おはようございます
無表情で表向きには感情を表せない、ウソップ命名悪魔っ子のくんは男の子でもあるけれど、女の子なので女部屋と呼ばれる部屋でナミさんと一緒に寝ています。
ふわわ、と大きくあくびをしてくんは起き上がりました。
ナミさんが買ってきてくれたナイトキャップにつけられた猫耳がへにゃん、とたれます。
目をぱちぱちと瞬かせるとくんは、隣で眠っているナミさんの顔を覗き込みました。
小さな寝息に、くんは首を傾げます。
どうやらこのまま眠らせておいたほうがいいのか、それとも起こしたらいいのか迷っているようです。
くんは彼にしては静かにベットから下りました。
とて。
それでも足音を立たせてしまいました。
「?」
あらあら。
ナミさんがあくびをしながら起き上がります。
「もう朝なのね、」
こくり、と頷いてくんは首をまた傾げて見せました。
「うぅん、もう寝ないわ。起きちゃうから」
その言葉をきいてくんはこくり、と頷きます。
それと同時にナイトキャップの猫耳がへにゃん、とまたたれました。
「おはよう、」
おはようございます。
くんはそう口を動かしました。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
いただきます
ナミさんコーディネートの服を今日も着て、身支度を整えるとくんはてとてとと歩きました。
スープのいい匂いに、おなかが思わずぐぅ、とななります。
「サンジ〜〜〜!! めし、めし〜〜〜!!」
この船の船長さんの声を聞きながら、くんは自分の席だといつも促されているそこにつきました。
「お、おはよう。ちゃん。よく眠れたかい?」
こくり、とくんは大きく頷きました。
時折目の光や雰囲気で意思を伝えることができるくんですが、ナミさんにいい笑顔で「大きくジェスチャーして伝えて頂戴」と脅され…いやいや、諭されているのでオーバーアクションです。
「今日のメニュー、お気に召していただければ幸いです」
こくり、と大きくまた頷くと、テーブルの上を見ました。
あ。
もごもごもご。
「てめぇ!! くそゴム!!!」
いつものコックさんの言葉と蹴りと船長のうめき声を君は聞きながら、近場にあったまだ手付かずだった野菜オンリーのサラダの皿を引き寄せて。
いただきます、と手を合わせました。
かちゃかちゃかちゃという皿が動く音と喧騒。
それがこの船のいつもの朝食風景です。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
島が見えたぞ
ぺしぺしぺし。
なでなで。
ぺしぺしぺし。
くんは船のお掃除が終了したので、船長さんと一緒にメリーの頭の上にいます。
「今日もいい天気だな〜、〜」
こくり、と頷くと船長さんはぶーと唇を尖らせました。
「お前、封印といてちゃーんと話せよ?」
くんはその言葉は無視してはるか前方に目を向けます。
船長の名前はモンキー・D・ルフィ。
かなり高い賞金がかけられた海賊です。
その船長さんは、いつものように小さなくんの身体を抱きしめて、そして風を受けます。
「今日はどんなことが起きるかな〜、〜」
くんは無表情でその声を聞いています。
「ルフィ〜、釣りでもしようぜ〜!」
ウソップの声に「おお!!」と返事をして、くんの顔を覗き込みます。
「お前もやるか? 」
「…」
「なんだもう少しここにいるのか」
ルフィは不思議なことにくんの意思を目を見ただけで理解します。
「ウソップ〜、もうちょっと待っててくれ〜。もう少ししたら行くからよ〜」
「あぁ? おーう」
「ししししっ、俺ももう少しここにいる」
そう言ってくんの身体を抱きしめます。
ふわり、と風が凪ぎました。
それにかまわず、くんはメリーの頭をしきりになでます。
「お前はメリーが大好きだよなぁ」
初めてくんはルフィに視線を自分からむけました。
「にしししし、俺と一緒だ」
同じ、という言葉にくんは瞬きを繰り返しました。
「お前も、俺もおんなじだ」
くんはその言葉にも無表情で。
けれどびくりと指先を震わせました。
「?」
ふいっと視線をそらし、くんはぺしぺしと今度はルフィの腕をたたきます。
「ん?」
くんが指差したその向こうに島影が見えました。
「おおおおおお!!! 島だ〜〜〜! ! 島だぞ!」
麦わらの海賊は大きく笑ってこういいました。
「! 島見つけたときは、こう言うんだ!! 【野郎ども〜〜〜!!! 島が見えたぞ〜〜〜〜〜〜!!】」
ばたばたという足音と声。
「よ〜し、!! 冒険だ!!」
は小さく、本当に小さく頷いて島影を見つめました。
「ウソップ! 釣りは中止だ!!」
「あぁ!」
「冒険だぞ、野郎ども〜!」
それがいつも島を見つけたときの麦わら海賊団の船長の反応です。
日常話