最初にそいつの身体の異変に気がついたのは俺だった。
今までかいだことのない気配がものすごくたくさん重なったような、そんな存在感。
嵐とかそういう天災が人の形に成ったような…そんな恐ろしい奴だと思ったんだ。
ドクトリーヌも治療していて、その異常さに気がついたけれど…俺達は最後までそいつの治療に全力を注いだ。
だって…だって患者を怖がる医者がどこにいるんだ!?
それに今は…人間でなくても動物でなくても、俺のお前は仲間なんだろ!!?





ルフィの船に行くと、ナミの言っていたとおりにどくろの旗印があった。
麦藁帽子をかぶったそれが風にはためいている。
…風…。
不思議だった…。
ドクトリーヌの言葉が俺の傍で聞こえたなんて…。
俺は船の手すりに座るとドラムロックを見つめる。
大きなサクラを見て「行って来ます」をちゃんと言った。
俺の冒険が、今始まるんだ…!!

「よぉーし、野郎ども!! 宴だぁ!!!」

ルフィの声が後ろで聞こえる。
見たら、そいつは緑の頭のやつの膝の上に座らされていた。

「おう、飲むか? お前も」
「てめぇ、マリモ!! ちゃんに無理強いしてんじゃねぇよ!!」
「あぁ? 今のどこが無理強いだ。言ってみろくそコック」
「やんのか、おらぁ」
「待て待て待て、お前ら!! はまだ少し熱があるんだぞ? 酒なんかよりも休ませてやれよ」
「チョッパーの歓迎の宴なんだからよ、休んでる場合じゃねぇよなぁ? 
「おい、ルフィ!」

そんな声が聞こえる。
そうか、あいつの名前っていうんだ。
そう思っていたら、ナミが声をかけてくれた。

「びっくりした? あんたも大変な奴らの仲間になったもんよねぇ」

仲間。

「な、かま?」
「そう、非常識な連中だけど、これからは仲間なんだからあんたもなれなくちゃね?」

仲間。
そうだ、俺はこいつらの仲間で同じ群れなんだ。

「あ、あいつも?」

俺がそう蹄をって呼ばれた奴に向けるとナミは大きく頷いた。

「そう、あの子も」
「あ、あいつ、人間の気配じゃなくて、動物の気配もしてないぞ…」
「本人は、自分は悪魔だって言い切ってるわ」

悪魔?

「悪魔の実の能力者か? 俺やルフィとおんなじ」
「違うんですって。正真正銘、本物の『悪魔』だって…けどね、チョッパー」

ナミの声が優しくなった。

「確かにあの子の力は普通じゃないけれど、でもあたしに言わせたら、あの子は話に聞いた『天使』よりも優しくて、哀しくて、ほっとけない、そんな子供よ」
「子供…」
「そう、そんであんたの仲間。了解?」

俺は頷いた。
まだ正直言えば、ちょっと怖い。
けど、仲間なら大丈夫だ。
そうこう考えていたら、カルガモが凍っていて、俺はそいつの話を聞いてやった。
しばらくしたら俺が動物の言葉がわかることと、医者だということをなんとかルフィたちが理解した。

七段変形面白トナカイ(ルフィ)だの、非常食(サンジとかいう奴)だの言うけれど、俺は医者だ!!

何度も何度も乾杯した。
あいつもナミに手渡されたカップをそのたびに乾杯してくれた。
表情がなくて、感情がわからないけれど。
でも、歓迎してくれてるみたいなのはわかる。
後片付けをしている最中に、そいつの足取りがおかしかったから、俺は一緒について歩くことにした。

「…」

金色の瞳が俺を見てる。
爬虫類のような瞳の色じゃなくて、なんだろう…あぁ、そうだ。
満月みたいな金色だ。
それが俺を見ていた。

「お、お前具合が悪いんだろう? お、俺が診る!」

医療バックを抱えて俺が言うと、首をかしげた。

「な、何が言いたいんだ…?」
「…動物の言葉はわかるけど、の言うことはわかんねぇんだなぁ。チョッパー」

ルフィが笑う。

「ルフィは判るのか?」
「おぉう、判るぞ」

ルフィってすげぇ!!

。お前、熱があったんだろ? 無理すんな」
「…」

は無表情のままルフィを見上げた。

「しかも、お前、風の精霊とかいうの、使ったろうが」

ゾロまで言い出す。

「何? 精霊?」
「あぁ、こいつのダチにムシニンゲンがいてよ。そいつが精霊とかいうのかしてくれてたんだ。な? ゾロ」
「あの言葉を運ばせたのは、お前だろうが。
「!」

あの、言葉?
もしかしてドクトリーヌの?

「今、そいつどうした? …なんだ、帰っちまったのか…。で、お前の体調は?」
「…」

は月を見上げた。
自分と同じ色をした、あの大きな満月を。

「月? 満月だと、お前元気になるのか?」
「そ、それでもお前立ちくらみしてたぞ…っ、診せろ!」

俺がそういうと、は俺を見つめた。

「う…」
「………自分は悪魔だぞ、怖くねぇのか。だってよ」

それは、俺が今まで言っていた言葉にそっくりだった。
誰も仲間にしてくれなくて、ドクターとドクトリーヌしかいなかった俺の言葉と重なる。
だから、歯を食いしばった。

「正直、俺はお前が怖いって感じてる。お前は人間でも動物でもない、すげぇ力が人間の形してるだけだとそう感じてた」

俺はバックを握り締めた。
みんなの視線が集まるのが判る。

「けど」

けど、こいつはあの言葉を俺に届けてくれた。
けど、こいつは俺と同じことを言ったんだ。
哀しくてつらくて泣いても誰も見てくれなかった、今までの俺と同じ言葉を…。
こんなにいい仲間に囲まれてるくせに、だ!

お前はこの船のクルーで、俺はこの船の船医! お前は患者で俺は医者だ!! それに

目を見る。
ルフィやゾロみたいに、何を考えてるか判らないけど。

お前は、俺の仲間なんだろう!!!??

そのとき、ほんの少し。
ほんの少しだけ、瞳が揺らいだのを俺は確かに見た。

「仲間を怖がる奴がいるかよ。バカ!!」

そう言ったらルフィが笑った。

「しししししししっ、。ちゃーんと診てもらえよ〜?」

「じゃ、女部屋のほうにいきましょうか?」

ビビが俺を案内してくれた。




それからしばらく俺はの看病をして。
それで…本当に仲良くなったんだと思ってる。


ほんの少しだけ、まだ怖い。
身体の中にうごめく生き物達のこととか、聞きたいけれど怖くてダメし。
がペルソナ出したときはびびっちゃったし。

けど、はそんな俺をじっと見つめて、静かに俺が落ち着くのを待っててくれてる。




だから、俺はがんばるんだ。

あいつが、が笑顔で俺を…俺達を仲間だってちゃんと思ってくれるように。





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