「違い・差がある2人 10のお題」
瞳の色
僕とお父さんが会ったのは雨の日。
僕はこの北スラムの一角に捨てられていて…見て見ぬふりをされていた。
お腹がすいたけれど、誰も何もくれなくて。
僕自身、ひもじいけれどもこのまま死んでしまってもいいかもしれない。
そう考えて目を閉じていた。
僕は、母さんにも捨てられた忌み子だから。
シルターンの鬼神の血を引く、ハーフだから。
気味悪がれて当然。
愛情をもらえなくて当然。
そんな風に考えていた。
しばらくしたらそう考えるのも億劫になっていった。
優しいのはそんな僕の身体を隠してくれる夜。
安らぎをくれる、真っ暗な時間。
それだけ。
ぽつり、と雨が降ってきたけれど、その時僕はもう自力で起き上がれなかった。
あぁ、もうすぐ<死>が訪れる。
身体が冷え切ってきて、指先がしびれてきたけれど僕は動けなかった。
とくん、という自分の心臓の音が聞こえ始めて。
そんな矢先に分厚い誰かの指の感触が僕の頭を撫でた。
僕はびっくりした。
けれども、起きられなくてそのままにしておいた。
その指は、生まれて初めて僕に優しく触れてきたもの。
「何、してやがる」
乱暴な言葉だけど、どこまでも優しい声音。
僕はそれに返事も返せない。
「死にたいのか?」
聞かれて、僕はもう一度億劫になった「考える」ということをしてみた。
死にたい。
けれど生きたいのかもしれない。
僕は、ゆっくりと瞼を開けた。
黒い瞳が僕を見つめていた。
黒。
僕は持っていない、僕に安らぎをくれる色。
黒。
優しく包み込んで僕を隠してくれる色。
「あ…ぁー…」
触りたくて僕は手を伸ばそうとして。
そして腕を動かす力さえなくなっていたのに気が付いた。
その黒の瞳が、優しく笑って…。
「生きたいのなら、拾ってやる」
そう言われたのを最後に、僕は意識を失った。
それから、僕は生きている。
優しくて、強くて。
僕を…うぅん、僕以外の兄弟たちも見守ってくれる、あの黒い瞳の主と一緒に。
「サモンナイト 終焉の獣」主人公とカノンの出会い
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