ナミさんのそばでグランドラインに入る方法を聞いていたり、その後に凪の帯(カームベルト)に入ったり、超巨大海王類の顔の上に乗ったりカエルに食べられそうになったり。
僕はその間ずっとヒメのタカラモノを握っておとなしくクルーの様子を見たり、手伝ったりしていた。
いや、このペンダント、ぬらすわけには行かないけれど部屋に置きっぱなしっていうこともしたくなかったからだ。
僕のことに気がついたウソップが、「とにかく、お前濡れっぱなしだから着替えて来い」と女部屋に促されて。
ナミさんにも言われて僕は十分身体を拭くとナミさんが買ってくれた服に着替えて、そのタカラモノをどうするか決めかねた。
身に着けてぬらすのもなんだし…。
僕がそう思うと、ストックの中から勝手に誰の一部が空間から現れた。
なんで皆そうほいほい出ようとしてる…っていうか一部分だけ実体化ってできたのか!
その腕の刺青からして、リリスだ、と思ったら小さな笑い声と一緒にその腕はヒメのタカラモノを奪ってしまう。
僕は慌てず着替えを続けていると、その手がまた出てきた。

僕としてはアナログで懐かしい感じがする、懐中時計。

綺麗な銀色に染まったそれは今の僕の手よりも少し小さなタイプのもの。
装飾は殆どないけれど、縁にはヒメが花冠によくしていたシロツメクサの花が小さく描かれている。
こったつくりだ。
かぱりと蓋を開けると表の蓋の裏側が時計で、すぐに見えたのは何か透明の硬いものに包まれて取り出せないようになっている、ペンダント(首紐の方は折りたたまれて邪魔にならないようにしている)が見えた。
銀、に見えるけれどもしかしたらもっと違う金属かもしれないそれは、確かにそのまま持っているよりかは遥かに丈夫で大事にとって置けるだろうし、なによりも多少は大きなものだからどこにも置き忘れたるというようなことはないだろう。
ぱちり、と蓋を閉める。
リリスの手は「ばいばい」と手を振ったらすぐに引っ込んだ。
…。
いや、本当、ストックの皆はなにやってんだろう?
っていうか部分だけでも出てこれるってどういうシステムだ。
僕はそんなことをうっすら考えながら着替えを終了した。
動きやすいジーンズに白地のシャツに着替えて、靴下を履くと真新しい靴に履き替えた。
時計のチェーンをベルトに引っ掛けて見たらその鎖がじわりと解けたかのような錯覚を起こした。
見るとベルト鎖がくっついていた。
取り外そうと僕が触れると鎖はあっけなくベルトから取れた。
魔法、にしてもこんな魔法のスキル、僕は知らない…。
まぁ、便利は便利だけれど。
僕はそう思いながら雨合羽をその上から羽織る。

〜!! 早く来いよ〜!」

ルフィの声に僕は部屋を出た。

「不思議山が見えたぞ! 不思議山!!」

ルフィの言葉に外に出る。

、危ないわよ!」
「わくわくすんなぁ、なぁ! 

ナミさんとルフィの声が重なる。
あぁ、本当だ。
アニメで見たのをじんわり思い出した。
本当に海が山を登ってる!!

「ずれてるぞ! もうちょっと右!! 右!!」

ルフィの声に反応して、ウソップたちが舵を動かしていたんだろう。
次の瞬間。

ボキィ!!

「舵がーーーーーーーーーー!!!」

舵が、折れた…!!
このままじゃ、ぶつかる。

ペ ル…」

僕の口が動く前に、すでにルフィが動いていた。
僕に向かって麦わら帽子を投げるので、それを受け取る。

「ルフィ?!」
「ゴムゴムの…風船っ!!!」

風船になったルフィが間に合って、船が運河に入る。

「ルフィ!! つかまれ!!」

ゾロの声にルフィが手を伸ばし、それをつかんだゾロが思い切り船体にたたきつけるかのようにルフィを船に戻す。
僕は黙ってそのルフィに麦わら帽子を差し出した。

「おう! ありがとな。!」

その間にも見る見るメリーは運河を駆け上って行った。

「「「「入ったぁーーーーーーー!!!」」」

ナミさんたちががそういいながら雨合羽を脱ぐ。
僕は着たままメリーの首近くまで行くと手すりにすがりついた。
船足は速いまま、山の頂上で一瞬浮き上がった。

「ひゃーーー!!!」
「後は下るだけ!!」

その間にルフィはうずうずしたのか、メリーの頭に上っていく。
危ない、と思ったが口にはしない。

「おぉ」

ゴゴゴゴゴゴ。

水の音がすごいのに、ルフィの声はよく聞こえた。

「おお…見えたぞ! グランドライン!!! 」

みんなの顔に笑顔が浮かぶ。
僕はそれを見てから、グランドラインの方に目をやった。
…原作やアニメの要所要所は覚えているけれど、最初の頃や細かい部分などはあんまり覚えていない。
この後、何があったけ?
そういえば、今いるメンバー以外にも仲間ができるはずなんだけれど、その経緯とかがあまり思い出せない。
なにせいろんな世界を渡る、そのまた前の記憶はかすれたものだから、仕方がないといったら仕方がないのだけれど。

「ここが世界で一番偉大な、海だ」

ルフィの呟きと同時、水の音ではない妙な音が聞こえた。


ブォオオオオオオオオオオオオオ!!



「おい、なんだありゃ」
「ナミさん、前方に山が見えるぜ」
「山? そんなはずないわよ。この先の双子岬を越えたら海だらけよ」


ブォオオオオオオオオオオオ!!!!

「ん?」

目を凝らしてみた。
山じゃない。
あれは。

「鯨だぁ!!!!」

あ、本当だ。
ばたばたと動き回る皆。
僕はただその黒い壁を見ていたら、ルフィに手をひっぱられた。

「来い、。いいこと思いついた!!」
「何すんのよ、ルフィ!!」

ナミさんの声にもとまらず、ルフィは船の中に入る。

「手伝え! 

うん、と頷いて、弾をセットする。

「よし! 行くぞ!!」


ドォン!!!!


「船止まったか〜?」

ルフィは大砲を鯨に向かって撃ったのだ。
結局船は、止まらないでというよりもそのスピードにしてはぎりぎりのラインで緩やかになり、船体は鯨にぶつかり、メリーの首、というか船首が吹き飛ぶのを見た。

お、俺との特等席が…!!

え? 僕も?
皆が大声を上げながら船をなんとか鯨から離そうとしているのに、ルフィはそのまま外にまた飛び出すと。

「お前! いったい、俺との特等席に…っ!」

あ。

何してくれてんだーーーーーーーーーー!!!!

ゴムのパンチが飛んだと同時にみんなの「アホーーーーーーー!!!!」という声が鯨の声に負けず劣らず耳によく響いた。




結果。



僕らは鯨に食べられた。
ヒメ、僕、いろんな世界に行って、いろんな悪魔と殺し合いをしたけれど。
ただの鯨に食べられたのは初めてだよ。
僕はポケットの中に収めた銀時計に服の上から触れながら、そっと思った。
しかもヒメ。

…その鯨の中に島があって、髪型が花みたいな人にあったのも、僕初めてだったよ。



って、ルフィはどこいったんだろう?



懐中時計はハガレンの銀時計を思い浮かべてください。
「シロツメクサ」。 花言葉は「約束」「私のことを考えて」

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