(一ちゃんったら遅いなあ)

課題を見せて欲しいって言ったからちゃんと待ってたのに、と、呟くとは溜息を一つつく。
いつからだろう。
にとって、物心つく頃からいつもいっしょにいた一は、もうそうじゃない存在になっていた。

(好き、なのになぁ)

小さな頃と、同じに一緒にいたいからよく自分の部屋から抜け出して、屋根づたいに一の部屋に遊びに来ているのに、最近の一はそんな彼女を見ては難しい顔をしたり、赤くなったりして目をそらし、ごにょごにょと何かしら文句を言うようになったのだ。

(嫌われてるのかなあ)

今夜だって、本当なら一緒の勉強会のはずだったのに。

「一だったらバイトにいっちゃったわよ?」なんていう一のお母さんの言葉。

「じゃあ、いいです」

肩を落としたに、お母さんは「バイトが終るまで待ってる?」とか行ってくれたので「気が向いたら」と返事をして。
家に戻って、課題を済ませてお風呂に入ってパジャマに着替えて。
隣の部屋を覗いたら、灯りがついてて。

「一ちゃん?!」
と、勢いよろしく窓を開けると誰もいなくて。

哀しくなった。

「はぁ」

また一つ、大きく溜息が出てしまう。
ぽて。
一のベットに腰掛けていたのを、そのまま素直に後ろに倒れこんだ。

「はじめちゃんのばかぁ」

一言そう言うと、身体から力が抜けた。
睡魔が不意に襲ってくる。
いくらなんでも寝てしまっては文句は言えないし……。
うとうととしていたは、しかしそのまますとんと眠りについてしまった。
起きるまで。




朝の光には目をあける。

(あ、れ?)

かけられていたタオルケットを見て、ゆっくりと立ち上がる。
自分の部屋ではない。
頭がゆっくりと回転していった。

「あたし、一ちゃん、の部屋に……」
「はいそーですぅ」

びくんっ! の肩がびくりと動いた。
ベットのすぐ横に、もう一つ、タオルケットに包まれていた塊が動き出した。
むくっと起きて、を眠そうな目で睨みつける。

。おーまーえーなぁあああ」

心底恨めしそうな声に、びくびくとしながらタオルケットをぎゅっと抱きしめながらは一の言葉を待った。

「何考えてんだ!」
「何って…一ちゃんが課題教えてくれって言ってたから…」
「おふくろがバイトって言ってなかったか?!」
「そりゃ言ってたけど」

だけど、とは口ごもる。

「お前なあ、頭いい癖してほんとはバカじゃねえかー?」
「なっ」
「俺だってなぁ、男なんだぞ」

むか。

「考えて行動してんのか?」

むかむか。

「なによう、悪いのあたしばっかり?!」
「んなの全部、が悪いんじゃねえかよっ」
「だってはじめちゃんがっ」

涙目になるは、きっと一を睨みつけた。

「……もう、いいっ。どうせ、あたしが全部悪いのよね?! あたしとの約束忘れてバイトとか行った一ちゃんは悪くなくて、待ってたあたしが悪いのよねっ?」
「あ、そりゃあ、でも」とか、一が言ったがもうは、聞いてなかった。

「もう頼まれたって勉強なんか見てあげない。もう、一ちゃんなんか知らないっ。勝手に落第でもして来年も三年生やったら?!」
「お、おい。いくらなんでも」

そこまで言うなよ、とか一が言おうとした時、の口はこう言った。

「一ちゃんなんか、だいっきらい!」
「おい」

一の声が一段と低くなった。

「もっぺん、言ってみろよ」
「何度だって言うわよっ」

は、一の方を見ずに、窓のほうに足をかけようとした。
「はーじーめーちゃーん、なーんーかー大っ嫌いっ!」

「俺はなぁっ!」

ぐいっと手をとって一はを引き寄せた。

「ひゃっ」

ぐらりとバランスが崩れたの身体を一の身体が受け止める。

「昨日の晩、我慢すんのにすっげー時間かかったんだぞ。お前、俺が男だって自覚してねえだろ」
「わ、判ってるよ、そんなの」

びくびくするの身体を、一は抱きしめ直す。

「いーや、全然、判ってねえ。お前なあ、男の部屋に女が、しかも男がほれた女がベットに寝てたら普通、食うぞ」
「…へ?」

(いま、なんて言ったの? 一ちゃん…ほれた女?)

「我慢して我慢した俺のことが嫌いだぁ?」

ふざけんなよ。という、小さな声が聞こえて、は怖くなった。

今まで傍にいて、今自分の身体を抱きしめる一が。

「昨日の夜に我慢したこと、今してやるよ」
「へ?」

柔らかい感触が、唇に当たる。

それは何度も何度も繰り返すようにの唇に襲い掛かった。



その日の二人の「おはよう」はケンカで始まりキスで終った。






さてさて二人に運命やいかに!




「ハッピーエンドに決まってんだろ!!」
書いてる人「このオチでか?」(苦笑)
一「うっ…」
書いてる人「…てなわけで、とぅびいこんてにゅ〜っ…………て続くんかい!」
一「続けないとどーなるか判ってんだろうなあ(怒)」





てなわけで。


前回の続編です。一ちゃんにも本当は非があったのよ。
そんなお話です。

2004/3/22 以前の作品 2001.09.12 UPしてたみたいです。

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