「え? 正義の味方じゃないんですか?」
そう言われたのは生まれて初めてだったのかもしれない。


さん、大丈夫ですか?」
「え? あ、はい。どうもすみません、明智さん」
「貴方には謝られてばかりですね」
「すみ……」

慌てて口元を抑える彼女は、可愛らしい。
船上パーティに招待された、明智健悟(警視庁が誇るエリートキャリア)はここで偶然にも、(本人いわく、不幸にも)金田一一と幼馴染の美雪と出会った。
彼らを連れてきたのは、そのパーティを主催した人物の友人である、斎藤萌。
彼女は金田一の遠縁に当たる人物である。
名探偵には事件がつき物である。
案の定、殺人事件が発生し、居合わせた警察関係者たちと、そして金田一の推理によって事件はつい先ほど解決したばかりだ。

少しゆれた船の動きに、 の身体がよろめき、明智がさりげなく支える。

「ありがとうございます」

ふわり、と微笑まれて明智はふっと笑い返す。
今まで会ってきたどの女性よりも、興味深い。
最初の印象はただそれだけ。
そのはず。



「これからどうします?」
「これから?」

聞き返すと、大きな瞳がきょとんとなって、自分を見つめて。
明智自身も見つめ返して。
優しげに微笑んで。
微笑みあって。
薄紅色した彼女の唇が、何か言おうとしたその時。

姉ちゃんは、これから俺らと飯にすんだよ」
さん、お待たせしました〜」

突如、降ってわいたようにやってきた、金田一と美雪が明智と の間に入る。

(あれ?)

目ざとい美雪は、明智の雰囲気に気がついた。

(明智さん、本当に怒ってる? それとも、いらついてる?)

「何、 姉ちゃんに近寄ってるんだよ」(怒)
「それは君の勝手な見解だろう? 金田一君」
「そうよ、一。明智さんに失礼じゃない?」

は?

「明智さんはあたしがよろけちゃったのを、助けてくださっただけなのよ」

確かにその通りだ。
しかし。
いい雰囲気だったはずだ。
あの一瞬は。

「じゃ、明智さん。これから一達と食事に行くんですが…ご一緒しませんか?」

無邪気な笑顔に、密かに明智が脱力していることに美雪は気がつく。

えええええ〜〜っ!
金田一のブーイングをバックに微笑む彼女。

「喜んで」

ネクタイを締め直し、明智は涼しげな笑顔を見せた。

(もしかして、もしかしちゃったりするのかしら?)
美雪は、そんな明智を見て思ってしまう。

(振り向かせて見ましょうか、貴方を)
何のために、ということも深く考えずに、エリートキャリアのは決意する。


そして恋はそこからはじまる。


初UPした時のコメント:明智警視、片思い編を作成してみました。
これからきっと一ちゃんたちが出張ってくるかと思います。

たぶん。

予定は未定だが(おい!)

2004/3/22 以前の作品

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