「貴方の虜 10のお題」
8・モモの花(花言葉は貴方のとりこ)
※名前が固定されています。ご注意ください。 男主/九十九飛鳥
知り合った頃はまさか飛鳥様がこういう風になるとは思っていなかったというのが正直な感想だ。
結婚当初だって全く変わらず、何が琴線に触れたのか数ヶ月経って奥様の『いいところ』を見つけたらしい。
恋愛だのと甘い感情を持ち合わせていない人だとは常々思っていたが、そうではなかったのだなとしみじみと思ってしまう。
「日照さんは忍者さんなんですよね」
「はい」と応えると、わくわく、とかいう言葉が良く似合うような表情を浮かべられた。
この女性(ひと)はひどく子供っぽいところがあって、それが私や月天に保護欲をもたらせてしまうのだろう。
「…じゃあ、影分身の術とかできますよね?」
「え」
「こう印を組んで」
女の人にしては大きな手を動かして指を組んでいるその姿に私は答える。
「漫画の○ルトのようにはできません。きっとできるようになれると信じたいですが」 (無理です)
「…そ、そうなんですか?」
本当、漫画なら『ガーン』とショックを受けたその表情に笑う。
「できたら何をさせたかったんですか?」
「教えてもらって、分身して家事とか…!」
拳をぎゅっと握り締めて、本当子供のように目をきらきら輝かせている奥様は、なんというか可愛らしいと思う。
と、その時だった。
「何話してんだ?」
がしり、と私の後頭部を掴む存在が一人。
「…というか忍者がそう簡単に背後に立たれてどうする」
さりげなく掴んだ手の力をじょじょに強めていってるのは、気のせいじゃない…!
「あ、飛鳥様…っ…」
痛い、本当に痛い。
口調も冷たいし、これは怒ってる。
って、奥様と雑談しただけで怒るんですか飛鳥様。
「飛鳥さん?」
「はい?」
奥様に名前を呼ばれただけで、表情が柔らかくなる飛鳥様。
しかし強めた力そのままだった。痛い、痛い。
自分の顔が赤黒くなっていくのがわかる。
「日照さん、苛めてるんですか?」
「苛めてないですよ」
即答!?
そう思った途端、すぐさま手が離れた。
くらりと立ちくらみしそうになるのをなんとか踏ん張る。
「何、楽しそうに話てたんですか?」
楽しそうに……?
自分の奥さんとそう話してただけで、こうまでしてくれやがるわけですね…飛鳥様…。
「日照さん、忍者さんなので。忍術っていうのができるのかな?って」
ほにゃり、とした笑みを浮かべる彼女に、飛鳥様も小さく笑う。
あ。
なんか、周囲の気配に…こう、なんていうのかな?
花っていうか、『ほんわかオーラ』漂わせてきてません、二人とも。
例えで言うなら、そうモモの花。
それがら二人の間を飛び回ってる気がする。
そう、少女漫画のように。
しかも、私の存在そっちのけで。
「そんなことない…ですよね?」
そう私に目を向けてきた奥様の表情は、なんとなく小動物が上目使いにこちらを伺っているのにも見えて、ちょっと癒し系っていいましょうか…なんというか和む。
「そんなことありますよ」
和みかけたら、ずばっと飛鳥様がそう断言した。
…あぁ、そうか。
彼女の関心というか、こう笑みを作らせてるのが自分じゃなくて私だというのが気に入らないんでしょう、この人。
全く持って大人気ない。(本音)
「…今、なんか気に食わないこと考えなかったか?」
「いえ別に滅相もありませんよ飛鳥様!HAHAHAHAHA!」
うそ臭い私の笑いに眉をひそめて、飛鳥様が一歩近づこうとした瞬間だった。
「分身の術とか使えれば、家事とかお買い物とか一度にできていいなぁ、なんて思ったんですよ」
剣呑な飛鳥様の様子に多分気が付いてない奥様のその一言で、また気配が変わる。
「そんなことぐらいなら、一緒にしますよ。こいつに教えてもらわなくても」
いや、教えられないから影分身なんか。
そう口走ろうとする口を閉める。
また『ほんわかオーラ』が二人を、というか飛鳥様から漂ってきて。
それはさっきのそれよりも断然強い気配で、本当…。
私は思わず引いた。
……奥様は全然全く持って問題ないけれど。
飛鳥様には、似合わない(断言)。
私がそう魂飛ばしている間に、飛鳥様は奥様を連れて家の中に入って行った。
「…あぁ、本当。飛鳥様がああなるなんてなぁ…」
月天。
「お前、見ていたなら助けないか?」
「いや、飛鳥様のあのオーラっつうか『ラブラブフィールド全開!』に鳥肌立っちゃって」
その気持ちはわかる。
奥様はそのままで本当に大丈夫ですが。
飛鳥様はもう少しなんとかして欲しい、というかあの図体であの気配は勘弁して欲しいと思う、日照なのでした。(今日のワンコ風)
悪魔と踊れ。旦那さんと奥さん(主人公)。第三者視点で。
微妙にお題と違う。(平伏)
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