それは紅き者
「絶対絶命というやつかの」
「安易にそんな言葉を口走るな、ラウル」
「そうは言ってものぉ」
「…じじむさい言葉使うなぁ、ラウル・バスク」
彼らの言葉に私は唇を噛む。
緊張感がほとほとないのが蒼の派閥の召喚師の特徴なのだろうか?」
聖王に盾となれと、ここトライドラの領主になった私にしかけられた暗殺未遂事件。
たまたま違う派閥の任務とやらでいた召喚師とその護衛であるらしい傭兵の壮年と私はその事件の黒幕を突き止めるべく動いていた。
現在は、逆に追い詰められて砦から離れた場所で取り囲まれている。
敵は…おそらくではあるが、デグレアの斥候部隊だ。
あわよくば、私の首…と思ってのことだろう。
シルターンとロレイラルの召喚術を得意とする飄々としたラウル・バスク。
メイトルパの召喚術を使う、フリップ・グレイメン。
サプレスの召喚術で我々の傷を癒してくれたグラムス・バーネット。
そして…彼。
黒髪に黒い瞳。
鍛え上げられた剣の印象を与える少年。
この5人で、なんとか影に身を潜めているがそろそろ限界だ。
「…さてどうする?」
フリップが彼に声をかけた。
「一点集中で囲いをぶち破るか、俺たちをおとりにしてフリップたちが応援要請ってのもありだぜ」
「要請してもすぐさまはこれまいて」
「そうだな。私としては、これを機会に一網打尽という案を提示するが、どうするね? リゴール卿」
ラウル・バスクとグラムス・バーネットの言葉に私は眉をしかめる。
一網打尽? 何を言っているのか。
囲まれているのは我々なのだぞ?
「いや、大丈夫じゃろうて。ワシらには、彼がおるでのぉ」
ラウル・バスクはそう言うと少年の肩を叩く。
「やってもいいが、数が数だぜ」
「貴様が飛び出た瞬間に、エールキティを憑依させてやろうか」
フリップ・グレイメンの言葉に彼は首を振った。
「いや、攻撃力ましちまったら殺しちまうからいい」
「それよりアーマーチャンプにしたほうが良くないか?」
「おぉ、そっちにしてくれ。頼む。ラウル」
私が返事をする前に着々と話は進んでいる。
「できるのか?」
「できるのか? じゃなくてなぁ」
彼はにぃっと笑った。
「やるんだよ」
「では私にも同様にかけてくれまいか。君一人特攻をさせるつもりはない」
きょとんと彼は目を丸くした。
そんな顔をすると歳相応に幼く見える。
「…くっくっく…いいぜ、領主様。あんた面白いよ」
それは褒め言葉なのだろうか?
「じゃ、俺の後に続きな。ラウル、フリップ、グラムス。援護頼むぜ」
召喚師達は笑みさえも浮かべて頷く。
そして彼は戦場に立った。
一瞬、私は見ほれた。
その剣舞に。
その破壊力に。
『美麗』とまでに昇華された双振りの剣の舞。
血飛沫が飛ぶ。
それは正しく「紅き者」。
武人としての血が、私の中で沸騰した。
「おぉおおおおおっ!!!」
私は背後からの召喚師達の術の気配を感じながら、彼と肩を並ぶべく剣をとった。
名前変換創作/サモンナイト 終焉の獣/男主人公&某召喚師Sと領主VSデグレア斥候部隊
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