「甘いもので12のお題」

5. ミルクレープ








「わぁ」

奥さんの、感心したその声に俺は自然に口が緩む。

毎回毎回、奥さんが日照たちに言われるままにお菓子を作ってるのは知っていて、俺としてはその都度奥さんに「俺の分も」といわなければありつけなかった。

まぁ、これは俺が悪いのだ。

一番最初に貰ったお菓子をだめにして、というか口にしないで捨てていたから。

「俺の分もあるの?」と聞いて「…ありませんよ」と返されたときは、かなりショックだった。

ちょうど、彼女を意識し始めた時期だったし。

「捨ててらっしゃったので、いらないと思って」

その言葉に胸がぎゅーーっと痛くなった。

慌てたように、というか実際慌てて「いらなくはない」と捨てた理由とかもちゃんと言い訳して「そうですか」と彼女は納得したけれど、それでも心配で。

「俺の分も」

そう、口にするようにした。

閑話休題。

で、今回は俺が奥さんにお菓子つくりを教えることにした。

俺は一応、一通り家事一般できるので。

俺の手際に彼女が感心してくれるのが嬉しいよな、うん。

ミルクレープを作ろうといってきたのは彼女だった。

お玉で生地を焼くのができなくて何度か失敗したそうだ。

なので生地は俺が焼く。

彼女はすでにカスタードクリームをレシピを見ながら作ってくれていた。

後は生クリーム。

かっしゃ、かっしゃと泡だて器で生クリームを泡立ててる彼女と、クレープ生地を焼き終わって用意してる俺。

…なんつーか、こういうのもいいよな。

二人で自分達のおやつ、作るのも。

料理とか飯とかも何度か、確かにあるけれど。

「…生クリーム、こんな感じですかね」

「んー、そんなもんじゃないですか?」

俺はそう言いながら指で一掬いすると口に運ぶ。

「あまい」

「飛鳥さん、だめですよ」

「大丈夫、生クリームのほうがあまるから」

「そうですか?」

俺は自然にもう一掬いクリームを指につけて、「はい」と差し出した。

彼女も「え?」とはなりながらも、指についたクリームを舐める。

あ、…。

やべ。

舌の感触が。

と思った瞬間、俺は片手で彼女の後頭部を抑えて唇を奪う。

「っ…っ!!」

じたじたと動く彼女の舌先を舐めて。

ぺろっと唇も舐めてから離した。

「こっちのほうがもっと甘い」

「っ…っ…〜〜〜〜〜〜っ」

涙目になる彼女に笑いかけて、何事もなかったかのように、俺は作業を進めた。







…そういう行為を作ってる最中、たびたびしてしまって。

彼女がそれから当分生クリーム系のお菓子を作らなくなってしまったのは。

俺のせいか?







「悪魔と踊れ」 旦那と奥さんの甘い(?)時間。
たまにはこういうのもいいかと。

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