「甘いもので12のお題」
8.お紅茶
「お母様」
私がそう呼ぶとお母様は微笑み、私の傍まで来てくれる。
私は飲めないのに、飲めないと知っているのに私の分のティーカップを持って。
「お母様」
私が必要ないと言ったら、お母様が。
「…そう?」
微笑まれながら、それでもお紅茶を入れてくださった。
ほんのりと漂う湯気。
私が人間であれば、匂いがわかるだろうか?
私が人間であれば、お紅茶の味がわかるだろうか?
データをとってもハチ様にも相談しても判らないけれど。
それでもお母様を模倣するように、私は入れられたティーカップを凝視し。
その次から手元にカップを作り上げる。
その中には琥珀色のお紅茶。
お母様はほんのり微笑まれた。
「きっと美味しいよ。レモンの入れたお紅茶だもの」
不思議。
ただのCGと判っているのに。
私と同じ映像なのに。
私はカップを唇に寄せる。
お母様の言われたとおり、もしかしたらこれが「美味しい」といわれるものかもしれないと。
私はそう思い、お母様に微笑み返した。
SRW
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