「それは 10のお題」
それはただの夢
カノンっていう新しい弟ができた。
俺様は親父の息子で(血は繋がってないけど)兄貴だから、弟は守らなきゃいけない。
死んでしまった母さまのような、悲しい別れをしたくないから。
だから強くならなくちゃいけないんだ。
気が付いたら俺様は、暗闇の中に一人ぽつんと立っていて、ようやく思い出した。
親父を探さないと。
探して、俺様にも剣を教えてくれって言うんだ。
走って、真っ赤なマントを着た親父の背中が見えた。
「親父!」
俺様が呼ぶと、親父は振り返った。
いつもよりも目の傷がえぐれてるような気がしたけれど、俺様は気にしない。
「親父、俺に剣教えてくれ」
剣? と親父が返した。
「そうだ。親父の双剣、教えてくれ」
難しいぞー、といつもの口調で親父が俺様の頭を撫でてから、思い出したようにこう言った。
<ああ、悪い。もう、教えてやれねーんだ。>
マントが翻り、親父の身体が闇の中で浮き上がった。
<俺の腕が片方、もうねぇからよ>
親 父 の 腕 が、な か っ た。
<双剣は勘弁しろ>
そして、ゆっくりと親父が倒れていく。
マントに、親父の足元に、血の海が広がっていて。
それは親父の、親父の身体から流れ出ていて…。
「うわぁぁあああ!!」
「どうした、怖い夢でも見たのか、バノッサ」
俺様は気がついたら自分の部屋のベットの中にいた。
夢?
そう、夢だ。
自分に言い聞かせて、心配そうに覗き込んでいる親父の身体にしがみついた。
大丈夫だ、ちゃんとある。
怪我もしていない。
「おいおい、どうした。バノッサ」
「っうるせぇ」
そう返しながら、親父の身体をぎゅっと抱きしめる。
怖かった。無性に怖かった。
親父の腕が、なくなるんて恐ろしい夢見るなんて。
親父が倒れていくなんて、しかも血を流しながら倒れるところを見るなんて。
「大丈夫だ、バノッサ。それはただの夢だ」
内容も知らない親父が、そう言って俺の背中を叩いてくれた。
ただの夢。
親父はそう言う。
俺様もそう思い込もうとした。
だけど。
俺様の何かがそれは『予感』なのではないかと言ったんだ。
このままでは、親父は片腕になるんじゃないかと。
だからしがみついたまま、俺様は泣きながら言った。
「俺様に、剣を、教えろ。親父」
親父をあんな姿にさせない為に。
弟だけじゃなくて親父を守るために、俺様が強くなるんだ。
名前変換創作/サモンナイト 終焉の獣/男主人公VSバノッサ子供時代
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