「違い・差がある2人 10のお題」
価値観
「お前のような少年が、どうしてあんな奴を贔屓にしているのかはわからんな」
わたしがそう言うと黒髪の少年は、小さく笑ってから自分が注文したワインを口に含んだ。
「そりゃ…価値観の違いって奴だな」
「それはそうだが…奴の美徳をあげてみてくれないか」
そうすれば多少は好意を寄せられるかもしれない、と言うと今度は声を立てて笑う。
「さほど面白いことは言った覚えはないが?」
「いや、どう俺がいいところを言ったところでお姉さんのリウイへの見方は変わらないよ」
いい加減、名前で呼んで欲しいものだが。
わたしはそう考えながら酒を飲んでから、顔の刺青を指でなぞる。
「確かにリウイは馬鹿でお調子者で行き当たりばったりで、何も考えてない癖して美味しいところとったりするときもあるし女癖もけしていいほうじゃない」
判っているじゃないか。
「勉強だって得意じゃないし、魔法もそこそこ使える程度」
その通りだ。
「でもね」
少年の笑みが深くなった気がした。
「その馬鹿はダチや周りを信じることに関しちゃ、誰にも負けない」
その言葉に私は息を飲んだ。
「口にした約束は護る男だよ」
確かにその通りで。
そしてそれと同時に少年にここまで理解されている、あの男…リウイに対してこうなにやら思うところも出てくる。
少年のこの理解に、あの男は気がついているだろうか?
わたしは口を閉じて、苦笑いしか浮かべられない。
少年の言うところの「良いところ」というものは奴を見てきて…多少はわかるつもりなのだ。
だが。
「女の扱いが気に入らない」
「…自分たちの事棚に上げといてそういうこと言うなよな」
少年の言葉にわたしは酒を煽った。
どういう意味だ。
「聞き捨てならないな」
「あー、なんかやな予感するんですけど、そろそろ帰っていいですか」
棒読みでそんなことを言っても無理。
駄目に決まっている。
「…今夜はお互い、腹を割って大いに話し合おうじゃないか」
わたしは新しい酒を追加すると、少年にそれを突き出した。
「お互いの価値観、どこまで違うかはっきりさせよう」
「い、いや話違ってない? ジーニお姉さん?」
リウイの話でしょう? という少年に向かって大剣を叩いて見せた。
「付き合うだろう? 少年」
「……こ、今夜は徹底的につき合わせていただきます」
だからその剣から手を放しましょうよ。
そういわれ、わたしはゆっくりと微笑んでやった。
魔法戦士リウイ プラス/ジーニと二人きりで。
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