し考えます。
普通に近づいてはできないのです。

…。

ルフィ、ちょっと来て。

くんはその瞳を海賊王に向けました。

「ん? なんだ? どうした」

ちょっと力をかして。

くんが手を引き、ルフィはいつも自分か抱えて座る場所まで来ると。

「んぉ! 俺はこのまま居ればいいのか?」

こくり、とくんが頷きます。

ルフィの伸びる腕と手を使ってくんは器用に彼の顔の真正面まで行きました。

「ん〜〜〜? なにすんだ? 〜〜!!」
「くぉら、ルフィ!! に危ないことさせないでよ!!」
「だってが行くって言うから…」

ルフィとナミさんがそんな言い合いをしているのをよそに、君は、もう少し下までルフィの腕に捕まったまま身体を下ろします。

足を踏ん張り、なんとかその場所までやってくると。

「ぬわ〜〜〜〜〜!!!!」

覗き込んだルフィはその様子を見てしまいました。

「な、なんだどうした?!」

ちゅっ。

がメリーの口にチュウした〜〜〜!!!」


くんは踏ん張っていた足とゴムの反動で、びょーんと飛ぶと甲板に戻って綺麗に着地します。

すた!

「おぅ、10点!」

見事な着地にウソップが思わずそういいますが。

「ナミ! のやつ、口チューをメリーにした!」(ルフィ)
「ってことはメリーを愛してるのよ」
「だめだー!! メリーにもはやんねぇけどにもメリーはやんねぇぞーーー!!」

海賊王の叫びがとどろきました。



どうも今日も麦わら海賊団は平和らしいです。

唇のキスは愛情らしいです

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

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