「それは 10のお題」
それは悲しみ
『継承の儀』は圧倒的な力で、おおよその期待を裏切り和麻が処理した。
いまだ昏倒している相手を見下ろしていると、彼の側にふいに少年の姿を現れる。
「和麻さん、気が…付いてる?」
「あぁ。誰かが覗き見してやがる」
べっとりとまとわりつくその気配は、彼が鳥肌させるぐらいの負の感情を合わせている。
「風の子達が怯えてるよ」
だから風牙衆の連中も周囲に気を配っている。
そう言ったときだった。
第三者の登場に見ていた神凪の上層部たちから声があがった。
ずるをしたのだろう。
儀式を愚弄するな。
「たかが風術師の分際で!」
口汚く罵る神凪一族の術者を見ながら、少年が表情を歪めたのを確かに和麻は見た。
幼い彼の表情に浮かぶそれに、申し訳なく思った。
自分と同じ読みをする名前を持つ、彼がこうして儀式の場所に出てきたのには理由がある。
それすらも神凪一族は判っていない。
嘆かわしい。
彼の表情には。
どうして人を貶めるの?
風牙衆の人達は判っているから注意してくれたのに。
どうして精霊の声を聞こうとしないの?
火の精霊も風の精霊も危険を察知して教えてくれているのに。
使い人なのに。
それは相手を責めるのではなくて、「哀しみ」。
それは哀しみ。
けれど、彼はそれを口にすることなく、周囲に集まった火の精霊を操って陰に潜むその輩を引きずり出した。
二次創作/麒麟聖伝/男主人公VS神凪?
本編ネタばれ
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