(1)コナン視点



その日の航海は終了し、ナミさんたちの勧めで俺達はやって来た島の酒場に入ることになった。

「この島、海軍がいるみたいだからあんまり目立つことはしないこと。喧嘩はご法度よ、いい?」
「「「「「は〜い」」」」」

蘭や園子、そして少年探偵団の皆が手を上げる。

「喧嘩、言うても俺ら以外がふっかけるんとちゃうか?」

服部の目がゾロたちに向かう。

「あ?」
「言えてるぜ。クソ剣士は短気だからよ」
「なんか言ったか、探偵にエロコック」
「いや、俺はな〜んも」(服部)
「耳が遠くなったか?」(サンジ)

ぷは〜と煙を吐いてから、わざとサンジがそう言うからまたゾロが睨む。

「やめろ、お前ら!!」

ナミの拳が飛んだ。

「けっ」「はい、ナミさ〜ん」
、お前皆連れて酒場の席とっといてくれ」

珍しい。
ルフィが一番に行くと思ったのに。
俺がそういうとルフィが困った顔を作った。

「いや、俺も行きたいのは山々だけどよぉ」
「博士からメリー号の一部の修繕の手伝いを頼まれたのよ」

ニコ・ロビンが笑いながら言う。

「すまんのぉ、ルフィ君とロビン君に手伝ってもらえれば少しの時間で終わると思うんじゃ」

博士がそういい、サンジとナミは食料調達、ウソップとチョッパーは買い物兼ゾロの見張りってことになった。

、みんなのこと頼むわよ」

こくり、とが頷いて「〜〜、俺すぐに行くから肉とっとけよ〜〜〜〜!!!」というルフィの声を背中に受けながら俺達は酒場を探した。

「ねぇ、なんでレストランとかそういうとこにはいけへんのん?」
「…あー、一応うちの船長って賞金首なのよ。ね? くん」

蘭の言葉に指で金額を教えてくれる

「3000万だって」

灰原がそういうと和葉が「3000万って、あの子が?!」と顔を引きつらせる。
…まあ、見えないだろうなぁ。

「ルフィ兄ちゃん、面白いし優しいけどめちゃくちゃ強ぇんだぞ」

元太の言葉に絶句していた服部が「ほんまか」と俺を見てくるので頷いてやる。

「そ、だからあんまり表立って動けないらしくてさ。酒場とかそういう類の店でもそれ言ったらおしまいだけれど、似たような人たちが集まってるから、海軍に報告とかされないわけよ」

園子がそう教えながら歩いていると「ねぇ、ここは〜〜?」と歩美ちゃんが指をさした。
ちょっと汚い店だけど、ま、いいんじゃないかな?
俺と服部が最初に中のスペースを見て俺達の人数も余裕では入れると確認してからその店に入る。

「なら、あたし。船に戻って店の場所、教えてくるわ」
「お願い、園子」
「園子お姉さん、あたしもいきた〜い」

歩美ちゃんの言葉に園子は笑った。

「それなら僕、チョッパー先生のところ行ってきます」
「一人で平気か?」
「任せてくださいよ! 僕だって麦わら海賊団の一人なんですから」
「俺も行ってやるよ」

元太がそう言って一緒に店を出て行く。

「麦わら海賊団、かぁ。お前らけっこう長いんか? 」
「そうでもないわよ…けど、なんていうかずっと一緒に旅してきてる感覚があるのよね」

ねぇ、コナンくん、と言われて俺は頷く。

「…一番彼らが大変な、あのアラバスタの国での戦いをあたしたちは一緒にはいられなかったけれど、見ていられたから、かしらね」
「見て?」
「…博士の装置が誤動作起こしてか、僕らはその場所にはいけれなかったけれど映像としてたちを見てたんだ」

灰原の言葉に俺が補足する。

「見るだけっちゅうのも、なんやなぁ」
「あら。実際あたしたちがそこにいたら絶対足手まといになってたし、死んでたわ。それに見てただけのあたしたちを、船長さんは許してくれたもの」

許すどころか、頭を下げられた。
「見届けてくれたのか」とそう言って「お前らも、つらかったろう。見てるだけじゃ。ありがとな」と。

君、注文するのならあたしも行くわよ」

灰原の言葉にいすから立ち上がったがこくりと頷いた。

そう、ここまでは平和だった。

ここ、までは。

(2)コナン視点



「よう、兄ちゃん達。ここはガキを連れてくるようなとこじゃねぇぞ」
「よく見りゃ、兄ちゃんたちもガキじゃねぇか」

酔っ払い…たぶん、達と同じ同業者らしい連中が近づいてくる。

「ガキは帰ってママのおっぱいしゃぶってろ」
「酒の味しりてぇだけなら、よそいきな」
「こいつら…っ」

服部と和葉が立ち上がろうとする。
蘭も怒ったらしいけれど、注文終えて灰原と戻ってきて席についていたが片手でそれを制した。

…」
くん、なんで」

口パクでが言ってくる。
俺がそれを声に出した。

「ナミさんに言われた言葉、忘れたの?」

喧嘩はするな。

「けど!」(和葉)
「なんだやる気か? あ〜? お嬢ちゃん」
…」

何か言おうとする灰原をは視線で止める。

「お前ら、やめてやれよ…」

よっぱらいの一人が酒瓶をもってふらついた足取りでに近づいた。

「酒の味、知りたいっていうんなら教えてやりゃあいいじゃねぇか。こーやってよ…!」

こいつ…っ!!
いきなりそいつは飲みかけのボトルをの頭の上でひっくり返した。
ぶどう酒とよく似た色合いのそれがの髪や顔をぬらしていく…!
んにゃろぉ!!!

…!」

灰原の声にも、そして俺達にもは首を横に振って、そして目で言った。
おとなしくしていろ。

「けど…」
「「「「はっはっは〜〜〜〜!!!」」」」

笑いながらそいつらは席を離れていく。

「おい、大丈夫か?!」(服部)
君、どうして…」(蘭)
「…ナミさんの命令、だから?」(灰原)

俺達がそういっている間にチョッパーたちが合流した。

「うわ! 酒くせぇ!!」(チョッパー)
「どうした、お前酒まみれじゃねぇか」(ウソップ)
「服ぬいじまえよ、なんだお前待ちきれずに酒盛りでもしたか」(ゾロ)
「何のんきなこと言うてんねん!!」(和葉)
「違うわ、どアホ!!」(服部)
「あぁ? 喧嘩売ってんのか、和葉、平次」(ゾロ)

蘭たちと一緒に何があったかを説明している間に、は服を脱いだ。
右の胸あたりについた傷に光彦と元太は泣きそうな顔をする。
「それ、まだ痛いか?」という元太の言葉には首を横に振っていた。

「…あぁ、そりゃあが正しい」
「え」

ゾロの言葉に俺達の動きが止まる。

「たかが酔っ払いに絡まれただけだろう? そいつらよりナミを怒らせた方がこえぇよ」
「やけど、くんが」
、なんか問題あるか?」

ない、とゾロに視線を送るに俺達の怒りは消えていく。

「ならがたがたお前らがいう必要はない」
「はい、お待ちどう。注文の品もって来たよ」
「よぉーーーし、飯食おうぜーーー!!!」

注文と一緒にルフィたちが来た。
いいタイミングだ。




(3)コナン視点



がつがつがつがつ、がちゃん、ちゃか、ばくばくばく、ぱくん、ごくん。

「早く食え! 自分の分がなくなるぞ」(ゾロ)
「コナン、元太、光彦、歩美、哀!! お前らもぼーっとすんな、食われるぞルフィに!」(ウソップ)
「「「えぇえええ!!」」」(三人)
「早食い競争かいな」(平次)
「あーー、あたしのから揚げ!」(和葉)
「なんだくわねぇのかとおもって」(ルフィ)
「こぼすな!!」(ナミ)
「あらあら、大変ね」(ロビン)
「あたしよかった〜、今日はの隣で」(園子)
「ルフィってばなんでか知らないけれどくんの傍のものはあんまり手をつけないよね」(蘭)
「甘い、そりゃ甘いぜ。蘭ちゃん、園子ちゃん…。ちゃんに作ったデザートはことごとくルフィに食われてんだから」(サンジ)
「こらこらゆっくり食べんと消化に悪いぞ」(博士)
「そうなんだけど、あぁ…博士のスパゲティが!」(チョッパー)

大人数の食事に加えてルフィの大食いもあってにぎやかを通り越して俺達の食事は煩い。
その中で静かに黙って食べているのは灰原と俺とぐらいなものだ。
は上半身裸のままでいたらロビンの上着を借りてきている。
一時間程度飲み食いし終わったときには、食後のデザートがみんなの前に並んでいた。
そのときだった。

「あ、あいつら…!」(和葉)
「あいつら?」
「せや、くんに酒ぶっかけよった奴らや」

小声の和葉の言葉に、俺の隣にいたルフィの動きが止まる。

「ルフィ?」

真顔になったルフィがを見て、はデザートの皿にフォークを置いた。

「おいおい、ガキ。まだいたのか?」
「酒が飲み足りなかったか?」

そういいながら絡んでくるのに、ナミさんやロビンは平気な顔でコーヒーを飲んでる。

「にしてもお前らひょっとして海賊か?」
「こんなガキがグランドラインに出るなんて世も末だぜ」

ぴくり、とゾロの気配が変わっていくのが判った。

「お、おい…こ、コナン?」(平次)
「黙ってろ」

灰原も目がゾロやサンジに向けられている。
組織の、あの連中とはまた違うけれど、そいつらがまとうあの殺気のようなたぐい…。

「にしてもお前らの船の船長はどうした?」
「あぁ、あれだ。ガキだけ寄せ集めたふぬけた船長なんだろうさ」
「おいおい、それじゃあ、このガキどもが可哀相ってもんだぜ? なぁ?」

そういいながらの肩にそいつらの一人の手が置かれ、がその手をとったかと思うと。

だん!!!!

テーブルにその手をたたきつけた。

「な…っ!」
「なにしやがる、このクソが! おい、振り払え!!」
「だ、だめなんだ…このバカ力…っ」

めきっ、といういやな音を立たせながら、手がテーブルに食い込んでいく。

、お前…怒ってんのか…っ?!」

元太が恐る恐る聞くが、無表情な彼は何も言わない。

「おい、おっさん」

ゾロが口を開く。

「…さっきから何ぎゃあぎゃあわめいてんだ?」
「それに、聞き捨てならねぇな…」

サンジがタバコをつけた。

「よりにもよってうちのクルーをガキだって? うちの船長をふぬけだって?」

ぎぎぎっと歯を食いしばって痛みに耐えてる男を片手一本で制していたが手を離す。

「子供達は多いけど、こいつらは立派な海賊。それにうちの船長はバカだがな、腑抜けじゃねぇんだ…!!」

がたがたとテーブルを倒しながらそいつらの仲間がやってきた。

「ほ、骨が折れてるぜ…!」
「やりやがったな!!」


喧嘩はご法度、と言ったナミさんがを見つめる。

「ナミさん、の服汚したの、あの人たちだよ」

俺の言葉にナミさんは目を細める。

「もしかしての頭に酒をかぶせたの、あいつら?」
「うん」
「…しょうがないわね、いいわよ。暴れても」
「「「「「よぉーーーーし」」」」」(ゾロ・サンジ・ルフィ・ウソップ・チョッパー)
「よーしってなんであんたらが立ち上がるわけ?」
「こいつら、ちゃんに汚い手で触りました」(サンジ)
「ガキがどうのってうるせぇんだ」(ゾロ)
「海賊にはなぁ…引いちゃならねぇ時がある」(ウソップ)
「こいつら、いじめたし、ルフィをバカにした!!」(チョッパー)
「ルフィ」
「なんだ、コナン」
「こいつら、にボトルの酒かぶせたんだけどさ」
「…おぉ」

いつもよりも低い声だ。

「そのときに、嗤ったんだ」
……俺の仲間を嗤って、お前ら覚悟、できてんだろうなぁ!!!

そして乱闘が始まった。

「工藤、お前、これ…っ」
「いいか、服部。これが海賊なんだ」

少年探偵団たちを守っているロビンとをよそに俺達は小声で言い合う。

「蘭ちゃん、これ…」(和葉)
「自分達がバカにされてもあまり怒らないし、規律はたいてい守るけれど…」
「仲間、バカにされて怒らないクルーはいやしないのよ。うちには」

ロビンの言葉の後にナミさんがそういいながら、博士に目で合図する。
テーブルに食事の勘定を置いて。

「さ、子供達つれて先に船に戻るわよ。騒ぎ聞きつけた海軍が来ても逃げられるように準備」

俺とは灰原の目の前で、が掴んだ酒瓶が見事に相手の顔面にヒットする。



規律は守る。
けれど仲間がバカにされたり、自分の中の何かが傷つけられたら、それはもう烈火のごとく怒る。

これが麦わら海賊団の喧嘩。


 

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