ゾロの足から流れていく赤い液体を見たときに、僕の中の何かが崩れていくのをどこかで感じた。
マガタマたちが狂喜乱舞してるのもどこかで感じてるけど、もう、どうでもいい。
悪魔のあの姿になったら、とか、人間のままで戦わなくちゃ、とかそういうのもどうでもよくなって。
けれどあの姿に戻るには手間隙かかるから、そんな時間はないからペルソナを使う。
ただ、今の僕にできることの全てを出さなくちゃ。
早くしないと、ゾロがやばい。
「、無茶しないで! そして助けて!!」
ナミさんの注文は、ちょっと聞けない。
無茶しないと、早く助けられない。
「きゃはははは! 可哀相だけど死んでもらうわ!」
「!!」
ナミさんの声も遠い。
僕の心に反応して、サタンの姿が揺らめきながらも火炎を繰り出す。
「マハラギダイン!!」
「ゴムゴムのぉっトンカチ!!」
ルフィの無茶な技(巨人がかわいそうだ)とサタンの炎で蝋の柱を倒すと同時に蒸発させたけれど、三人は動けない状態で。
「なんだ?! 今のは!!」
「悪魔の実か?! いったい何の実を食べたのガネ?!」
「化け物には違いないわ」
バロックワークスの連中が、何か言ってるけれど…そんなこともどうでもいい。
早く、ゾロの手当てしなくちゃ…!!
サタンが三人の後ろのカボチャを模したようなそれに注意を向ける。
「天軍の剣!!!」
サタンが繰り出す斬撃がカボチャを半分かけさせるけれど、ずれた。
「させないわよ! この化け物…キャハハハハハ!!」
確か、ミス・バレンタインって言ったかな。
「…君も蝋人形になるガネ…?!」
Mr3…!
「にまで何しようってんだ! こんにゃろ!!」
「邪魔は君達のほうだガネ! ドルドル彫刻!!『銛』!!」
Mr3の身体から出る蝋の形が変わってそれが言葉通りに銛になるとルフィに襲う。
やっぱりペルソナは戦いになると出しっぱなしというわけにはいかないみたいだ。
話をすると、そういうのならしばらくはいるのに、どういうシステムだ。
今のうちに、もう一回ペルソナ…。
「ドルドル彫刻!! 『矢』!!」
熱さが腕を貫いていく。
「!!!」
「貴様ぁ!!!」
熱いのに痛さが混じって、血と一緒に力が抜けていく。
「無事か?! 」
蝋で固まりかけているゾロの声。
見れば腕が射抜かれていた。
…このぐらい、三人に比べたら、ゾロの足に比べたらわけなんてない。
それに、この程度の痛みと熱さなんか、僕は何度も何度も味わったことがあるじゃないか。
僕は蝋のその矢を出したサタンの手で引き抜かせる。
ビビ王女は絶句してるみたいだ。
僕が矢を抜いている間に、ルフィがゴムゴムのトンカチでMr3を殴り飛ばして遠くにやってしまった。
「! 無事か!! って血だらけじゃねぇか!! くそ!!」
あ、ミス・ゴールデンウィークが何かしてるな。
僕はサタンのスキルを発動させる。
とりあえず自分の傷はあとだ。
ぼたぼたと血を落としながら、射抜かれて千切れかけた腕を片手で支える。
サタンが迷うことなく、彼女の周囲に火を放った。
「マハラギダイン!!」
「きゃぁあ!!」
そう悲鳴を上げながらもルフィの背中に何か書ききった。
「…あー、お茶が、うめぇ」
…和んでる。なんだっけ、彼女の悪魔の実の能力…。
血が流れすぎたせいで、意識がまた飛びそうになる。
でも早くナミさんたちを助けないと。
気がついたら、ナミさん達はもう蝋で固まりかけていた。
「ルフィ、お前何を…っ」
「お茶がぁ…うめぇ…っっ」
「馬鹿やろう…」
ルフィとウソップのやり取りをBGMになんとか体制を整える。
回復スキルを使うと、受けた傷が修復していくのがわかって、でも流れた血が回復したわけじゃないから少し貧血気味になってる。
とりあえず、蝋を降らせているかぼちゃをもう、一度…!!
「マハラギ…」
蝋は火で消える。
マハラギダインの火は強すぎるかもしれないけれど、あのかぼちゃを壊すにはそのぐらいあったほうがいい。
「邪魔するなよ、化け物小僧」
そんな音が聞こえたと同時に爆風が僕を襲った。
悪魔に戻っていたら、瞬殺できたんだぞ。
マガタマたちのそんなブーイングを僕は無視した。
「ちくしょう!! !!」
「ふざけんな!! 一人だって死なせてたまるか!!! も〜〜〜〜〜怒ったぞ、俺は!!!!」
ルフィの言葉にMr5が笑い、そしてMr3が変なロボットのようなものを着込んでやってきた。
「手遅れにして更なる絶望を味わえ!! 出撃!! キャンドルチャンピオン!!」
その鎧にミス・ゴールデンウィークが塗装してしまう。
ウソップが蝋は火で消えると理解して火炎星を投げつけようとしたが、Mr5の『そよ風息爆弾』をもろにかぶったけれど、カルーと何かしようとしてる。
なんだっけな? もう少しちゃんと思い出せれば、いいのに。
それをミス・バレンタインが気がついた。
攻撃なんて、させない。
僕の身体も蝋が付着していたけれど、かまわずサタンを呼び出す。
「天軍の剣!!!」
ミス・バレンタインの持っているパラソルをめがけて攻撃する。
それが粉々になってウソップから僕に注意を向けた。
「小ざかしい鳥と、小僧だ」
Mr5の声に、カルーが逃げまくりながらロープを走らせているのに気がついた。
邪魔、させない。
もう一度同じ技をMr5の足元に繰り出す。
この技…正直人に当てたらその後がどうなるかわからないから。
その間にルフィがMr3の変な髪形を掴んで走ってきた。
「〜〜〜〜! お前の火も貸せ!!」
「ルフィ!!お前の火は小せぇ!! カルーのロープに火をつけろ!!」
「鳥のロープ?」
そうか、そういうことか。
「油たっぷりのスペシャルロープだ」
「わった!! よし!! 皆起きろぉぉ!!」
ルフィが点火したそのときを見計らって、サタンが繰り出す。
「マハラギダイン!!」
炎が全てを包み込んだ。
結果、巨人の二人も無事で皆無事だった。
二人は僕のペルソナをあんまりはっきりとは見なかったらしい。
「、あんたね。矢を強引に引っこ抜くなんてどういう了見なの? え?」
皆、助かったのに。
「そうよ、肝を冷やしたわ」
「くわー」
どうして。
「お前、ペルソナが傷を治してくれてるようだが、それにしても無茶しすぎだ」
僕は。
「そうなのか?傷治るのか? よかった〜、お前血だらけなんだもんよ」
「あいつから受けた傷、ちゃんと治して腕くっついてるでしょうが!!」
「にしても、まあ、いいじゃねぇか。こいつもおっさん達も無事だったんだからよ」
「よくないわ! しつけは一番最初が肝心なのよ!!!」
しつけ…。/しつけ…。
マガタマと僕の思考がシンクロする。
「ガババババババ!! さすがは金色の瞳の戦士だ!! ガババババババ!!!」
「ゲギャギャギャギャ!! それでこそ、もっともエルバフに近い戦士!!」
「はい、そこも感心しない!!」
ナミさんに逆らってはいけない。
でも、どうして僕は叱られているんだろう?
ちゃんと正座をして。
「、自分を大事にして頂戴」
?
僕が小首を傾げるとナミさんはため息をついた。
「判らない?」
判らない。
「あたしは言ったわよね? 無茶しないでって」
「まあ、それこそ無茶な注文だったけどもよ」
ガスっ!!
「ウソップ〜!!」
「くわ〜〜〜!」
…ナミさんに逆らってはいけない。
ナミさんは僕の頬をルフィのように少しだけつまんで、引っ張った。
ルフィのようには伸びないんだけれど、僕。
僕の金色の目をじっと見ていたナミさんは「無茶はしない。わかったわね?」とドスの入った声で睨んできたので、僕はとりあえず頭を下げた。
「はい、よし。じゃ、服脱いで。…あぁ、もうドスコイパンダのシャツが血だらけで、もう着れないわ、これ」
すみません。
僕は自分の血で固まったシャツを脱ぐ。
その間にナミさんの指は僕の頬から離れた。
射抜かれた腕には、まだうっすらと傷が残ってるけど問題はない。
その傷を見て、ビビ王女がうつむいた。
「お前達には助けられてしまった。何か礼がしたいが…」
巨人達がそういってくれるのを聞きながら立ち上がる。
「だけど、あいつらがこの島に来たのは、元はといえば…」
「そういうことは言わないの」
「痛いっ」
うん、結構痛いんだよなぁ。
頬つねられるの。
「、せんべい食べるか?」
…どこから持ってきたんだそのせんべい。
そう思いながらウソップからせんべいを受け取って、それを口にしているとログの話になって。
そうだ、ログがたまるのは一年もかかる、なんてそれじゃあビビ王女が困るんだよな。
…?
あれ?
サンジは?
「っはーーーっ!! ナミさ〜〜〜ん、ビビちゃ〜〜〜ん、ちゃ〜〜〜〜ん!! あとオマケども!! 無事だったんだね〜〜〜っ。よかった〜〜〜〜」
「よぉ! サンジ!」
あ、来た。
この後、サンジの話を聞いて、僕らはアラバスタを示すエターナルポースを入手していたことを知る。
って、この後、何かすごく大変なことが待ってるんじゃなったっけ?
僕はせんべいを噛み砕きながら、そう思った。
2007.04月頃UP