「ナミ、の様子どうだ?」

ウソップの声に振り返ると女部屋のそばにウソップとルフィが立っていた。
ゾロの奴は今は見張り番、サンジ君は食事の用意をしてくれている。

あれから、ねじまき島は崩壊した。

ルフィがあのベアキングを放り投げ、撃たれたキング砲の玉を使った『ゴムゴムのスクリュー』はベアキングごと、島の螺子まで壊してしまった。
あたしたちはウソップの機転でメリー号に大きな布で作ったパラシュートで海に戻った。
あのダイヤモンドクロックは惜しかったわ。
にもあの音色は聞かせたかった。
アキースのオルゴールだって、この子は聞いていないのに。
(そのアキースはそこの島の島長の息子だったようだけど、最終的にはボロードと泥棒兄弟を続けることを自分で選択していた。
島は島の人間の技術があれば、また新しく作り直せる、ということだ。
ついさっきのアキースとボロードの二人とは別れたばかりだ)

「うん、弾は貫通してないから、きっとあたったときの衝撃だと思うの」

本来ならば医者に見せなくてはと思うのだが、いかんせんうちのクルーの中に医学をほんの少しかじっているのはあたしだけ。
それでも付け焼刃だ。

「丈夫なやつだよなぁ、弾当たっても死なないんだから」

アキースは服の下に鉄板を仕込んでいたらしいけれど、は違う。
生身で当たりに行ったと思い知ったときはぞっとした。

「この子、自分のこと『悪魔』だって言い張ってたでしょう? あたしとしちゃそんなの話半分って感じだったけれど」

たとえ妖精が出てきたとしてもそんなもの眉唾だもの。
信じるほうがおかしい。
妖精が嘘つかないなんて誰が決めた?
もしかしたらこの子だってあの妖精がそういう風にわざと思い込ませているのかもしれないじゃない。
だけど。
緑色とも青とも思えるきれいな光を身にまとい、刺青のようなラインを浮かび上がらせた

「ものすごく丈夫だから『悪魔』って言ってんのかもしんねーな」
「どっちでもいーさ」

ルフィはそう言うと、あたしに断りを入れてから部屋に入っての顔を覗き込む。

「そんでこいつが無事ならいい」
「そうね」

あたしはしみじみそう思いながらウソップと笑いあった。

「あたし思うんだけど、あのとき、この子は封印をとこうとしてたんじゃないかしら?」
「あ? なんでそう思うんだ」
「この子、話したのよ」

そう、子供特有の柔らかな声だった。

「話したって…ってそういや自分の力を封印したから声が出なくなった、みたいなこと言ってたような言ってなかったような」
「俺も聞いた!」

煩い。
まだは寝てるのよ?!

「なんて言ったんだ」
「あ、「捨てろ」って。俺あんとき、面白そうなの発見してよ。火つけたら皆慌ててよ〜。「捨てろ」ってにも言われて捨てたら爆発した」
「「あんときのか」」

あのときのダイナマイトだ。
間違いない。

「あたしはまた違うわよ。倒れる直前に聞いたの」

寝ているの顔は、本当に子供でこの子が言うような『悪魔』とも妖精が言ったような『大悪魔』とも思えない。
もしもそうだとしたら、こんな優しくて自分ばかりを犠牲にする、愛しくて哀しい悪魔はいやしない。

「「ルフィの帽子」って」
「へ?」
「俺の、帽子?」
「そう「ルフィの帽子」ってこの子、自分が飛ばされて大変なのに、心配は自分じゃなくてあんたの帽子のことだったわ」
「…そっか」
「……人の心配も大事だけどよ、自分のこともちゃんと見なきゃ、いけねーんじゃねーか? 

ウソップもそういいながら、寝ているを覗き込む。
そのウソップの顔を押しのけて、じーーーっと自分だけの顔を見ていたうちの船長は、にかっといつもの笑顔を見せた。

「早く起きろよ? 。サンジが美味い飯食わしてやるってよ。ゾロも手合わせしてぇって言ってっから」

そしてルフィにしてはものすごく優しい手つきで頭をなでたのだ。

「ウソップも面白いもん作ってるし」
「おう、お前が起きたら一番に見せてやっからな」

ウソップも笑う。

「俺も待ってる。特別にメリーの頭の上に座らせてやるぞ」

ちょっと驚いた。
メリー号の船首は、ルフィのお気に入りであそこに自分以外の人間が座ろうとするのをルフィはひそかに嫌がってる節がある。
ま、あんなとこに好んで座りたがるのはルフィぐらいしかいないからいいのだけれど。

「あたしも待ってるわ。封印とかしてもう一回、貴方の声聞かせてもらいたいもの」
「そうだな、俺も聞きたい」
「だめだ。一番は俺だ。俺は船長だぞ」

ひとしきり、あたし達はそういいあって、笑いあって、笑顔をの寝顔に向ける。






早く起きて、傷を治して、封印をといて、その声を聞かせてほしい。




その後。
一日程度寝込んでいたは起きたのだけれど、封印はといてくれなくて。
それでも今日もうちの船長に抱えられたまま、おとなしくメリーの頭に座っている。
…いつか、ちゃんともう一度の声は聞きたいわね。
脅してみようかしら?

なんていうことは、クルーの皆にも、秘密秘密☆

2007.04月頃UP

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