あんまり派手にペンキがついたから、クロッカスさんのところのお風呂を借りて身奇麗になっている間に、最初の航海の行き先が決まったらしい。
なぜだかルフィが捨てたはずの男女のペアが一緒にいる。

「おう、。こいつら送ってくからよ」

船長がそう決めたのなら乗っていくだけの僕には反論は許されない。
こくり、と頷くとルフィはいつものようににかっと笑う。

「よぉし! んじゃ行くぞ、ウイスキーピーク!!」

ウイスキーピーク? なんかあったような気がするんだけれど、本当、頭の記憶の奥底に行ってしまってなかなか思い出せれないな。
何があったっけ。
僕はルフィに引き寄せられて船に乗り込んだ。
双子岬から出てすぐの夜の航海。
晩御飯やはりおいしくて、僕は後片付けを手伝って、それから僕がくじで負けて夜の見張り番になることになった。
船に乗せてもらっている以上、こういうことはしておいたほうがいい。
こくり、と頷くとウソップが小さなフライパンとお玉らしきもので作った「警報君1号」というのを渡してくれた。

「何かあったらそれで音出して俺たちを起こせよ」

判った。

「そんなんしなくても封印といて、声出せるようになれよ〜、

ふるふると首を横に振ってから、僕はそれを腰にぶら下げてもらった。

「よーし、これでいいだろう。? ありゃ、これはなんだ?」

銀時計に気がついたウソップの指が、ヒメのタカラモノを指差すから。
僕はそれを守るように手で隠してしまった。
…いや、なんか、そう…仲魔が触れるのはいいのだけれど他の存在が触れるのは、こう抵抗があるのはなぜだろう?

「あ、なんかのタカラモノみてぇだぞ」

ルフィの言葉に首を縦にすると「そっか」とただウソップはそれ以上、突っ込まないでくれた。
僕は毛布を一枚背負って、メインマストの上の見張り台まで行く。
一応そこにおかれている双眼鏡を確かめて、毛布をかぶった。
海と空の世界を一望できる。
僕はヒメのタカラモノを触れながら、周囲をぐるりと見渡した。

「ルフィ!!」

ん?
ナミさんの声に気がつくと、ルフィがゴムの手を伸ばして一気に上までやってきた。
なんだ。





ルフィの目が僕を見つめるから、僕も見返す。

「ちょっと毛布よこせ」

へ?
そう言うと僕から毛布を奪って、自分の肩にかけると僕を背中から抱きしめるように抱えた。
ルフィ? 何がやりたいんだ。

「俺もしばらく夜の見張りする。一緒にしようぜ〜」

くじの意味がなくなるんじゃないかな。
僕がそう思いながら見上げると、ルフィがにんまり笑った。

「そうかたいこと言うなよ」

…なんでルフィとは会話できるんだ本当。
僕がそう思うと、ししししっとあの独特の笑いを彼は浮かべた。

「なんとなく判るけど、でもお前の声は聞きてぇからちゃんと封印とくんだぞ。今すぐでなくてもいーから、絶対とけ。な?」

僕は返事をせずに海を見つめた。

「……だいたいお前は周りの人間ばっか救ってなんで自分を救わねぇんだ。それじゃあ、お前ばっかがつらいだけだ」

波の音は今は静かだ。

「お前がつらいってーのは、お前が守る奴らもつらいってことだ。仲間ってそういうもんだろうが」

僕を抱きしめる力が強くなるが、僕は振り返らない。

「少しぐれぇ、俺たちを頼れ。俺たちは強ぇぞ。なんてたって海賊だからな」

振り返らない。

「だから守る、とかどうの言うんなら俺にもお前を守らせろ。んで封印といて、俺たちと一緒にいろ」

ルフィの目は見ない。

「んで、封印といたら、一番最初に俺に見せろ! 船長命令だ!!」

僕は聞かなかったふりをする。
だって、ルフィの言葉はなぜか温かくて強くて…欠けた僕の心にしみて…揺れ動かす言葉だから。
その日の夜は何もなかったけれど、次の日は春の陽気からいきなり冬の天候になって雪が降り、僕たちはグランドラインの気まぐれな天候を目の当たりにする。
本当、めちゃくちゃな天候でナミさんが絶叫するのは無理ない。
もう皆、あの二人の男女ペアも動いてくれた。

「偉そうにうだってないでさっさと手伝え!!!」

もちろん、ナミさんが蹴り飛ばしたからだ。

「ナミさん、霧だ〜」
「ナミ! 十時の方角に氷山発見!」
「なんなのよ、この海は〜〜〜!!」

危ない、直撃するかも。

「舵取れ、舵〜〜!!」
「やってんだけどきかねぇんだよっ!」

僕は迷わず唇を動かす。

ペ ル ソ ナ

どくんっと身体の中から、もう一人の僕が沸きあがる。
異形のそれにウソップとナミさんはあんまり驚かない。
男女ペアは小さな悲鳴を上げて、「化け物っ」と言っているのが判るけれど、その後なぜかウソップが叱っている。
サンジはくわえタバコを落としたらしい。
ルフィは「すげぇ!!」を連呼してるのが聞こえる。

、やっちまえ!!」

ウソップの言葉に反応したわけじゃないけれど、僕のペルソナ…サタンはその標的を睨みつけて力を向けた。

マハラギダイン

火炎が氷山を襲う。
全部を全部消すわけじゃない。
炎の勢いと、かろうじて利いた舵のせいで直撃はしなかったけれど。

「かすった〜〜〜!!」

メリー、ごめん。

「ぎゃー、船底に穴が開いた!」
「すぐにふさがなきゃ!」
「よっしゃまかせとけ」
「風が強くなってきた、すぐに帆をたたんで!!」

僕はサタンの腕を動かして帆をたたみ始める。
ひぃっと小さな悲鳴が上がるけれど、ナミさんがその声の主を蹴り飛ばした。

腰抜かしてる暇があったらさっさと動かんか〜〜〜〜〜〜!!!

ナミさんに逆らっちゃいけない。
僕はもくもくとペルソナのサタンを動かしながらしみじみとそう思った。
…にしても初めてだな、ペルソナを戦闘以外でちゃんと使ったの。

「みんな、食え! そして力をつけろ!! って…ルフィ、てめぇは食いすぎだ!!」
「おい! 船底もう一箇所やられてるぞ!!」
「ちくしょう!」
「ナミ、指針は?」
「またずれてる!!」
「何ィィ!!」

どたどた、ばたばた。
嵐と霧と…とにかく春の陽気に戻るまで、その騒動が続いて。
ぐったりとしているナミさんたちの様子を僕とルフィは見下ろしていた。

「お前、体力あるなぁ」

ルフィこそ。

「あと、あの怪獣はなんだ? ちゃんと教えろよ」

あれはペルソナって言うんだけど…ってなんで僕も教えるつもりになってるんだ。
目の対話だけでそこまで詳しく話せるわけはないし…っと。…ん?

「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜、よっく寝た」

ゾロ…もしかして今まで寝てたの?

「…おいおい、いくら気候がいいからって全員でだらけすぎだぜ? ちゃんと進路はとれてんだろうな」

(((((お前……!!!)))))(怒)ってみんなの声が聞こえそうだ。
そのときに初めて男女ペアの存在にようやくまともに気がついたゾロが行き先もルフィに聞いて、なにやら二人に絡みだした。
でもそんなゾロに対して強かったのは。

ゴン!!!

彼を背後から殴り飛ばしたナミさんだった。
やっぱりナミさん、強いな。



それからしばらくしてすぐにサボテンが見えてきた。
最初の航海はここで終わり。
次の航海が始まるまで、ここでログをためないといけない。

「ここがウイスキーピーク!!」

着いたと思ったらあのMr9とミス・ウェンズデーが「バイバイベイビー」といいながら去っていった。
…なんか、あのミス・ウェンズデーにはひっかかるんだけど、なんだろうなぁ。
僕は彼らが去っていった方向を見ながら、ナミさんの説明を聞き。
そして町の方向へ顔を向ければ。

「ようこそ!! 歓迎の町ウイスキーピークへ!!!」

歓声が僕たちを出迎えてくれた。




2007.04月頃UP

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