あなたの欲望を叶えましょう。
あなたの願望を叶えましょう。
あなたからの
あなたがこれから生きる世界は、かつての世界よりもある意味過酷で残忍でもあるでしょうが、その世界の海を己の意志で航海する力を得ています。
ムーンセルに示されたあなたの
ただ、その力はまだ原石です。力は鍛えなければ、それで終わり。
かつての世界のように踏みにじられるか、利用されるか、蹂躙されたままでいられるかはあなた次第。
あぁ、苦情は受け付けません。あなたがその世界で得た力はすべてあなたの心の奥底から拾い出した、あなたが望む力も含まれているのですから。
その力と、あなたの意志力で頑張って生きてください。
それこそがあなたが示した欲望の全ての原点。
全
記憶の混乱と成長過程の記録の為、転生直後の年齢を低年齢に設定。
習得
情報ログ公開,個人情報をコマンド出現に設定。
かつてと呼ばれた魂を「世界」に誕生させます。
――ストーン・サークルと血走った眼をした男
――満月と振り上げられるナイフの銀に目を奪われた。
――痛みと悲鳴と血。
――炎。
――光り輝く…。
【ここ】どこ?
暗闇の中で目を覚ました
記憶が相当混乱しているのを自覚する。
深呼吸して落ち着いてから、もう一度ゆっくりと瞬きをした。
あぁ、そうだ。もう『
もう『
でも
ちゃんと
ゆっくり身体を起こした。
…あぁ、そうだ。【ここ】には電気はいっさいないんだった。
そこまですぐに思い出すけれど、どうも記憶が混乱している。
原因は
あるいは覚醒? いやそれは違うだろう。
そこまで考えて起き上がる。
濃厚な自然の気配。
洞窟特有の湿気も肌寒さもない。
もう一度だけ深呼吸をすると、頭の中と目の前にゲームのコマンド画面のようなものが出現する。
これは
□() 6歳 Lv5
HP:56 MP:56 命運:9
インプラント,魔晶合体,
状態:失声症
ずらずらと出てくる自分の情報とともに【ここ】にいる経緯も含めた過去が流れ込んでくる。
正確には「きちんと思い出した」ってことだ。
そしてその後、外国の遠縁に養子縁組をしようかというときに【騒動】に巻き込まれてしまい、きちんと法的な措置を取らなくて。
本当は便宜上、苗字はあるのだけれど【ここ】に来てしまった時のことが衝撃的で、同じ親戚に対する拒絶と絶望に自分で否定してしまったので苗字が自分の中から消滅した。
…まぁ子供の
DNA検査して親子と認められたけれど、意地になった父親は態度を硬化。
もともとは父親の血筋からなる特徴なのに、父親自身が否定したってことで母親側がブチ切れ。
そうして成長していった
小さく息を吐き出す。
両親に「要らない」宣言された
トレジャーハンターをやってる叔父は、仕事の合間に
子供好きとは言えなさそうな外国人の男たちが、気を使っていろいろと子供にできることを教えてくれたのは素直に嬉しかった。
片言の英語だったけれど、彼らは気にしなかったから。
本当なら落ち着いて保育園か幼稚園に入れられるところだったのだけれど、
で、ようやく見つけた養子先の養父母の親類―その人物と
こうしてゆっくりと考えてみれば、もしかしたら叔父はその人物のことをよく知らなかったのかもしれない。
けれど知っていたのかもしれない。
そのあたりの事情は知らない。
だって子供の
叔父の姿を覚えているのは、笑顔で
そしてその次の日の夜には儀式が決行されたこと。
儀式に触発されて出現してしまった【何か】を、傍にあった金属に入れて同化させてしまった。
暴走はそれだけにおさまらなくて、
その儀式自体が結構大規模で、使われていたエネルギーが半端じゃなかったから、こうしたことが起きたんだっていうのは【ここ】で教えてもらった。
ついでに言えば、そのことが引き起こした例外はこれだけに収まらないんだけど…うん…この世界、
思い返したり、自分の前にあるコマンド画面の文字を見て、今ようやく思い出した。
【ここ】の情報はあいにくとそのゲームの中にはなかったけれど、住人の大半はそこに出てたし…。
あぁ
はじきだされた【ここ】でも
傍にあった金属っていうのが、儀式の要に捧げられた
なので
…こうして客観的に
まぁ
コマンド画面に描かれている「失声症」の方は、叔父や大人たちに裏切られて殺されかけた精神的なものなんだろうなと自分で推測する。
もう少し境遇的にどうにかならなかったのかな、と
よし、記憶の統合も覚悟も完了。
くわぁ、と大きく欠伸をすると目の前のコマンド画面がぶれて消えた。
それでも脳内にコマンド画面は常に展開されている。
ごしごしと瞼をこすった。
今何時かどうかも【ここ】には時計がないから解らない。
けれど、そんなにも遅くもないはずだ。
ぼくは、かぶっていたキルトを畳んで足元の方に置いておいた。
ぷにん、と不思議な感覚がぼくの足に触る。
「おはよ、」
無色透明なそのぷにぷにが、ぼくの腰から下にじゃれついてくる。
ぼくは
(おはよう、もっちぃ)
ぷにぷにした身体をしているし、正直どこか目でどこが顔かわからない彼…たぶん、だ。その性別がちゃんとどうなのかは知らない…はぼくの
一回使うと、その日数時間は対象相手と頭の中で会話できる。
声を失っているぼくとっては、ものすごくありがたい。
感情や思考をダイレクトに伝えるから、言語の壁もない。少なくとも
彼は大きなゼリー状の球体で、動物でも人間でもない。
【悪魔】
そう呼称される生命体。
名前はモチマル。
愛称もっちぃ。
お餅みたいにやわらかい身体をしているのと、たいてい丸っこくなってるから「モチマル」だ。
安易な名前だったけれど、本人が「それ、いい」と言ってくれたのでそうなった。
勿論、この「いい」が「要らない」という意味合いじゃないことはちゃんと確認してある。
もっちぃは最初は赤ん坊の
それに引かれる形で憑りついてたんだけど、ぼくが持ってるエネルギーがあんまり良かったので悪さをして体調でも崩してエネルギーの質が悪くなっても嫌だから、陰ながら
そう片言の日本語で教えてくれたのは、つい昨日の事。
それって悪霊じゃなくて守護霊なんじゃないの? と今では思う。
初めて彼を見たとき、
ただ彼の片言の言葉を聞いて、その固まった感情が一気に砕けたのは覚えてる。
親にも家族と思っていた叔父にも見捨てられた(と、思ってる)
最初はもっと小さかったのだけれど、
もっとも大きさ自体はいろいろ変えられるみたいだ。
もっちぃはひとしきり、ぼくの身体にじゃれついてから数回飛び跳ねた。
ぷにゃん、ぷにゃんっていう音が聞こえてきそうだ。
「きがえたら、あさごはん」
(うん)
着の身着のままでずっと軟禁されてるわけじゃない。
ぼくは寝間着代わりに着ていたぶかぶかのTシャツのような服を脱いで枕元に置くと、用意しておいた自分の服に着替える。
Tシャツはちゃんと畳んだ。
もっちぃはぼくがちゃんと着替えられたか確認すると、先導する様動き出したのでぼくもそれに続く。
ぼくは使わせてもらっている場所は、一番小さな穴だ。
そこから出るとすぐに大きな空間が待っていて、熱気が漂っている。
ここは24時間、ずっと地霊たちがハンマーをふるって何かしらの武器を延々と作り続けている。
そんな場所だ。
咄嗟にまた
子供のぼくと同じぐらいか、ほんの少し身長が高いだけなんだけれど子供ではもちろんない。
横幅は広く、腕なんか筋肉の塊だ。
赤銅色の肌と長いひげが特徴のドワーフと呼ばれる地霊たちが、笑いかけてくれる。
言葉の意味合いは
【ここ】は魔界と人間世界の間にある、異界。
異界としての名称は常若の国で、一つの大きな島国そのものぐらいの広さがあっていくつかの妖精の丘が存在する場所。
住んでいる人間は非常に少なくて、いるのはかつて神様だった妖精、地霊たち。
妖精とか地霊っていうのは【悪魔】の種族名みたいなもの。
天使も神様でさえも、いっしょくたに【悪魔】って呼んでいるのが基本。
…ゲームでさんざんお世話になった存在が、ぼくの目の前で息遣いをしているのがすごい、というか感動するんだけど…これって現実だからきっと慣れていくんだろうなぁ。
今、ぼくが生きているのは【真・女神転生】の世界。
【悪魔】と呼ばれる存在と人間が入り混じったオカルトやファンタジーが、裏社会にも浸透してい世界だ。