「違い・差がある2人 10のお題」
髪の色
「親父の髪、のびたんじゃねーか?」
そう言うと、親父は「あぁ?」とどこぞのチンピラのような口調で顔をしかめた。
「あー、そうかもなぁ」
がしがしとかきむしるその指から飛び出してる髪の色は黒。
俺様の白銀の髪とは正反対の色合いのしたそれは、べっとりとした重苦しい感じを時折、与える。
…親父の馬鹿が、手入れしてねーからだ。
俺様たち、息子連中や下っ端どもの世話はするけど、自分のことになるとてんで無頓着になりやがるから世話ねぇ。
この親父は。
「花街にでも行って、小奇麗にされて来いよ」
花街は、男が一夜の相手を買う場所だ。
そこの女どもに親父はかなりもてていた。
なのでそこに行くと、そんなに金も払ってねぇくせして髪やら爪やらをいじくられて帰ってくる。
「父親に向かって女、買いに行けっていう息子がいるか。馬鹿」
その言葉に俺様はあからさまに溜息をついた。
親父は一人者だ。
昔は連れ合い(ようは奥さん)がいたが、今はいないんだからいったっていいだろうに。
…まぁ、親父はいつも「自分から行く」というのではなくて、花町の人間に見つかったら「問答無用に拉致られて女の部屋に放り込まれる」んだが。
…スラムの父、として。
そして人間的魅力って奴で、男にも女にももてるからな。うちの親父は。
「馬鹿っていうほうが馬鹿なんだよ」
俺様はそう言うと、親父の髪に触れる。
枝毛、発見。
そんなこと言うものなら、きっと「女か、てめぇ」と荒い口調で言われて拳骨を食らうかもしれんので絶対に言わねぇ。
「お前の髪は綺麗だよな」
そう言って親父の手が伸びて、本当に久しぶりにわしゃわしゃ、という感じで撫でられた。
…ちっちぇぇ時はよくこうされたっけなぁ。
…って俺様がしみじみしてどうする!
「親父、行って来いよ」
「カノンかレシィに切って貰うか…」
親父はそう言いながら、俺様の髪を撫でる。
あくまでいかねぇつもりか…。
「いつだったか、俺様の髪を白髪とかほざいたこともあったよな」
しょうがないので俺様は話を少しずらした。
「そうだったか?」
親父は愛嬌のある笑みを見せる。
「ほんと、俺のガキどもは皆、綺麗な色合いしてるよなぁ」
そう言いながら、にっと笑う。
その言葉に俺様は心の中で笑った。
知らねぇだろう、親父。
俺様がまだガキの頃。
少しでもあんたと同じになりたくて、この髪を黒く染めようとしたことを。
使う得物も双剣にして、親父と似たような服装選んだことも。
ま、こんな恥ずかしいことは絶対、教えてやらないがな。
俺様はにっと笑い返した。
「なに、親父の色も捨てたもんじゃねーぜ?」
ただ、今は手入れしてねーからべっとりしてっけど。
俺様がそういうと、親父は小さく唸ってから、羊(レシィ)の名前を呼んだ。
その後、羊が「ご主人様の髪の毛、洗うことはできても切るのは僕、無理です」と泣かれて親父が困るのはご愛嬌。
サモンナイト 終焉の獣 男主人公とバノッサ
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俺様に一人称を書き直し。
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