女なんか興味ねぇ。
車があれば別にいい。
そう思っていたのに。
それが、赤城レッドサンズのナンバー2の本音。



峠から帰ってくると、いきなり毛玉とも思えたそれが、高橋啓介の足にまとわりついた!

「おわっ!」

「何、情けない声出してるの? 啓にぃ」

なんて言ったのは従姉妹の緒美で、笑われたのが癪に障る。
だが、いつまで経っても離れようとしない毛玉…もといポメラニアンを抱き上げる。

が来てるのか?」
自分の家のペットではないそれは、抱きかかえられながらも尻尾をぶんぶんと振る。

「ううん、ちゃん。今日は用事があって、ニナちゃん預けに来ただけだよ」

「そんでお前は?」

「亮にいに、数学、教えて貰おうって思ってv」
今は小休止中v とか言う緒美を呆れた視線で見て、口を開いた。

「大学受験かぁ? 大丈夫か、お前の頭で」

「そうだね。頭は啓にいに似たから、あたし」

無理かも、と自分で納得する従姉妹に腹が立つ。

「なんだとぉ?」

声を荒げようとすると、犬と目が合う。

苦笑いをして、抱え直し、わざと聞こえよがしにこう言った。

「さぁ、馬鹿なおねえちゃんはほっとこうな、ニナ」

なによう、それえ! と、文句を言う

ポメラニアンを抱きかかえたまま、啓介はリビングにくつろいでいる兄に一声かける。

「ただいま、兄貴」

「ああ…相変わらず、お前にはなついてるんだな。ニナは」

にこやかに、赤城レッドサンズのナンバー1が言う。

ちゃんは、綺麗になってたぞ。啓介」
少し面白がっている兄の言葉に、弟はうっとつまりながら「関係ねぇよ」とか口にしつつ、犬をなでる。


それがニナの本当の飼い主の名前だ。
幼馴染であり、遠縁(と、いっても他人といっていいほど血は遠いが)でもある。
ご近所にたった一人で住んでいる彼女を、高橋兄弟も、そしてその親達も気に入っている。

「今日は何で預けたんだ?」

旅行か何かか? と、聞いてくる弟に、言いづらそうに兄はおずおずと口を開いた。

「…T大の連中と、ちょっとな」

「?」

ちゃん、今日合コンなんだってv」

従姉妹のこの言葉に、なでる手の動きが止まった。

ごほん、と亮介は咳払いした。
「いいのか?…啓介?」

「なにがだよ」

ちゃん」

「……関係ねぇよ」

そう言いながら、啓介の頭はのことでいっぱいになった。

まっすぐで、可愛くて。
車のこと、全然わからないくせしてかなり鋭いし。
(ちょっとチェーンしただけで気がついた)

「(本当は好きな癖して、こんな時に頑固なんだから)」

「亮にい? なんか言った?」

「いや、なんでもない」

自分では気がついていないだろうが、かなり落ち込んでいる弟の背中となつきまくってはしゃいでいる子犬の姿が対照的だ。

「(ま、本人次第だからな)」

少し小さな溜息をついて亮介は、可愛い従姉妹と勉強会を再開した。
(合コンねぇ、勝手にしてろよ)

そう言いながら、自分の部屋にニナを連れて入る。

「お前のご主人様は、俺のこと、どう思ってんだろうな……?」

ポメラニアンは首をかしげた。

その仕草に、苦笑いをする。

(ただの友達、だよなぁ)
「はああ」
大きな溜息一つつく。

判っているのだ。
自分で、なぜこんなに自分が落ち込んでいるか。





その時、携帯電話が鳴った。

「? 誰だ?」
『あ、啓介くん?! あたし〜っ』

聞こえてきたのは困りきっているの声。

「どうした」

切羽詰った声で居場所を話すと、彼女は泣きそうな声でこう言った。

『変な人がついてきてるのっ』

「いま、そこのどのへんだ」
『公衆電話があるとこ』
「電話かけてる振りして、そこにいろ! 速攻行く!!」
『うん』

「ニナ、 兄貴のとこでも行っててくれ」
つきまとうポメラニアンに真面目な顔で言い切ると、啓介はポケットに入れたままの愛車のキーを硬く握った。



初UPした時のコメント:いや、CD聞いてたら無性に書きたくなってしまった、高橋弟。
中編に持ち込みます(笑)。

っていうか無駄に長いよ! 今回も!!(爆笑)

2004/3/22 以前の作品

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