我は汝、汝は我……我は汝の心の海より生まれしモノ…悪魔王サタンなり!!!!

確かにから光を伴って現れたのは化け物だった。
悪魔ってそう言っているし、その姿も御伽噺に出てくるような悪魔そのものだったけれど。
俺ぁ知ってる。
確かに恐ろしい怪物ではあるけれど。
その化け物をその身体から出したがとてつもなく他人に優しすぎる大馬鹿野郎で、
仲間の俺たちを間違っても攻撃するような奴じゃないってことを。
だから、俺は迷わず炎の中に飛び込んだ。




俺はローグタウンでイカス買い物を済ませると、何人かの子供たちと知り合いになった。
海賊の俺にいつ来たのか聞いてきて、そして人を探してるって言ってきた。
容姿を聞いて、そんで名前を聞いて俺は驚いたぜ!
新入りで子供で、妖精とダチなのことだったからな!
付き添いで一緒に来た大人たちは海軍の受付みたいなところに行っていて、自分たちは自分たちでできることをしようって町の人間に声をかけてたんだそうだ。

「にしても、なんでのこと探してんだお前ら」

俺が知っているっていうのもあって、俺はその子供たちからの過去を聞いちまった。
聞いて、俺は己の拳を、握り締めた。
は、自分からこの子達の犠牲になったんだ。
いや、犠牲っていうのは語弊があるかもしれねぇけどよ。
話をまとめると、こんな感じだ。
ひでえ環境の孤児院で、大人たちの目を盗んで子供たちを守ってきた、自称悪魔のと、身体は弱いけれどまるで天使のような女の子ヒメ。
そしてその二人を中心になんとか生活していたこいつらに転機を与えたのはヒメの容態の悪化と、ちょうどその頃に来た一人の金持ち。
その女の名前はマダム・バタフライ。
それが本名かどうか知らなかったが、後になって大人たちから聞いた話は、そいつがとんでもねぇ本当に悪魔のような女だってことだ。
何人かの孤児たちを金で養子にするんだが、その子供たちは何年後にはいつも亡くなっている。
噂じゃ虐待かあるいは…って話が出ることは出るんだが、その女の金と権力(海軍の要人に知り合いがいるんだそうだ)でもみ消されていて、そのときにその女はと取引をしたんだそうだ。

『僕が貴方のところに行けば、子供たちやあの子に対して援助していただけますか?』
「えぇ、もちろん。貴方があたしの物になっている間、あたしはお金を送りましょう? そうすればあの子も手術を受けられるでしょう? この子供たちももっと今よりもいい生活ができるように手配してあげてもいいわ」
『契約して、くれますか』
「えぇ、もちろん」

そのやりとりを見ていたそのときは意味はわからなかったが、今ではこいつらは理解している。
が、自分たちの生活とヒメっていう子の治療の為に己を金に変えた。
3000万ベリーが孤児院に入った。
大半が院長の懐に入り、その一部でヒメが病院に入院し手術を受けた。
何度が受けなければいけない手術だと聞かされても、その女の子は「がんばる」と言ったそうだ。

「…ヒメは、ニーネのことを怒ってたの。ニーネと別れるときも喧嘩してたの」
「……ニーネは、いつも自分は悪魔だから、人間じゃなくて強いから、だからへいき、なんて言ってたの」

言葉にして言うのではなくて、文字でそう伝えたりしあっていたらしい。

「ヒメは、ニーネのこと大好きだったから、一緒にいてほしいって」
「ニーネもヒメのこと大好きだったから、生きていてほしいって」

そして二人は別れた。
ヒメはその後、二度目の手術が遅れてしまったために亡くなった。
俺はその遅れた真相を聞いて、愕然とした。
大人たちが話しているのを聞いたという子供たちの言葉。
孤児院は人身売買の罪で海軍の手入れが入り、院長は捕まったが裁判もせずに投獄された。
だからマダムは最初の金を支払っただけで約束した援助なんか一度もしていない。
子供たちの環境も何年かはひどいものになったそうだが、こいつらはそのことは「どうでもいい」と言い切った。

「ヒメとニーネのこと考えたら、へのかっぱだもんね!」

にっ! と笑ったこいつらは強いと思う。
そしてヒメが入院していた病院の担当の医者。
こいつが金をもらってあえて手術を遅らせたのだ。
そのせいでヒメは死んだ。
孤児院がごたごたした後にその医者も捕まったが、そのときにマダムバタフライの悪事も多少、ばらした。
今はその話を聞いた理解のある大人たちが子供たちを守っていて、そして自分たちを連れてこの町に来てくれたということだ。
他の町や村ではマダムが知り合っている海軍の要人の名前だけで知らない顔されたから、この町のスモーカー大佐ならどうだろうということだった。
行く先々の村や町でこいつらはのことを聞いたそうだ。

「それで、お前ら、を探してるんだな…?」
「うん、あの女、きっとニーネにヒメが死んじゃったの、教えてないんだ!」

自分は『人形』だと言ったという
ぎり、と唇をかむ。
そういう大人が、をあんな風に、したのか?
けど、けどなぁ、
お前…っ。

「よし、判った。俺様がお前らをに会わせてやる!」

わぁっと歓声を上げた子供たちと俺の前に、血相を変えたナミが飛び込んできたのはそういったすぐ後だった。



それから俺たちは子供たちと一緒に聞き込んでマダムバタフライの今宿泊してるホテルを聞き出すと、後から子供たちに海軍のところに行ってる大人を連れてくるように言うと、俺たちは走り出した。
途中、ナミの姿を見つけたサンジが合流したので、走りながら俺が手短に説明すると、二人とも眉をしかめた

「…自己犠牲にも、ほどがあるってもんだぜ…!」
「……ちゃんと、叱ってあげないと…」

ホテルの中までは入れたが、その後はもう護衛の連中と鉢合わせして、まあ、そこにはサンジを残して俺とナミが先行した。
そこで見たのは、殴られただろうあざを作って血を吐いたと笑う男女。

うるせぇえ!! 汚い手で俺の仲間に触ってんじゃねぇえええ!!!

ルフィなら、絶対ゴムゴムの技を飛ばしてるが、俺はそこまでできやしなかった。
ヒメの死を知らせると、うつろな金色の瞳が大きくなって俺の顔を凝視する。
あぁ、馬鹿野郎、やっぱ教えられてなくて騙され続けてたのかよ。
泣きそうになるのをこらえた。




そしてそれから、火炎がその場を支配した。




大騒ぎのホテルから、どさくさ紛れに出てくると子供たちが寄ってきた。
の傷はあの悪魔を呼び出した余波か、多少は治っているけれど、それでも少しばかりあざが残っている。
ちょっと顔色は悪いがまぁ、大丈夫そうだ。よかった。

「うわ〜〜〜〜ん、ニーネ…っ!!」

子供たちは、皆にすがりついた。
肉つきがいい連中が細いの身体に飛びついたからしりもちつきそうになるのをサンジが支える。
最初は喜んでいた子供たちだったが…。

「ニーネ、…ニーネ、どうしてぴかぴかおめめじゃないの…」

ルフィと同じことを子供の中の誰かが言った。
喜びの涙が止まる。
金色の瞳はうつろで、ただ子供たちの頭をなでている。
顔は笑っていない、泣いてもいない、懐かしいそぶりもみせない無表情。

「わかれる、まえは、ちょっ、とでもわらったり、してくれだぞ…っ、わかれる、まえは、目が、泣いて、たり、して、ぐれだ、ぞ」

子供たちは泣き始めた。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
ニーネの心を壊しちゃった。
壊れちゃった。
大人たちも悲痛な様子だった。

クンは、専門の医者に見てもらおう、さぁ、クン…一緒に」
「なぁ、おっさん」

俺は手を伸ばしてきた大人にそう声をかける。

は俺たちの仲間だ」

ルフィならそう言う。
俺もそう思ってる。
きっと皆もそうだ。
小首をかしげては俺の顔を見つめた。

「き、君らが…?」
「海賊だけどねぇ」

ナミがの頭をなでて、首を横に振ろうとするのをやめさせる。

「か、海賊が何で…」
「あぁ、うちの船長がちゃんに勝手に約束しちまったのさ」サンジがタバコに火をつけた「の目をぴかぴかにしてやるってな!」
「船医もそのうち見つかる。だから、俺たちがこいつを連れて行く」

そうだどんな医者だって、こいつには匙を投げるだろう。
なにせ壊れた、他人にだけ優しい悪魔っ子の心をその大元から叩きなおさないといけないからだ。
そんな奴の心を戻すのは、そんなことできるのはルフィと俺たちしかいねぇだろうが。

「本当に?」

子供たちが泣きながら俺たちを見上げる。

「あぁ! 本当だ!」
「ニーネ」

はその白くて細い指で泣いてる女の子の涙をぬぐう。
その様子を見てナミが決意のある顔で笑って見せた。
子供たちは頷きあった。
涙を袖口やらでふくと、一人が何かをに手渡した。

「ヒメと俺たちのタカラモノ」

の手の中には小さな石のペンダントがあった。

「覚えてるだろ、それ…ニーネがヒメにあげたプレゼントだよ」

頷くにその子供が続けた。

「ヒメ、ずっとそのタカラモノ持ってたんだ」
「一緒に連れてって」
「帰って、くるよね。ニーネ僕たちのところに、帰って来るよね」
「あぁ、任せとけ!」

の代わりに俺が言うとサンジが続ける。

「グランドライン一周する頃にはも治ってんだろ! そうしたらお前らの住んでるところにも行ってくれるようにうちの船長にいっとくから」
「あたしからも言うわ。たぶん、ごねないと思うから、安心して」

はただ見つめるだけで、やはり何も言わない。
ただどこか戸惑ったように(少なくとも俺はそう感じた)そのペンダントを見て、手のひらの中にそれを入れて握り締めてる。
そして顔を上げて、子供たちの頭をなでた。
それがと子供たちの二度目の別れだった。
一度目は心を壊してしまう別れだったけど、今のこの二度目の別れは心を治す為の別れになるのは間違いない。
ルフィがそれを決めていたから、もうそれは絶対だ。



はこうして俺たちの元に戻ってきた。
あの悪魔がどうのとか、そういう類のことはおいといて説教タイムをしようとしたのだが、いかんせんナミが嵐がどうのとか海軍のことでまぁごたごたがあって。
俺とナミはは船に乗り込み(乗り込むときにひと悶着あったが、のあれ…ペルソナ? がまた炸裂した)、ゾロとルフィを迎えに行ったサンジが海軍においかけられながらやってきたりって、本当、いろいろあって説教どころじゃなくなった。

いや、マジで。

だってナミが山を船で登るとか言い出すし、海王類の巣とか大嵐とか、ほんと、いろいろあったんだよ…!(泣)


2007.04月頃UP

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