(2)ままごとのような戯れ
(前編)
所詮、ニンゲンはかくも醜い生き物なのだ。
まるでままごとのような生活だったな、主殿。
ご主人様、ご命令を。ニンゲン全てを皆殺しに致しましょう。
口々にそう訴える仲魔たちに、『あたし』…いや、僕は「落ち着けよ、皆」と薄く笑った。
笑うと付けられた傷がひどく痛むけど周囲に人(しかも医療忍者だ)がいるから仲魔を呼べないし、自力で回復もできやしない。
…でもこの痛みこそ、己が生きているということを実感できて。
僕は…あぁ、言いづらくてもこの一人称に慣れなくっちゃなぁ…おそらくは白いベットの上に寝転がった。
(「そんなことはいつでもできるよ」)
心の中で呟いた言葉に、仲魔たちはまた反応を見せた。
はてさて、僕が一体全体どういう経緯でこうなってしまったのか。
ぶっちゃけて言えば、この里の医療忍者の一部に肉体改造されちまったからだ、イー!(ショッカーのマネ)。
いや、なんというか…封魔の血族である『あたし』が後生大事に持っていたものも含めて「里の為」にどういう利益を産むのかというのを調べていたらしいのだが、それがえらい方向に突っ走った。
遠縁だという男も嬉々として参加した、『あたし』の人体実験と、生きたままの解剖には気が狂うかと思った。
…いや、もう、すでに僕は狂ってしまっているのかもしれない。
いや、もう、生々しいぞー。
自分を切り裂かれていくのが判るこの感覚っていうのは、今まで経験したことのない感覚だ。
いや死に掛けたことはなんどもあるけどねぇ。
あぁ、あんまり五月蝿いからか薬を使われて、そして実験と称して『あたし』が先祖から受け継いだとされている、あれを体内に埋め込んだ。
…マニアクスやらノクターンをプレイした人にはおなじみの、あの『マガタマ』だ。
25のマガタマは取り出されようとしても、僕の体内を逃げ回った。
その世界じゃ全部覚醒したあいつら、25のマガタマは干からびた物だったけれど僕の血にだけ反応を示してあの、うねうね動く生き物にと戻って…それが連中の目には生きているなにかしらの力の塊に思えたんだろう。
それを医療忍者の連中は、気前よく25全てを身体に埋め込んでくれたものだから。
前の世界までの身体なら、まだなんとかもったかもしれないけれど、今の身体はただの人間の、そう言ってしまえば小娘の肉体だったからさぁ大変。
魔力といえばいいのか霊力といえばいいのか、もしくはMP(?)というかそういうのが大暴走。
手術や実験を繰り返していた施設は大破。
やってた連中はほとんどひき肉。
生き残った連中も、三代目火影に内緒でやってたことらしく、今はどうしてこういうことをしでかしたのかと尋問中だ。
原作で出てきた、あの傷だらけの大男がやってんだろうけれど、まぁ、僕はまた聞きだから。
「かわいそう」だとか「どうしてこんな姿に」なんていう大人の声に、心底笑える。
そんな姿にしたのは、君たちのお仲間だよーんとか言ったらどうなるだろう?
「起きているかの」
緊張した老人の声、あぁ、これは三代目火影様とかいう老人だ。
「あぁ、起きているよ。サンダイメ・火影様?」
掠れた声も勘弁して欲しい。
にっと口元に笑みを向けて、声のした方に顔を向けた。
様付けしても敬っている感じがしないように、わざとそんな言葉使いにした。
全く、部下の教育ぐらいちゃんとしといてくれ。
おかげで、こんな身体になった。
「それよりもびっくりしたんじゃないかな、火影様。確かに会った家の『女の子』がこんな生き物になって」
「」
あぁ、その名前はもう使えないだろうなぁ、最後の最後と言うか身体の感触で自分がどうなったのもう理解してるから。
「そりゃ、女の名前だ。もうこうなった以上は、違う名前にしようと思うよ。火影様」
「…おぬしの、半分は女子じゃろう」
「あぁ、それでも見かけは男の子だろう? この目がつぶれる瞬間、ちゃんと見てるんだ」
つぶれて、と火影様は小さく呟いてから「すまん」と謝る。
僕は不思議に思った。
「なんで火影様が謝るのか、わかんないんだけど」
「うちの里の人間が、よもやこんなことをするとは思わなんだ」
この人、甘すぎなんじゃねーの? とか思ったのはここだけの話。
「この世の中にはありえない、なんてことはありえない」
僕はそう言うと、思いついたようにその名前を口にした。
「は死んだってことにしてくれないかな、サンダイメ。僕の名前は。ただのだ」
「」
あぁ、それと。
そう、付け足した。
これだけはちゃんと言わなくちゃ。
「僕、もう人間じゃないから気をつけたほうがいいよ」
「!?」
あくま
「僕、人修羅になったから」
そう、こうして『あたし』はこの世界で『僕』になった。
人間、から、封魔の血筋とマガタマの暴走からかつて(真・女神転生3マニアクス時代)の世界の特性と能力を復活させた、アンドロギュネスのに。
男の上半身と、女の下半身を持つ両性具有者。
ここが前とは違うところだね。
しかもだ、今のこの状態…マガタマを眠らせたままの、かろうじて人間の姿のままにいるこの状態では、僕の瞳は外の世界の情報を脳に伝えることはなくなった。
ひと
悪魔化したのが、あの例のあの悪魔ではなくて、ただの人間のせいだなんて笑えない話だなぁ。
別に、もう、うん…ここまで来たら悪魔でもいいけれど。
途端に僕の仲魔たちが歓声を上げる。
天使も妖魔も妖精も。
女神も地母神も魔王も。
そしてあの魔人たちも。
口々にこういった。
「修羅王の復活だ」と。
でも人間から人修羅になったって、敵対する悪魔もいないし、人間を滅ぼすにしてもご飯の元になる悪魔がいるからそれもいやだし、さてどうしようかな。
いっそ人間に敵対してみる、というのも選択肢に入れるべきかなぁ。
ちょうど恨みも出来たことだし。
僕はベットに横たわったまま、そう思う。
歓喜の声が心地よくて、今すぐにでも眠りそうだ。
僕の「悪魔宣言」にサンダイメは絶句していたけれど、なんとか持ち直したようだ。
「おぬしが、そういうのならば、そうなのであろう」
「で、どうするのかな? 僕を殺す?」
いますぐ殺すのは勘弁して欲しいな。
せめて、一休みさせてくれたら僕は勝手にこの里から出て行くか何かするんだけれど。
好戦的な仲魔が「殺せ殺せ、人間を殺せ」とわめく声に唇がゆがむ。
「いいや…。ただ、この里で生きて欲しい」
「へぇ…」
僕は見えない目を三代目に向ける。
「できれば、そうできればだが、アカデミーに行ってせめて下忍になって欲しいとも思う」
あぁ、そうすれば火影の名の下に監視ができるな。
忍者になれば、上の命令は絶対だろうし。
ちなみについこの間までのの時にもそういう話は着ていたけれど、忍者ではなくて医者になりたいということで断っていたはずだ。
ひき肉になったあの親戚が。
「この目でなれるかどうかわからないし、なによりも僕は人間じゃないよ? それでも三代目はそんな僕を駒にしたいの?」
「…駒など、そんなこと思ってやせんよ」
目が見えなくても一応、下忍にはなれるらしい。
その後、三代目はこう言った。
「この里に住むものは、みなワシの守るべき家族じゃ」
………いろんな突込みとか入れたかったけれど、とにかく今回はこう口にするしかない。
聞いてみたいことはこれだけ。
「へぇ? 人間じゃなくても」
「あぁ、人間じゃなくても」
言い切りましたよ、このご老体。
僕は小さく溜息をついた。
「身体が動かせるようになって、それから考えるよ」
うん、考えるとは言ったけど、するとは言わないところがチェックポイント。
入院中は腫れ物に触るような、そんな扱いだったので二日ぐらいしたら自主退院した。
真夜中にお世話になりました、というメモをなんとか書いて。
目が見えないから、文字がゆがんだりしているのは勘弁してもらいたい。
あぁ、ちゃんと紙片の上にはかけれたと思う。
自力で脱出するのは骨が折れるので、試しに悪魔召喚してみたら…うん、出てきました。
「だけど窓の外に君がいたら、速攻ばれそうなんですが? サマエル」
「気にしないほうが身の為ですよ、わが王」
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