どんな経緯があったにせよ、サンジが簀巻き状態で僕らのいる場所に放りこまれた。
広くて円形のその場所の一角にはなぜか畳とちゃぶ台、あと、箪笥があってそこでポーカーをしてたわけだけど。

「サンジ君!」
「な、ナミさん…。なさけねぇ、こんな姿で…」

見れば足が…。
傷がひどくなってる。
僕はとっさに傍にあった箪笥の引き出しを引っ張って中からきれいなタオルを何枚か見つけると、備え付けのポットのお湯で一枚ぬらす。
熱湯がかかろうが知ったことじゃなった。
本当にとっさだったからだ。
すぐに冷えたその濡れタオルで足の傷をぬぐってもう一枚のタオルを包帯代わりにしようとしたとき。

「な〜にをやってんだ!!!」

今までナミさんにじゃれついていたそいつ、トランプ海賊団のベアキング。
頭に熊さんをかぶったあいつの腕が僕の身体を捉えていた。
まずいっと思った瞬間。

「やめろ! てめぇ!」
っ」

僕の身体は吹き飛ばされた。
とっさにこちらから飛んでダメージを半減させたかったけれど、この子供の姿じゃそうもいかない。
痛みと衝撃。
呼吸が一瞬、止まる。
なにか、口論してるけど聞こえない。
くそっ。
…って僕はなんで悔しがっているんだ?
死も生も、同等の価値じゃなかったのか?
何の為にサンジを助けようとしてる?
別に僕は彼の…。

「くそ美味いだろう? 俺の料理」「ちゃんは偉いなぁ。見習え! 毬藻」「おー、手伝いありがとう」

サンジの言葉と声と仕草が頭に浮かぶ。
別に彼は僕の仲間じゃないけれど、おいしい料理を食べさせてくれた人だ。
恩があるんだ。それだけだ。
僕は強く思う。
後々、それは自分にそう言い聞かせて思い込もうと自己暗示していたにすぎなくて。





僕はもうこのときから、麦わら海賊団を特別視していたのだ。




一瞬だけ意識が飛んでいたかと思ったら、そうでもなくて身体を起こせばいつの間にやらでかい大砲が用意されていた。
大量殺戮兵器・キング砲。
「いよいよ、俺たちの伝説が始まる」
自画自賛の熊はおいとく。
立ち上がると、背中が痛い。
けれど僕はその痛みを無視して立ち上がった。
あ、そうだ。
麦わら帽子。
僕は手を頭に持っていく。
少し汚れてしまった程度でよかった。
これはルフィの宝物だから、ルフィに無傷で手渡さないと。
あぁ、それなら僕よりもナミさんに渡しておいたほうが、いいかな?
歩くと痛みが増すが、それも無視。
封印をといても僕は自分の身体のステータス強化のスキルを持ってはいるけれど、回復系のスキルはもっていない。
道具も何もないし…ペルソナを呼ぶ、としてもこちらの様子を少し伺っている、あの顔もファッションもおかしな剣士の動きが気にかかる。
呼んですぐにこれ以上のダメージもらったら動きにくくなることうけあいだ。

「サンジ君」
「…」
、ちゃん。ごめん、大丈夫、だったかい?」

頷く。

「サンジ君…まかせて。あいつら馬鹿だからあたしがうまく…」
「そうじゃないんだ。俺だけの力でナミさんたちを助け出したかったんだ…」
「サンジ君…」
「そんで「ありがと〜、サンジくぅ〜んっ」て抱きつかれてあ〜んなことやこ〜んなことに持ち込みたかったんだよ〜〜〜〜!」
「…あんたね…」
うわぁ、いろいろ台無し…ってそういってる場合じゃない!
僕はとっさにサンジをかばう。

「貴様ぁっ!」

今度は箪笥にたたきつけられた。

! ちょっと! あたしの弟になにすんのよ!!」
「生意気な弟には愛の制裁が必要なんだよ!」
「てめっ、一度ならず二度までも!」
「うるさい! そんなことよりも貴様、俺のフィアンセとどういう関係だ!!」
「滑らかなお肌にサンオイルをぬって差し上げるような関係だ」

次の瞬間、サンジの身体はそのまま壁にたたきつけられ、床に寝かされた。
その上を、あの丸い身体の奴が踏む。


どくん。

それを見た瞬間、僕の中の何かが動いた。

どくん。


鼓動。
強い感情の波。

どくん。

脈打つ波動がささやきかける。

許すな。/どくん。

怒れ/どくん。

拳を上げろ/どくん。


マガタマが、ささやいている。
封印をとけと。



僕ははりつけにされていくサンジを見ながら、自分の中のそれを抑えるかのように麦藁帽子をかぶりなおした。



2007.04月頃UP

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送