「違い・差がある2人 10のお題」

考え





「だからな、あの子はお前が好きなんだって」

俺が言うと、うんざりした様にそいつは首を横に振った。

「お前、いつから人の恋路に口出す暇人になった。つか、そんな女、会話した覚えもない」

そう言いながら羽ペンを走らせ、一息溜息をつくとようやく椅子から立ち上がる。

「お、これからくり出すか」

まだまだ夜はこれからだし、酒を引っ掛けてあの店に連れて行く事だってできる。

冒険者が集う宿のウェイトレスの女の子が、こいつのことをちらちらと見ているのを俺は知っていた。

上手いこといけたらいい、と思う。

「行くか?」

「あほが」

俺の言葉を一言で一刀両断させると、白雪…こいつの使い魔の白い梟だ…に肉片を与えた。

立ち上がったのはその肉片をとるために棚に向かったのだ。

「だーかーらぁ」

俺が大げさに身振りすると、そいつは俺をにらむ。

「いい加減にしとけよ、リウイ。俺とお前じゃ女の好みも考え方も接し方も違うんだってこと理解しろよ。
ジーニお姉さんにしこたま殴られて脳細胞が欠如しまくってそうな脳みそでもそれぐらいはまだ理解できるだろう?」

「何気に今、優しい口調で俺にひでぇこと言ってねぇか?」

「よかった。言われる程度には理解力は落ちてねぇようだな」

ちょいと毒舌で、年下とは思えないこいつは俺の弟分のはず。

「だいたいなんで、そんな風に俺とその子をくっつけようとしてんだ、リウイ」

「いや。別によ…」

ほんのときたま不安になる、なんて言葉を俺は口に出せない。

こいつは本当は異世界の人間で。

本当は、この世界にいなかった人間で…。

もしかしたら元の世界にふいに戻っちまうんじゃねーかとか、考えちまうときがあって喪失感を持ってしまうときがある。

それはそれでしょうがないって頭では判っているんだが、感情では納得できなくて。

何でもいいんだ。

こいつがもっと執着するものをこの世界に作ってくれれば…。

魔法はこいつが生きるために必要な力であり、それがなければ生きていけないから学んでいるだけであって、違うことをしてもいいといわれたらきっとこいつは魔法を捨てる。

剣は元々興味がない。

神聖魔法はどうかな、と思うがこいつは信じられないことに「神様なんざ信じてねーよ」と暴言を吐く。

まあそれ以前に神の声を聞いたことがないから使えやしないけれど。

だから、俗物的なものしか俺はこいつに教えてやれない。

…酒とか、上手い飯だとか。

そしてあるいは女とか。

俺のそんな考えもこいつは知らない。

知る必要はない。

「…だいたいお前の女の接し方は大勢のうちから選ぶっていう言語道断なもんで、来るもの拒まずだろ。そんな男の言葉を鵜呑みにするやつがいると思うか?」

「ひでぇ言われようだな」

「ほかの事で信頼してても女のことに関しちゃお前のことは信じてねぇよ」

「いいじゃねーか。ちょっと息抜きに女の柔肌学んだってよ」

「今は生きることに精一杯で抱いてる暇なんざ、ねぇ」

「別にすぐさま抱け、なんざ言ってねぇ。口説いてから抱け」

「口説く暇があったら呪文の一つを覚えてるほうがまだいい」

はぁ、と二人同時に溜息ついた。

「そんなんだから闇夜で刺されるんだ、リウイ」

「女の一人や二人や三人程度、抱いて囲えるぐらいのでかい男になれって言ってんだよ」


そう軽く言って、本当は弟分を失いたくない兄貴の心を押し隠して俺は夜の街に誘う。



こいつの心を縛り付けるいい酒か、女…気持ち的に商売女は嫌だけど…が居てくれるのを願いながら。






魔法戦士リウイ プラス/リウイと主人公。
ブラウザでお戻りください。

お題に沿っていないような気がするが気にしない方向で(笑)

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