「封印されて経た今の僕の体格はとても細くて小さい。
ゾロいわく「なんでそんなにほそっこいのに俺の(手加減したとはいえ)刀を受け流せる?!」というぐらいだ。
(力だけじゃなくてタイミングと今までの戦闘スキルでなんとか誤魔化しながらゾロの訓練のお相手やってたりします)
このメリー号のクルーの胸の辺りに頭が来ればまだいいほうな僕の身体は、ナミさんにでさえ抱きしめられたらすっぽりとその身体を胸にうずめられてしまう。
まあ、この程度にミニチュアサイズの僕なので隠れてこっそり降りてしまえばいいのだけれど、散々お世話になっておいて、黙って出ていくのは気が引ける。
ようやく島についたので僕は別れの手紙と挨拶をナミさんに手渡して呼んでもらうと、案の定皆顔をしかめて、「ルフィ」と船長を呼んだ。
ルフィはその手紙を読んで、「まーだお前こんなこと言ってんのか? そんなことよりも遊びに行くぞ!」ってきっぱり言い切ると僕の手を掴んでメリー号を出た。
ちなみに手紙はぐちゃぐちゃになっていた…ひどい。(でも顔は無表情のまま)
で、結果僕はいま。

「しっしっし、これ面白ぇなぁ。見てみろ、

ルフィの膝の上に座らされ(強制)、ルフィが拾ったおもちゃを見せられている。
本当は釣りに着たんだけど、こんな浜辺で釣りなんかできるわけがない。

「もー、の嫌がることはしないのよ、ルフィ〜」
「なんもしやしねーって〜」

後ろでは浜辺で水着姿のナミさんが寝そべり、ゾロがトレーニングとばかりに腕立て伏せ(背中にいくつか大きな袋を重ねて)、サンジがなにやらオイルをもってナミさんに話しかけているのがわかる。
僕は見せられたおもちゃが被っていた砂や汚れを手で払う。
ってこんな話あったけ、『ワンピース』に。

「これまわすのかな?」

ルフィの言葉にこくり、と頷いて僕がまわすとゆっくりとプロペラが廻る。

「ムシニンゲンにも見せたいな。もう出てこないのか?」

僕は小首をかしげた。
いや、実際のところピクシーがどうやってこちらの呼びかけに応じる形ではなく、勝手に出てきたのかその仕組みがわからない。
こちらの呼びかけに彼女はただ「こっちでちょっと計画中のことがあるから、呼ばないでね〜」と言ってきた。
計画中ってなんだろう? 仲魔の皆はなにやら全員でごそごそとやってるらしいけれど。
まあ、後で聞けばいいか。
「ふぅん、じゃあ出てきたときに見せてみようぜ。面白いしなぁ」
こくり、と頷こうとして僕は止める。
…今の口ぶりからしたらずっと彼らと居るようになってしまうじゃないか。

なんとなく真剣な口調だったから僕は見上げた。
「お前は俺の仲間だ」
首を横に振ると「ん〜」と顔をゆがめる。
「頑固なヤツだなぁ。でももう俺が決めたから、お前は俺の仲間だ
…いや、お前が決めても僕の意思は違うし。っていうかどっちが頑固だよ。
裏手突っ込みを思わず入れそうになるのをとめて、僕は首を横に振ってからルフィから視線をはずして、おもちゃを見つめる。
薄汚れた貝殻の屋根の風車がゆっくりと廻っている。
僕の視線につられるようにルフィもおもちゃに目をやったんだろう。
「こんなのたくさんあったら面白いだろうなぁ…ん?」

ん?

僕とルフィは顔を上げた。
すーーーーっという静かな動きで見知った船が目の前というかあれ…メリーじゃない?

「うおぉ、やっぱゴーイング・メリー号は最高だなぁ、すげぇかっこいーしなぁ。お前もそう思うだろ、

え? かっこいいよりも可愛いだろ。メリー号は。
僕が見返すとルフィは唇を尖らせた。

「違うぞ、かっこいいんだ」

あれ? 今、なんか会話できてなかった?

「やっぱいいよなぁ、俺たちの船は。おーい、皆も見てみろよー」

でもどうもほかの人たちは聞いてないみたいだ。

「なー、見てみろよー。やっぱかっこいいよなぁ?」
「ってさっきからお前何言ってんだよルフィは…ってんがー〜〜〜〜〜〜〜〜〜?!!

出て行くゴーイング・メリー号。
乗ってる人員は…あれ?

「っ!」
「ぁっ!」
「あぁ!!」
「「「「ゴーイング・メリー号!!!!!」」」」

「やっぱあれだな、あの海賊旗がいいよなぁ? そう思わねぇか? 

いや、そうではなくて。

「馬鹿野郎、何のんきなこと言ってんだ!!」
「盗まれたんだよ、泥棒に!!」

「なに〜〜〜〜〜〜!!!! 盗まれた〜〜〜???

やっぱそうなのか?

「「遅ぇよ!」」

ウソップとゾロの言葉にルフィがあわてる。
僕がルフィのひざから飛び降りると、「くぉらどろぼーーーーーーっ!!!」とルフィのゴムの腕が伸びた。


けど。


「んわぁっ」

届きませんでした。
「カヤからもらった魂のゴーイングメリー号がぁっ」(ウソップ)
「泥棒のあたしから盗むなんて冗談じゃないわ!」(ナミさん)

「「「「「返せ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」」」」」

あ…行っちゃった…。
僕はルフィから手渡されたおもちゃを握り締めてメリーを見送った。

「こうしちゃいらんねぇ!」
「すぐに服をなんとかして、小船でもいいから見つけてくるのよ! あんたたち!!」
服とか大きなお金とかは全部船に積んだままだったので、水着姿のナミさんがそう命令した。
ふ、服屋さんって今の時間帯に開いてるのかな…。
それに僕はともかく、ルフィたちは賞金首…って…何、僕も彼らの心配をしているんだ!
いい機会じゃないか!
この島に僕をおいて行って貰おう!
そう意を決して僕が顔を上げるとナミさんが怖い顔で僕の両肩をつかんだ。

クン。服、手に入れてきてくれるわよね?

まともな服を着ていたのが僕とルフィだけで、ルフィたちはどうやらすでに船を捜しに行った様で、ナミさんはビキニ姿で町の中心部にはいけなくて……。
僕は静かにはい、と頷いた。



けして。
そう、けしてナミさんが怖かったわけじゃないぞ。

本当だぞ!(涙目)




でも結果として結婚式用の貸衣装屋さんしか見つからなくて、ナミさんにはウェディングドレス、サンジにはタキシード、ウソップは神式の衣装に、ゾロには紋付袴しか渡せなかった。
そしてもちろん、僕は船から下りられなくて一生懸命小さな船をルフィと一緒にこぐことになって。



一緒にゴーイングメリー号を探す羽目になった。

2007.04月頃UP

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